夏の終わりに恐怖の宴、そして私の心を癒す、素晴らしい"病み少女映画"。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

残暑厳しく、更に台風も。
気持ち落ち着かぬ日々に、溜め息ばかり吐いています。
今日はちょっと熱中症ぎみ。体が疲弊してあれこれ活力が無くなっています。
精力つくもの...観なくちゃね。
「That、ザット、ジ・エンド」
とあるサーカス団は襲撃を受けていた。理由は?分からない。ただ、彼らは尽く命を奪われた。ただひとりを残して。
25年後。若者たちは無軌道に時を楽しんでいた。ふと、デイヴィが姿を消す。仲間たちは彼を捜すが、手掛かりは彼のSNSにアップする写真だけ。
その頃デイヴィは荒野に棄てられたサーカスと町を見付けていた。
アサイラム製です。
一応、題名が「It、the End」のそのままパクりな訳で、まあ、期待できたものでは無いでしょう。ピエロが殺人鬼なのも同じです。アサイラムらしい、まさにアサイラム映画な訳でした。
...実はこの作品、同題の前作が有ります。
とは言え、前作は"アプリに追われ殺される"、そんな話で今回の「ジ・エンド」とは全く関係有りませんでした。ピエロ風のモンスターは現れますが、決してピエロでは有りません。
前作の原題は"BEDEVILED"、今作は"CLOWN"。日本メーカーが勝手に続編にしてしまったようです。

で。町の人に惨殺されたサーカス団。生き残るピエロ姿の少年...ページを捲るように25年が経ち、時は現在、友達がどこかに行ってしまい捜す若者たち。
行方不明のデイヴィは迷う内に廃れた町に辿り着きます。町の脱け殻は荒れ、規制線が引かれ物々しい。此処彼処に人に見立てたような人型の人形?が置かれ、町は生活を突然に止めたまま、見捨てられてしまったかのよう。
デイヴィは町を歩き、サーカス小屋へ辿り着く。何事もない廃墟。しかし、そこには惨殺から生き延びた子が成長してそこに潜んでいた...
そう。まさに「13日の金曜日」。
シンプルに悪鬼と化してしまった孤独な子が聖域を犯す若者たちを殺して行く姿は、如何にも懐かしい70~80年代ホラーの典型。
マネキンのように人型を並べ、まるで人々が生活しているかのようにダイナーなどを佇ませているのは「蝋人形の館」を思い出させ、舞台がサーカスなのは「ファンハウス」。人形が襲うシーンは「ドールズ」を思い出させます。
そんなオマージュに満ちています。

今作、アサイラムだからオマージュじゃなくてパクりじゃない?と思いそうなものですが、一見、アサイラムであることを忘れてしまいそうな意欲に満ちた映像に驚かされます。
確実にアサイラム級低予算ながら、演出には全力入魂、カット割りは丁寧にされていて、空撮や手持ちカメラ撮りなどを適度に切り替え、非常に精力的に良き映画にしようと頑張っています。
役者も、今時の若者像ながら、ワンパターンだったり個性がなかったりはせず、人数が居る割りにはキャラ立ちも良く、演技も悪くない。色とりどりなサーカスの装飾や照明も雰囲気があり、撮影照明具合もとてもいい。映像的にもホラー的にも、結構、刺激のあるシーンがいっぱいです。ピエロのメイクや脅かし具合もなかなかでした。
映画的都合も少なく、それなりにみんなが役割分担しながら生き残る為に奮闘する姿も非常に良く、メンバーはなかなか命を落としません。まあ、ホラーですから、安易な殺戮ショーは有りますが、それも終盤までお預け。恐怖の前兆はじわりじわり、非常に巧みで、見応えの有る作品に仕上げられています。
何より、キャラクター達の心理描写や個々の性格に基づいた行動や仕草が非常に綿密に設定されていて素晴らしい。兄弟の絆や友情、強さや弱さ、好きや嫌いも、故に躊躇わせたり判断をミスしたり、悲しみから身動きできなくなったり、時に勇気ある行動を促します。
危機のど真ん中に居ながら、デイヴィが亡くなったコディを置いていけないと重荷覚悟で抱き上げて行くシーンなんて、ちょっと胸に来ちゃいました。パニックに陥り、みんなで抱き合って恐怖に慄いたり、常に仲間を鼓舞し、支え合う姿は、堪らなく素晴らしかったです。
終盤に目前でジリアンが殺された際には、みんな、立ち尽くし言葉を失ってしまう...そんなシーン、普通の映画にさえ殆んど観られません。
仲間を逃がす為に盾に成ることを決意し、逃げる側も共に戦うまでの勇気は無く、ただ涙ながらに彼を抱き締める...そんな姿は、非常に感動的で涙が零れます。
結構な健康?優良?青春ホラーしていて、非常に面白かったです。
成功?の理由はシンプルながら止めどなく進む展開と、絶えない緊張感でしょう。単純な殺戮映画でも無く、悪鬼に若者を苛む理由や秩序が有るように見える事もこの映画を安く落としません。
悪鬼はおそらく、"笑いを担うのがピエロだ"との親の教えを受け継ぎながら、その親がなぶり殺されたのを見てしまったので、"殺し"の意味を理解出来ず、ただ知るものも"殺し"、今、彼はピエロを全うしているつもりなのでしょう。頭の中では「ほら壊れちゃった。笑って」と訴えているのではないでしょうか。
そう考えると、若干、殺人鬼にも情が湧いてしまいます。憐れなりき過去を持つ殺人鬼。これこそ、かつてのフレディやジェイソン、マイク・マイヤーズやジグソウにあったもの。
サーカスのトロッココースター「愛のトンネル」で見せられる下世話な人形劇が、25年前の惨殺に隠された真実なのではと思わされます。町の人たちは自分たちの疚しき行いをサーカス団のせいにして、排除、抹殺したのかもしれません。
何とも奥が深い。アサイラム製とは思えません。...私の思い込み過ぎかも知れませんが...

欠点を言うならば、サーカス小屋の外壁が隙間だらけの板張りで、若者たちの中にアメフト部の子も居るので体当たりしたら壊せそうなのが気になりました。
それからラスト、若者VSピエロと成る筈が火事の回りが早く激しく、爽快なバトルみたいな楽しみの場さえ無く、足早に終幕してしまうことが、後味を気持ちよく残せず残念でした。更にそのまま後日談も無くあっさり終わってしまいます。

後は文句無し。
いえ、アサイラム製でも、非常に情熱と技術が効いた素晴らしきスラッシャームービーでした。評価は悪いので、レンタル最後の一本に勇気があれば。


で、私の本命。
「バーバラと心の巨人」
バーバラは海を眺める。空を見遣り、森を入念に観察する。キノコから胞子を集め、不思議な薬を調合。学校には結界を張り、家ではいつも戦いの時に備えている。
バーバラは家でも学校でも、ちょっと風変わりな女の子。故に苛めの標的になり、心理士は案じている。
ある日、バーバラの前に英国から来た少女ソフィアが現れる。彼女は嫌がるバーバラに付き纏うが、巨人の話をし始めるバーバラに寄り添うのを止めてしまう。しかし、バーバラの真摯な想いに、彼女はバーバラを信じようとするが...
私、この映画に圧倒させられてしまいました。この映画にある、"人と違うかもしれないと感じる"、そんな悩みを経験した全ての人へ贈る優しい思いが、私の心をも貫いてしまったのです。
多くの人は孤高のスーパーヒーローや良くてX-Menに感じるシンパシーを、私は思春期に
英国の作家クライヴ・バーカーによる創造物、ナイトブリードを描いた小説「死都伝説」、そしてその映画「ミディアン、死者の棲む街」に感じていました。
居場所が無いと感じ旅を続けるウルヴァリンのように、噂の救済の地ミディアンを探すブーンが、棄てられた墓場の裏に都(ミディアン)を作り密かに身を寄せる異形の人々を捜し出し、自分の居場所を見付ける話でした。
そんな話に共感しながら、今の私自身は遥かに平凡な現実社会であぐらをかいて生活しているわけで...軽いチョイ沈み女な訳です。
だから感じちゃったのです。同じように"普通"のレールから落ちこぼれ、平凡世界では奇人変人、でも空想の世界では全力で生きているバーバラ。私は彼女な煌めきがビビッドに胸の最奥に響き、痺れました。
原題「I kill giant」、「バーバラと心の巨人」です。
もとい。バーバラは姉と兄と暮らしています。兄はバーバラを馬鹿にし、姉カレンも決してバーバラに寄り添わない。学校ではいじめの標的、心理士のモルは案じてはくれるが、バーバラはそんなものは必要とはしていない。
何故なら、使命があるから。
バーバラは常に世界の動きに注目していた。鳥の異常行動、海のさざ波、空、雲、森の変化、そして巨人の痕跡...
驚くほど精力的に人生をそれに費やしている。そんなバーバラは、確実に変人。耳を生やし、奇抜なファッション、そしていつも孤独...

ある日、バーバラの前にソフィアが現れる。
ソフィアは少しだけバーバラの世界に踏み入って来る。バーバラは「何故?」と聞くが、ソフィアは「あなたは私の知る唯一の人だから」と答える。
バーバラはソフィアを疎ましくも思いながら、次第に心を開き始める。そして伝える。自分の使命のことを。
ソフィアは唖然とする。付き合いきれないと思う。しかし、バーバラがいつもなら絶対しないこと。自ら他人に関わって行くこと、をする。
そして躊躇うソフィアにバーバラは...
「あなたはまだ友達?」
ソフィアはバーバラの後に続く。
この映画はかつて作られた「テラビシアにかける橋」や「怪物はささやく」と同様の映画です。どちらもファンタジーの殻を被りながら、とてもシニカルで、決して爽快な映画では有りません。
「テラビシア」は想像力逞しい少女が行方不明に成り、少年は少女がテラビシアに居るんだと信じることでテラビシアを現実のものにします。しかし、結末は痛ましいものでした。
「怪物はささやく」は母の死を受け入れられない少年が、怪物を創造し、その怪物の語る壮大な物語を乗り越えると、そこに有ったもの、有り続けていくもの、そして少年が向き合うべき未来への意義を見出だして行く、そんな話でした。
「テラビシア」には魔法の世界テラビシア。そして「怪物はささやく」では怪物が、残された者の心やその向き合うべき現実を体現し、足を踏み出す事で、悲しみから処世するのです。そうして彼等は現実を受け入れ、明日へ生きて行きました
「バーバラと心の巨人」も同じ。バーバラも何かを失い、想像の世界を作り出しています。
何故?バーバラはたくさんの真実への鍵を覗かせ、時に撒き散らします。
バーバラには親がいない。巨人と戦う武器、戦鎚(ウォーハンマー)を収納するポシェットには野球選手コブレスキーの名前が書かれていること。行ってはいけない二階...等々。
中でもモルと話す中、バーバラは"野球"のキーワードに心を揺らし、涙を溢します。そして関わろうとするモルを叩いてしまう。叩くつもりは無かった。だから、バーバラにもショックだった。
それからと言うもの、バーバラにはソフィアの声も届かなくなり、常に呪文のように無数の言葉が頭を廻るように成ります。そしてバーバラはバーバラを案じるソフィアをも殴り倒してしまう...
巨人の襲来。
バーバラが大切なものを失った事を、好機とするかのように、奴らの襲撃が始まろうとしている。更に姉カレンはバーバラに怒りをぶつけ、兄は顔を背ける。
学校ではいじめっ子テイラーがソフィアを唆す。「同類に成るわよ、あいつは病気...」
バーバラはひとり立ち尽くす...
孤独。それがバーバラから戦う力を奪っていく。
しかし、たったひとりだけバーバラを見捨てなかった人がいた。モルだ。
バーバラは口を閉ざすが、真摯なモルに促され、語りだす。
「巨人は大切なものを壊し、奪っていく。いえ、かけがえの無いものが跡形もなく消えてしまう。もし、私が選ばれし者なら、"死"を止められる」
モルは絶句する。...バーバラの心の傷に気付いてしまったから。
それから、バーバラの超現実は次々と崩れていく。
この映画はファンタジーでは無い。"バーバラ"の物語。現実を受け入れられない悲しき少女の心の物語。振り掛かる辛い現実を巨人に当て嵌め、戦う意思で必死に"生きる"に自らを縛り付けて来たバーバラの抗いの物語。
しかし、そんなバーバラは、皆の前から姿を消してしまう。

ここからは少しだけソフィアの物語。
彼女はバーバラを裏切ってしまった事に非常に胸を痛める。ソフィアはモルに相談し、モルはカレンに問い掛ける。少しだけ明かされる現実。哀れなバーバラが見えてくる。
ソフィアはバーバラの世界を知ろうとし、その扉を覗き見る。
そこには"ジャイアント・キラー"、コブレスキー...幾つかの真実と鍵を拾い出し、そしてバーバラに辿り着く。
しかし巨人の襲撃は迫っていて、バーバラは戦いを開始する。
嵐迫る中、バーバラの前に、最強の巨人タイタンが姿を見せる。
バーバラの信じる気持ちは彼女のウォーハンマーに力を与え、タイタンをはね除ける。
タイタンはバーバラに語りだす。
「私の標的はお前だ。お前を連れ去りに来た。この世のものはみな死ぬ。だからこそ、生きる喜びが必要なのだ。生きている間は終わりを恐れるな...さもなければ、人生を否定することに成る」
孤独なバーバラはタイタンに勝てないと予言もされた、しかしバーバラは秘めた思いの力をウォーハンマーに宿し、タイタンを打ち砕く。
自らを犠牲して。
海に沈むバーバラ...
バーバラは死の瀬戸際で"思いの声"を耳にする...
バーバラ役はマディソン・ウルフ。「死霊館、エンフィールド事件」などに出演し、めきめきと頭角表す若手です。巷では巨乳美人と有名だとか...
ソフィア役にシドニー・ウェイド。まだ演技的には拙いか...これからの女優さんです。
姉カレン役はイモジェン・プーツ。「28週後」「幸せに成るための5秒間」など、ちょっとエキセントリックなイメージも見せるイモジェンは大好きな女優さんのひとりです。
モル役はゾーイ・サルダナ。「アバター」や「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」で有名ですね。役どころは弱いですが、重要な役回りです。

人生。タイタンがバーバラに語った"人生"とは、バーバラが目を背けて来たもの。バーバラが空想に逃げてしまうくらい恐れたおぞましい現実。それを捨てるのか?無かった事にしていいのか?とバーバラの心の奥底は、巨人の姿を借りて問い掛けた。
現実に目を反らしてはいないかい?
何かをしている事を言い訳にし、明日で良いさと延ばしていたら、ある日、あなたの大切なものはもう触れることも出来なくなってしまうかもしれない。悔やんじゃいけない。さあ、振り返れ。
そう、この映画は、私達の弱さに囁きかける。
私は...この映画に心から感謝します。
映画としては盛り上がりに欠き、アクションもファンタジーも中途半端で、ドラマも描ききれていない。突き抜けた異質感を醸しながら、非常に優等生な綴りもいけない。オチもバーバラをあまりに前向きにし過ぎてしまい、同調するたくさんのバーバラ予備軍を置き去りしてしまう。何よりここが寂しい。
...でもそれは私の我が儘。私がまだバーバラより現実を見ていないのかもしれない。
バーバラは人生を受け入れた。ウォーハンマーを置き、鎧を脱ぎ捨て、ベールを解き放った。
私もこんな映画に涙しないくらい強くならなくちゃ。そう思いました。
バーバラが空想世界に逃げてしまっている事で現実的に何かが手遅れになり、大切なものを失い、悔やみを感じてしまうようなシーンが欲しかったような気がします。戦いに向き合うバーバラが強すぎるので、奮起する切っ掛けにして欲しかったです。
そんなバーバラに「ひとりで戦わないで、ひとりで生きようとしなくていい」と、ソフィアやモル、カレンが彼女を支えている事を強調しても良かったと思います。その中にはいじめっ子のテイラーも入れてあげて欲しかった。きっと彼女もバーバラが変わり者に成ってしまった事に憤りを感じている一人であると思うから。いじめでしか表現出来なかった不幸な子だと思う。
バーバラと最強の巨人タイタンとの戦いは意外と呆気ない。VFXも、見た目は良いが中身は無い感じ。もう少し出来たろうにと惜しさを感じます。
それからやはり、気持ちとしては、終わりでバーバラはまだ空想から抜け出せていなくても良かった...かな。
もう少しバーバラと一緒に、想像の世界を歩きたかったから。
シドニー、マディソン、イモジェン。イモジェン、かっこいいでしょ~。
後ろは監督さんかな?


☆母の脚の診察に病院に行きました。まだ痛みが有るので、心配は消えません。
病院の様子は以前とあまり変わりませんでしたが、入り口では体温を測り、消毒も徹底していました。
コロナ、まだまだ私達を苛みます。私達の意思の力を試されているように思えて成りません。
頑張ろう。私達のみんなを思い遣る気持ちが私達をも救うのだから。
わしゃわしゃ髪。髪を切っても、まだ暑苦しい。坊主にしてしまおうか... 無理です:p
今年はタイのミスインターナショナルクイーンも中止みたいですし、ガモン・コスメティックホスピタルも存続出来ているのでしょうか...心配です。
折角繋がった世界が閉じて行くようで、悲しいです。