会編『電気事業便覧 平成22年版』(社団法人日本電気協会、2010年)を使って整
理してみましょう。ちなみにこの『電気事業便覧』は経済産業省資源エネルギー
庁電力・ガス事業部監修の資料でもあります。
○日本全国の全発電能力の中における原発の割合
電力10社および卸電気事業者、自家用発電などを積算した、発電設備の最大出力合計は、281,099,018kwです。そのうち、原子力の最大出力合計は、48,847,000kwです。(平成22年3月時点、『便覧』16・17頁)
水力 47,966,301kw
地熱 534,500kw
火力 181,736,146kw
原子力 48,847,000kw
風力 1,997,495kw
太陽光 16,376kw
計 281,099,018kw

原発は、日本の全発電能力の17.37%に過ぎないですね。誰でしょうね?日本の電力の3割から4割は原発に依存しているとか言っている人は。どうしたら、3割から4割という数字が出てくるのでしょうか。なるほど、上記の数字は、あくまで発電能力であって、発電実績ではない。では次に、発電実績で見ると、原発はどれくらいの割合を占めているか見てみましょう。
○全発電実績の中における原発の割合
このうち、東北電力・東電管内の火力・水力がどの程度使用不能になっているかは、ボクの方では把握していないです。
しかし、発電最大出力の総数の17%くらいにしか過ぎない原発ですが、供給実績という話になると、かなりの割合になってきます。(下の数字は最新の平成21年実績 単位は100万kWh 『便覧』42・43頁)
水力 74,539
地熱 2,695
火力 568,399
原子力 279,750
計 925,392
(太陽光・風力は数値が小さいため細目からは省略)

水力は原発と同等、火力は原発の3倍以上の発電能力を持っていることが、前項の数字から分かると思いますが、実績では、水力は原発の4分の1、火力は原発の倍程度に出力を抑えられています。 火力と水力の発電量が抑えられているために、実際に発電されている電力で、原発由来のものが30.23%になるといった具合です。
水力はダムの水の量、火力は定期点検などで常に最大出力にはできないという指摘もありますが、原発でも定期点検や事故による停止は頻繁に起こっているので、大差ありません。よくいるんですよね、原発だけ、火力や水力に比べて安定稼働しているという幻想を抱いている人。火力と水力の稼働率が低いのは、原発を主力に運用しようという方針で、意図的に稼働率が低く抑えられているのです。水力なんて、燃料無くても発電できるのに、もったいない。
○実際の電力需要を原発無しで乗り切れるか
さて今度は、供給能力や発電実績だけではなく、実際の電力需要から見て、原発なしでやっていけるか見てみましょう。
前々項で、平成22年の発電設備の最大出力積算281,099,018kwと書きました(『便覧』16・17頁)。それに対する、日本全国で電力需要は、ピーク時の最大値は平成20年に発生したもので180,526,000kw。次に多かったのは平成17年で175,476,000kwでした。ちなみに最新データの平成21年では159,941,000kwでした(『便覧』114・115頁)。
原発がなかった場合の発電設備の最大出力は(281,099,018kw-48,847,000kw=)232,252,018kwです。
最大の平成20年程度の需要が発生しても、原発を差し引いた供給電力232,252,018kwに占める割合は78%程度。火力の事故リスクなどを踏まえて、十数%の余力がないと業界的には苦しいという話ですが、22%以上もの余力があれば、十分じゃないでしょうか。

○震災の影響を受けた東北・関東では電気は足りるのか?
以上の数値は、地震による被害などを加味していない数値です。ですから、東北電力管内で、どの程度、水力や火力の発電能力が落ちているかは、データを持ち合わせていませんので、それについてはあまり詳細な議論はできません。ただ、あれだけ大きな被害を受けた地域が、数日規模の停電もなく、電力供給が最低限維持されているというのは、かなりの余力を抱えていたということではないでしょうか。
東電は、北関東の火力設備に被害を受けているので、かなりの供給不足に陥っている可能性はありますが、この火力の復旧状況に関して、東電が具体的な情報を開示しないので、これも詳細な評価ができない状況が続いています。ただ、 東電などは、減価償却が終わって、公式データ上は廃止したとしている水力発電所などを、隠し供給源として抱えており、震災後に緊急に導入したガスタービンもかなりの供給力を持っています。これらの数字を明確にしようと、自民党の河野太郎議員とかが頑張ってるわけですね。
震災後の、具体的な供給能力の数字を出さないと、電気が足りる足りないという話は、地に足の着かない空中戦で終わってしまいます。電力会社も、消費者にきつい節電を要求するのなら、最低限の直近の供給力データを出してから、消費者にお願いするのが筋ではないでしょうか。
東北電力と東京電力が、どの程度の供給力を持っているのか、様々なジャーナリストが推計を出していますが、その辺の数字については、個別に検証してみて下さい。
東電に対していえることは、正確な需給データを提示せずに節電を、消費者に要求するのは無理があるだろうということです。
さて、もっと解せないのは、震災の被害を被っていないにもかかわらず、節電を消費者に強いている西日本(東北や関東に送電をしにくい60Hzの地域)の電力会社です。東日本に電気を送るから電気が足りないとか言ってますが、東日本と西日本では周波数が違うため、西から東に送れる電力総数はたがか知れたもので、西日本で節電しなければならない理由にはなりません。
関西電力と九州電力では、原発への依存度が4割だとか5割だから、定期点検中の原発が再稼働できないと、電気が足りないといった言説も見受けられます。でも、「依存度」っていったい何ですか?電気の需給に関して、「依存度」なんて用語は無いと思うのですが。全供給能力に占める割合のことを言っているのでしょうか、それとも過去の供給実績における割合でしょうか?どちらをとるかで、原発の割合も、ずいぶん異なるということは、既に見てきました(17%になったり30%になったり)。そういう詳細な前提抜きに、「依存度」という言葉を使うのは、非常に乱暴だと思います。
それはともかく、西日本の電力各社の電力需給、どうなっているのでしょうか。
○中部電力
中部電力管内の中部電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は39,901,000kw。そのうち原発は3,504,000kwで、全体に占める割合は8.78%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので27,938,000kw。平成21年では23,881,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(39,901,000kw-3,504,000kw=)36,397,000kwに対して需要が占める割合は、76.76%程度。23%もの余力があれば、他社への送電も可能でしょう。

○北陸電力
北陸電力管内の北陸電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は10,840,000kw。そのうち原発は3,263,000kwで、全体に占める割合は30.1%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので5,654,000kw。平成21年では4,944,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(10,840,000kw-3,263,000kw=)7,577,000kwに対して需要が占める割合は、74.62%程度。25%もの余力がある。

○関西電力
関西電力管内の関西電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は43,178,000kw。そのうち原発は9,768,000kwで、全体に占める割合は22.62%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので30,541,000kw。平成21年では27,758,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(43,178,000kw-9,768,000kw=)33,410,000kwに対して需要が占める割合は、91.41%程度。8%強の余力というのは、確かにつらいが、これは過去最大の需要が起こった場合の話。決して大停電が起きるレベルではない。
総発電量に占める原発由来の電力の割合が高い関西ですが、それにしても、関西では原発への「依存度」が5割なんていう誇大な数字、どこから出てきたんでしょうね。各年の発電実績を見たら、そんな年もあるのかもしれませんが、現在使っている電力量を半分に減らさないといけないような誤解を招く表現は、悪質ですね。

○中国電力
中国電力管内の中国電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は20,691,000kw。そのうち原発は1,280,000kwで、全体に占める割合は6.18%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので11,963,000kw。平成21年では10,591,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(20,691,000kw-1,280,000kw=)19,411,000kwに対して需要が占める割合は、61.63%程度。38%強の余力というのは、相当に余裕があると見てよい。実際、昨年の猛暑の需要ピーク時、中国電力の原発は、事故により全て停止していたが、余剰電力を産みだした中国電力は、関西電力に電気を売っていた。にもかかわらず、この上、中国電力は上関に原発を作ろうとしているのだが、どこにそんな必要性があるのだろうか?

○四国電力
四国電力管内の四国電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は11,630,000kw。そのうち原発は2,022,000kwで、全体に占める割合は17.38%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので5,924,000kw。平成21年では5,345,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(11,630,000kw-2,022,000kw=)9,608,000kwに対して需要が占める割合は、61.66%程度。ここも中国電力と同じく38%強の余力を持っている。

○九州電力
九州電力管内の九州電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は28,667,000kw。そのうち原発は5,258,000kwで、全体に占める割合は18.34%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので17,436,000kw。平成21年では16,555,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(28,667,000kw-5,258,000kw=)23,409,000kwに対して需要が占める割合は、74.48%程度。26%ほどの余力がある計算だ。

○北海道電力
以上、東北・関東に送電しにくい60Hz地域の状況のみを見てきたが、せっかくなので北海道電力についてもまとめてみよう。
北海道電力管内の北海道電力、その他の電気事業者、自家用発電を合わせた平成22年の発電設備の最大出力積算は10,266,000kw。そのうち原発は2,070,000kwで、全体に占める割合は20.16%(『便覧』20・21頁)。ピーク時の最大需要は平成20年に発生したもので4,838,000kw。平成21年では4,682,000kw(『便覧』114・115頁)。
平成20年程度の需要が発生しても、原発抜きの出力(10,266,000kw-2,070,000kw=)8,196,000kwに対して需要が占める割合は、59.03%程度。41%ほどの余力がある北海道は、日本で一番電力の余力があるといってもいい地域だ。ここで、強引に泊原発3号機を再稼働させる理由は一切見あたらない。
