皆さん、こんにちは、こんばんは。

 

今年「令和7年」は、昭和100年でもあり、戦後80年でもあり、日航機墜落事故から40年でもあります。リアルタイムで知っているのは、もちろん日航機墜落事故ですが、40年前のあの日は仕事をしており、その日の帰宅後、夜のテレビニュースでは日航機がどういう状況になっているのかが全く不明だということでした。そして、翌朝のニュースにより、あまりに悲惨な状況であったことが分かるのです。

 

なお、日航機墜落事故があった「昭和60年」というのは「戦後40年」の年です。リアルタイムで戦争を知っている人は、おそらく「もう40年になるのか…」と思っていたでしょうが、戦争をリアルタイムで知らない私にとっては、日航機墜落事故から「もう40年になるのか…」と思うのです。こうやって、ジェネレーションギャップが生まれてくるのですね。

 

まあ本当に、8月という月は、6日、9日、15日、そして12日と、祈ることばかりが多くなる月です。

 

さて、今回は、多くの社労士受験生が疑問に抱くであろう「厚生年金保険法による障害手当金が支給されない場合」をお届けします。

 

【1】障害手当金が支給されない場合

厚生年金保険法の規定による「障害手当金」の支給要件を満たしている場合であっても、障害の程度を定めるべき日において、次の⑴~⑶のいずれかに該当する場合には、「障害手当金」は支給されません。

 

⑴ 厚生年金保険法による年金たる保険給付(老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金)の受給権者である場合、又は旧厚生年金保険法による年金たる保険給付(老齢年金、障害年金、遺族年金)の受給権者である場合

 

ただし、障害厚生年金(障害年金)の受給権者については、最後に障害等級3級以上の障害状態に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した場合において、現に障害状態に該当しない者については、他の傷病による障害に係る障害手当金は支給されます

 

 国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金)の受給権者である場合

 

ただし、障害基礎年金の受給権者については、最後に障害等級3級以上の障害状態に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した場合において、現に障害状態に該当しない者については、他の傷病による障害に係る障害手当金は支給されます

 

[注] 上記⑴⑵については、同一の支給事由(事故)によるものでなくても、老齢、障害、遺族の別は問われません。とにかく、障害手当金という一時金ではなく、他の年金給付を優先して支給するのです(年金優先支給の原則)。

 

⑶ 障害手当金と同一の支給事由(事故)による傷病について、国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法、公務災害補償法又は労働基準法の規定による障害補償労働者災害補償保険法の規定による障害(補償)等給付、船員保険法の規定による障害を支給事由とする給付を受ける権利を有する者である場合

 

【2】多くの社労士受験生が抱くであろう疑問について

上記⑶について、労働者災害補償保険法による労災保険給付と社会保険(厚生年金保険法又は国民年金法)による年金給付の両者を支給すべき場合には、社会保険の被保険者等は保険料を納付していることから、社会保険による年金給付は全額支給することとし、いわゆる労災保険料について労働者は1円も負担せず、保険料の全額を事業主が負担していることから、労災保険給付は減額支給する、と教わりますよね。

 

・社会保険年金 ⇒ 全額支給

・労災保険給付 ⇒ 減額支給

 

この考え方を徹底するとしたならば、保険料拠出の対価として受給する障害手当金をこそ支給して、労災保険給付は減額支給すべきとなるはずですが、そうではありませんね。

 

・障害手当金 ⇒ 不支給

・障害(補償)等給付 ⇒ 全額支給

 

【3】終戦直後の沿革を振り返ってみよう!

まず、第38回(平成18年度)社会保険労務士試験〈選択式〉を解いてみてください。

注意すべきは、第2段落の「ただし書」ですが、ここで問題となるのは「事業主責任の分離」という言葉です。

【正解】
A)⑨医療保険
B)②国民健康保険
C)⑱健康保険
D)⑩標準報酬
E)⑮厚生年金保険
※ 現在においては標準報酬の「改定」と表記するところ、昭和30年代頃までは、標準報酬の「改訂」と表記していました(こういう、ちょっとした知識もヒントになり得るわけです)。
 
⑴ 終戦直後の混乱期における救世主
敗戦によるハイパーインフレーションにより、厚生年金保険の積立金も、健康保険の準備金も実質価値を失い、ほとんど機能不全となってしまいました。
 
そこで、救世主となったのが、労働基準法による事業主の災害補償責任を保険化した労働者災害補償保険法の登場でした(昭和22年)。
 
まず、業務外の事由による傷病等だけでなく、業務災害に係る保険給付も支給していた健康保険法においては、業務災害に係る保険給付は労働者災害補償保険法に移管することとなり、以後、健康保険法では、原則として業務災害に関する保険給付は行わないこととなりました。
 
次いで、業務外の事由による障害だけでなく、業務上の事由による障害についても「障害年金」を支給していた厚生年金保険法においても、業務災害による事業主責任を厚生年金保険法から切り離し、労働者災害補償保険法に移管しました。
 
≪プラスアルファの知識≫
当時の厚生年金保険法では、業務外の事由による障害年金・障害手当金と、業務上の事由による障害年金・障害手当金とを区別していました。
業務外の事由による障害年金には障害等級区分がなく一本制(平均報酬月額の4か月分)であり、障害手当金も一本制(平均報酬月額の10か月分)でした。
しかし、業務上の事由による障害年金は、障害の程度により1級(平均報酬月額の8か月分)から6級(平均報酬月額の5か月分)に区分され、業務上の事由による障害手当金も、障害の程度により1級(平均報酬月額の25か月分)から8級(平均報酬月額の2か月分)と区分されていました。
つまり、業務上の事由による障害年金・障害手当金については全部で14等級に区分して給付額を優遇していたのですが、これが厚生年金保険の財政を悪化させる一因となっていたのです。
 
⑵ 昭和20年代当時の厚生年金保険法と労働者災害補償保険法の併給調整の仕組み
昭和22年、労働基準法と同時に制定された当時の労働者災害補償保険法の規定による保険給付は、すべて「一時金たる保険給付」であって、「年金たる保険給付」など存在していませんでした(※)。
 
※ 労働者災害補償保険法に「年金たる保険給付」が新たに追加されるのは、昭和35年改正及び昭和40年改正においてです。
 
労働者災害補償保険法に「年金たる保険給付」が追加新設されるまで、障害に関する保険給付としては、「障害補償費」という「一時金たる保険給付」が第1級から第14級まで定められていました。
 
そのため、業務災害により障害を負った被災労働者に対しては、労働者災害補償保険法による「障害補償費」という一時金たる保険給付を支給することとしし、その代わり、厚生年金保険法による「障害手当金」という一時金たる保険給付は支給しないこととなりました。
 
※ 一時金同士の保険給付であるため、二重填補による過剰給付を防止するため、労働者災害補償保険法による保険給付を優先支給するとの、この趣旨が、形を変えて現在にも生きているわけです。
 
それでは、労働者災害補償保険法の制定により、業務上の災害を事由とする障害に対して厚生年金保険法による「障害年金」を一切支給しなくなったのかというと、実はそうでもありません。
 
業務災害により障害を負った被災労働者に対しては、まず「障害補償費」という一時金を支給し、厚生年金保険法による「障害年金」は6年間支給を停止していたのです。
 
※ この「6年間」というのは、労働基準法第82条の規定による「分割補償」に係る6年間を指しています。つまり、障害補償費は6年間分を補償する一時金であるという意味でした
 
【労働基準法第82条】(分割補償)
使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、第77条[障害補償]又は第79条[遺族補償]の規定による補償に替え、平均賃金に別表第三に定める日数を乗じて得た金額を、6年にわたり毎年補償することができる。
 
この「6年間」が経過し、7年目を迎えても一定の障害状態が継続している被災労働者に対しては、その7年目から、厚生年金保険法による「障害年金」を支給することとしていました。
 
ですから、健康保険法とは若干異なり、厚生年金保険法は業務災害から完全に切り離されたわけではなく、業務外の事由による障害等だけではなく、業務災害による障害等に対しても、年金たる保険給付を行っていました。
 
もう少し分かりやすく言うと、厚生年金保険法から、業務上の事由による保険給付に関する条文規定を全面的に削除し、業務外の事由による保険給付とか、業務上の事由による保険給付などというような区別を廃止した、というわけです。
 
ただ、業務災害による障害に関して障害年金を6年間支給停止にすることにより併給調整をしていたわけです。
 
[注] 現在においては、障害基礎年金又は障害厚生年金について、労働基準法の規定による障害補償を受ける権利を取得したときは「6年間」、また、遺族基礎年金若しくは寡婦年金又は遺族厚生年金について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは「死亡日から6年間」、支給を停止するとされていますよね。この場合において、遺族給付については「死亡日から」(厳密にいえば「死亡日の翌日」から起算します)と、起算日が明記されているのに対して、障害給付に関しては起算日が明記されていません。
さて、なぜだか分かりますか?
 ↓   ↓   ↓   ↓   ↓ 
▶️ 労働基準法の規定による障害補償は「傷病等が治癒したこと」が絶対要件となっているのに対し、障害基礎年金や障害厚生年金は、必ずしも傷病等が治癒していなくても、支給される場合があるからです。ですから、いつから6年間であるのか、国民年金法や厚生年金保険法においては、いつから6年間なのかという起算日を表記することができないのです。