【1】国民年金法は細かい出題内容が多い!

去る令和7年(2025年)8月24日(日)に実施された「第57回(令和7年度)社会保険労務士試験・国民年金法〔選択式1〕」においては、平成16年公的年金制度改正の少々細かい知識が問われました。

 

そこで、この場を借りまして、令和7年度国民年金法〔選択式1〕について、簡単な解説をしていきます。

 

 

 【2】平成16年改正における国民年金保険料額の推移・変遷について

 

 
早いところ、上表にある「国民年金保険料額」に関する知識が問われたわけです。念のため、確認してみます。
 
⑴ 保険料水準固定方式
平成16年改正の大きな目玉の1つは「保険料水準固定方式」というもので、スウェーデンにおける年金制度改革(1999年)を参考にしたものです。
 
※ 「保険料水準固定方式」の対語は、5年ごとの「財政再計算」において保険料額(率)等を見直す「段階保険料方式(給付水準維持方式)」です。
 
国民年金法においては、法定の国民年金保険料額を「16,900円」(平成16年度価額)で固定することとし、厚生年金保険法においては、厚生年金保険料率を「1,000分の183(18.30%)」で固定するというものです。
 
※ 平成14年に発表された将来人口推計により試算をすると、国民年金保険料額は、国庫負担率が3分の1のままだと「28,900円」、国庫負担率を2分の1にしても「20,000円」となる見込みであり、厚生年金保険料率は、国庫負担率が3分の1のままだと「1,000分の260」、国庫負担率を2分の1にしても「1,000分の228」になるものと見込まれていました。
 
上表には記載されていませんが、平成16年度の国民年金保険料額は「13,300円」(月額)でした。
 
これを一気に「16,900円」に引き上げるわけにはいきませんので、毎年度「280円」ずつ引き上げていき、平成28年度から平成29年度の最後の引上げについては「240円」として、最終的に「16,900円」にするというものでした。
 
≪参考:厚生年金保険料率は?≫
参考として、厚生年金保険における保険料率の推移を見てみましょう。
ただし、こちらは被保険者の種類・種別があまりに複雑ですので、「第1号厚生年金被保険者(坑内員・船員を除く)」で確認することにします。
 
まず前提として、平成16年改正前の保険料率は「13.58%」でした。
これを、毎年「0.354%」ずつ引上げていき、平成29年9月1日以降は「18.30%」に引き上げて固定しようというのです(引上げ最後の年度のみ「0.118%」の引上げで調整しました)。
 
①第1号厚生年金被保険者は、平成29年9月以降「18.30%」で固定された。
②第2号・第3号厚生年金被保険者は、平成30年9月以降「18.30%」で固定された。
③第4号厚生年金被保険者(私学共済加入者)については、令和7年9月現在においては未だ引上げの途中であり、令和9年4月以降に「18.30%」となります。ただし、私学共済には独自の保険料軽減措置規定があるため、実際に「18.30%」で固定されるのは、令和11年9月以降となる予定です。
 
 
⑵ 産前産後期間中の国民年金保険料免除制度
将来人口推計が発表されるごとに少子化が進んでいることを踏まえ、国民年金第1号被保険者の「産前産後期間中の国民年金保険料免除」の仕組みが、平成31年4月から(令和元年度から)設けられました(平成28年改正)。
 
問題は、そのための財源をどこに求めるかですが、国民年金第1号被保険者が納付する保険料で賄うこととし、法定の上限額を「16,900円」から「17,000円」へと100円引き上げることとしました(この改正には強い批判がありましたが…)。
 
※ 国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料免除制度は「令和8年10月1日」から施行されますが(国年法88条の3)、この財源については「子ども・子育て支援金」をもって賄うこととされています。詳細は、↓次のURLを参照してください。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001246015.pdf

 

 

⑶ 令和8年度(2026年度)の国民年金保険料額は?

令和8年度の国民年金保険料額=17,000円×保険料改定率
 
①保険料改定率
=前年度(令和7年度)の保険料改定率(1.030)× 名目賃金変動率
 
②名目賃金変動率
=2年前の物価変動率(1.027)×4年前の年度の実質賃金変動率(0.996)

※ 令和8年度から見ると、「2年前の物価変動率」とは令和6年の物価変動率のことをいい、「4年前の年度の実質賃金変動率」とは、3年前(令和5年度)から5年前(令和3年度)の3年平均で算出したものを言います。

[注] 社労士試験対策としては、「名目賃金変動率」と「名目手取り賃金変動率」とは異なるものであると解答すべきですが、名目手取り賃金変動率のうちの「可処分所得割合変化率」が “1.000” で固定されていますので、「名目賃金変動率」と「名目手取り賃金変動率」とは、結果的に同率となります。
 
③令和8年度の保険料改定率
=1.030×(1.027×0.996)
=1.030×1.023
1.054
 
④令和8年度の国民年金保険料額
=17,000円×1.054
=17,918円
17,920円

 

つまり、令和8年度(2026年度)の国民年金保険料額は「17,920円」となり、これは令和7年度の「17,510円」から410円の増額となります。

 

 

≪令和7年度社労士試験・国民年金法のダミー選択語句について≫

冒頭の令和7年度社労士試験に、ダミー選択語句として「⑳平成24年」とありますね。

この平成24年改正というのは、「⑬遺族基礎年金の父子家庭への支給」、「⑮年金額の特例水準の解消」、「⑯年金生活者支援給付金」、の制度等について新たに新設・追加等がなされたものです(ただし施行期日はみなそれぞれ異なります)。

なお、「⑭産前産後期間の保険料免除制度」だけは、ダミー選択語句としての記載はありませんが、「平成28年改正」により新設・追加されたものです。


社労士試験〔選択式〕においては、ダミー選択肢にも意味があることが少なくありません!