本日、令和8年1月23日、令和8年度の年金額改定資料が公表されました!
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf
公的年金制度の仕組みは複雑怪奇で、特に数字ばかりが出てくる長い解説になると、おそらく頭が痛くなりますから、2回に分けて簡単に解説していきます。
今回は、その第1弾です!
【1】年金額改定の基礎となる参考数値
[注]上記の厚生労働省公表の資料においては、公的年金制度をよく知らない一般国民にも分かりやすく「パーセント(%)表示」をしていますが、ここでは社会保険労務士試験の受験生の便宜をも勘案し、法律上の条文規定における「小数率表示」を併せて記すことにします。
■令和8年度の参考指標
① 物価変動率:3.2%(1.032)
令和7年平均の全国消費者物価指数(CPI)が3.2%上昇したということです。
新聞・ニュース等の報道場面においては「生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)」を使うことが一般的なのですが、年金額改定の基礎となる「物価変動率」においては「生鮮食品を含めた総合指数(総合CPI)」を用います。
年金生活者たちは、天候等の影響を受けやすい生鮮食品をも含めて食生活をしているからなのですね。
② 名目手取り賃金変動率:2.1%(1.021)
名目手取り賃金変動率(1.021)
= 実質賃金変動率(0.989)×物価変動率(1.032)×可処分所得割合変化率(1.000)
※ 「名目手取り賃金変動率」とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率を乗じたものです。
つまり、令和8年度の年金額改定においては、実質賃金変動率は「令和4年度から6年度の3年度を平均した値」を、物価変動率は「令和7年平均の値」を、可処分所得割合変化率は「令和5年度の値」を、それぞれ表しています。
ところが、第1号厚生年金被保険者は平成29年9月から、第2号厚生年金被保険者と第3号厚生年金被保険者は平成30年9月から、厚生年金保険料率が「1000分の183.00」で固定されており、もはや可処分所得割合が変動することはないため、名目手取り賃金変動率から可処分所得割合変化率(1.000)を除外しても、その率に変化がないことが分かりますね。
これを「名目賃金変動率」といい、「在職老齢年金制度」における「支給停止調整額」の算定に用いられています。
※ 第4号厚生年金被保険者の厚生年金保険料率は、令和8年度現在、未だ「1000分の183.00」に達していませんが、厚生年金被保険者全体に占める人数が少ないため、可処分所得割合変化率に与える影響はゼロです。
名目賃金変動率(1.021)
= 実質賃金変動率(0.989)×物価変動率(1.032)
結局のところ、「名目手取り賃金変動率」と「名目賃金変動率」は同率となるために、どちらの用語を使って表現してもかまわないのですが、法律上は使用される場面が異なっていますので、社労士試験ではしっかり区別して用いてください。
③ マクロ経済スライドによるスライド調整率 :▲0.2%(0.998)
マクロ経済スライドによるスライド調整率(0.998)
=公的年金被保険者総数の変動率(1.001)×平均余命の伸び率(0.997)
公的年金被保険者総数の変動率は「令和4年度から6年度の3年平均の値」を表していますが、 平均余命の伸び率である「0.997」というのは、国民年金法第27条の4第1項第2号で定められている「法定率」です。
したがって、社労士試験などにおいて、たとえば「平均余命の伸び率」が問われたとしたら、必ず「0.997」と解答できなければいけませんからね!
※ 国民年金(基礎年金)と厚生年金(報酬比例部分)とで年金額改定率が異なるのは、マクロ経済スライド調整期間にズレが生じている問題への対応を次期財政検証で検討するにあたり、それまでの間に報酬比例の調整期間が終了してしまうのを避けるため、令和7年度法改正附則の規定により、マクロ経済スライド調整期間を次期財政検証の翌年度(令和12年度)まで継続するとともに、厚生年金受給者に不利にならないよう、この間の報酬比例の調整率を3分の1に緩和したことによるものです。その結果、厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライド調整率を▲0.1%、すなわち「0.999」としたものです。
速報版ということで、次の第2弾で、老齢基礎年金の満額や在職老齢年金における支給停止調整額について即時に触れなければいけませんので、ささっと急ぎますよ!
これは、上の右図⑥を参照してください。
「物価変動率」がプラス3.2%(1.032)、「名目手取り賃金変動率」(上の左図においては「名目賃金変動率」と表記していますね)がプラス2.1%(1.021)ということで、どちらも上昇してはいるのですが、一般的な経済状況とは異なり、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回っています(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回っているとも言えます)。
このような場合(上の右図⑥のケース)には、新規裁定者であろうと既裁定者であろうと、ともに「名目手取り賃金変動率(1.021)」を用いることとし、かつ、それに「マクロ経済スライド調整率」を乗じて年金額を改定します。
⑴ 国民年金(基礎年金)の場合
名目手取り賃金変動率(1.021)×マクロ経済スライド調整率(0.998)
=1.019(1.9%のプラス改定)
⑵ 厚生年金(報酬比例部分)の場合
名目手取り賃金変動率(1.021)×マクロ経済スライド調整率(0.999)
=1.020(2.0%のプラス改定)
※ マクロ経済スライド調整率を乗じても「1.000」を下回らない(=マイナス(減額)にならない)ため、「キャリーオーバー制度」の適用はありません。
新聞・ニュース等の報道において、令和8年度(2026年度)の年金額を「国民年金(基礎年金)は1.9%の増額、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の増額です!」(4年連続の引上げ)などと表現しているのは、以上のような計算上の仕組みによります。
ということで、ようやく報道発表等の基礎知識まで手に入れることができましたね💦
さて、次回の第2弾においては、①老齢基礎年金の満額、②在職老齢年金における支給停止調整額について概説します。
少しだけお待ちを😉

