"人生で価値のあることには代償がつきものだ"
それこそ、映画である。何かを得るために何かを失う。そして手にする答え。それこそ映画の醍醐味だ。
そう言わんばかりのエンターテイメント。
...勇気を出して恥かいて来い!的な清々しさがここに有りました。
「ダンス・ウィズ・ミー」
静香は都会に出てそれなりにサクセスを為していた。ただ、ちょっと飛び抜けず、ただちょっと恋が叶わない。
そんなある日、姪っ子を連れて、あるアミューズメントパークへ。
そこで、かつて催眠術で一世を風靡していたマーチン上田に出会い、姪っ子は後日、学校で行われるミュージカルイベントで上手く歌えますようにと願う。静香は眉唾とばかりに疑ってかかるが、姪の傍らに居た静香は、その催眠術を受けてしまう。
とは言え、何も変わらない現実。そう思っていたら、静香は音楽が聞こえる度に歌い踊り出してしまう。更に仕事のプレゼンでも歌い踊ってしまった。静香は我に返って逃げ出してしまう。
しかし、意外にもプレゼンは成功、焦がれの君とも前向きに!やったぁ!そんな時、初デートのレストランで子供の誕生日が。当然、静香は歌い踊って店を破壊するまでに...
せめて来週のプレゼンだけは成功させたいと、催眠術を解いてもらう為、マーチン上田を探す事を決意。マーチン上田の元相棒の千絵と共に一路新潟へ旅立つ。
先ず、感じたのは、日本映画やるじゃない!でした。
正直、期待していませんでした。何しろ日本ではミュージカル映画は駄目だから。以前「丘を越えて」と言う映画を観た時、終盤にミュージカルシーンが有るのですが...まあ、酷かった。隊列組んで入れ替わりしているだけのダンス?でしたから。
クオリティは勿論、もしかしたら日本人の風貌が絵に成り辛いのかも...映画のスナップショットに期待できない...かな?
ゴメンなさい...
が。
この映画は、そんな私の危惧を払拭しました。程好いカット割りにテンポの良い切り替え、具合良い引き絵、無理しないダンス、良い音楽性、画面いっぱいの華やかさ。どれもが非常に愛らしく素晴らしい。
"ミュージカルは取っ付きづらい"、"不自然な歌い始まり"なんて、どれだけディズニーで耐性付けてもやっぱり実写じゃキツい。
そんな畏怖を覆す自然な設定?が気持ちいい。つい、あなたもやってしまう歌って踊っちゃう独り時間に「でしょ?」と共感巻き込んで来る。
もう飲み込まれます。さすがに子供の誕生日に「♪狙い打ち」は無いだろうに、と思いながらも最高の時間にうっとりしてしまった。観ているこちらも手足がウズウズしてしまいました。催眠らへんの扱いが映画「ビッグ」みたいとか気になりません。最高です!
が。...またしても欠点は有るのです。
後半、ロードムービーに成り、ウィットたっぷりで面白いのですが、踊らなくなってしまうのです。一応催眠術でも「曲を聞けば、踊り、歌いたくなる」との振りなので、踊らなくちゃいけない訳では無いのですが、前半の盛り上がりは確実にだだ下がりしてしまい、もう残念としか言いようがない。更に、歌もひとつを除いて心情を歌うことも無いし、新潟にいる時は「♪新潟の~」秋田に居れば「♪~の秋田~」みたいな、移動場所を歌うなんてテクも無し。何でこの歌?と気持ち退いてしまうほど、この映画には、正直、合わないし、つまらない歌一曲を歌い続けるなんて、違和感満々です。
旅の相棒は、マーチン上田の催眠術の際に"やらせ"担当だった女性、千絵。彼女も仕事がなくなりマーチン上田を捜していました。
更に金目当ての興信所の捜査員とマーチン上田の借金回収を図るヤクザ?さん達が絡み、ドタバタ珍道中は、歌、踊り無しでも、なかなか面白いです。
ちょっとおデブな、やしろ優、扮する千絵は朗らかで歌もダンスもなかなか。ちょっと人間的にだらしないのが玉に瑕。興信所の捜査員は金にがめつい男。ただし意外にも人情家の一面も有り、感情移入が進む度に葛藤しながらも、お金は一先ず握る憎い奴。ムロツヨシが担います。
マーチン上田は宝田明。ちょっと入れ歯?なのか滑舌微妙ですが、かつてのカリスマはまだ香っています。存在感はなかなかでした。
道中には相棒失い帰郷を願うストリートミュージシャンも絡みます。裏があり、純粋イメージで出会いながら実はなかなか猟奇的。オチの歌は衝撃的で見事。ぜひ、あの歌を私の結婚式で歌っていただきたい。絶叫爆笑です。
演じるは歌手のchay。最高でした。
そして静香役に三吉彩花。印象の弱い手直し顔さんなのですが、その醸す朗らかな愛らしさは非常にこの役に合っていました。前述、無理しないダンスに歌を披露し、生?的歌でも充分耳を酔わせます。シルエットも綺麗で素敵でした。
個々のオチは全て読めてしまう単純さですが、そんなお約束もたまには清々しい。
前半100点、後半50点。やはり"ダンスウィズミー"して欲しかった。"シングウィズミー"では物足りない。
お金の事とか、友情の修復とか、仕事の責任あたり、ちょっと映画都合だけで描き足らずでしたが、全編気持ちよく観られました。
ジュリー・テイモアによるビートルズソングで青春を歌い綴る映画「アクロス・ザ・ユニバース」くらい歌が物語を語っていたら、傑作でした。
もひとつ。
「洗骨」
母が亡くなった。父はその死を受け入れられずにいる。兄も妹も胸を痛めていた。
4年後。洗骨の儀式を行う為、家族は集う。
映画は実際にごく最近まで沖縄で行われていた儀式を題材に、家族のドラマを描きます。
父はかつて事業に失敗し、酒に溺れ、母は苦労した。そして病に命を縮めた。
家族は、そんな憤りや恨みに近い思いを抱えています。兄妹は血の家族以外にもあれこれ正直に向き合えない思いを抱えています。"洗骨"はそんな家族の間の歪みを解いて行く事に成っていくのですが、残念なのは、彼らの問題を実感し辛いこと。始まって観ている方は登場人物のキャラクター性を見定めているのに、問題有りとは伝わりながら、どれだけ歪んでしまっているかを描き足らず、分かり辛いのです。
私達はこの映画が"洗骨"を描くのだと分かっているし、この先に見るだろう家族の和解も想像がつく。だからこそ速やかにキャラクターを知らせて欲しいのに、なかなか、誰が誰だかさえ分かりません。初っぱなからボケかましに時間を費やし過ぎてる暇があったらキャラをもっと描いて欲しかったです。
気付けば4年後。え?そんなに時間を掛けるの?洗骨の常識など全く分からず、ただただ置いてけぼり。
...この映画、大丈夫?と冷めた気持ちに成りました。
この映画の監督、ゴリなんです。吉本の芸人。ヤバい香りが漂います。
しかしなのだ。4年後に成ってからは、定型ながら、故にそれぞれが抱えているものが分かり易く、適面に目で見えるように成ります。
このシーンは中盤に途端に訪れ、全てのしがらみを忘れさせるイベント。魚の追い込み漁。
死に立ち止まっていた家族のが、重荷を忘れ、思わず笑顔こぼれる"息抜きの暇"です。
最も褒めるべきは構成です。
登場人物はひとりずつ現れ、妊娠、酒飲み、家庭問題、と集いと提示のタイミングがとても良い。しがらみを抱え、素直に成れない遺族達。自分の辛さを誤魔化す為に、家族を貶してまた混沌。でも吐き出された憤りは、程好く彼らの真実なのだ。
...あれ?気持ち良い。そう思えるほどきちんと書かれ、紡がれた脚本が素晴らしい。
更に台詞も生き生きとしていて耳に刺激的だ。
そんなキャラクターたちを急かし唆し導くのは伯母の存在。私、芸人に詳しく無いのだけれど、この方、芸人なのかしら?
正直、ちょっとウザい。典型的な沖縄人なのか、はたまた関西人のようでもある彼女は、いかにもお笑い的で映画的でもあり、非常に担い過ぎる狂言回し。もう嫌に成るほど面倒くさい。でもそのウザさが、しみったれて愚痴愚痴な主人公たちの胸の内の真実を、吐き出せる役割を担っている。
更に妹の妊娠に関して、映画は非常にハードルを上げてくる。妹は結ばれないまま妊娠をしてしまう。シングル覚悟。お前は甘い!と喧騒を招く。あれこれ事情と男が如何に素敵な人かと聞かされる度に、さてどれだけの男なのか...と期待させられるでしょう。
...素晴らしい男でした。
初見「やっちゃった...」と誰もが思います。ですが、彼、非常に素晴らしい。素直でいい人で、歯に衣着せぬ男。
正直、惚れます。こんな人なら...そう思えます。瞬く間に妊娠に不安が無くなります。そして彼の衣着せぬ物言いが意外にも家族の間の絡んだ何かを解いて行きます。
そして、思い出したように"洗骨"が始まります。
結構なしんどい儀式。それを淡々と見ることに。死ひとつ。
また、伯母さんやってくれます。ボケをかまし...いえ、事故で、神妙な儀式の、ある意味グロテスクを一転し、映画を完璧に昇華してくれます。絶妙とはまさにこれである。
そして生(せい)ひとつ。
然り気無く写真の中には"良い男"写ってます。もう一枚にも居ますよ。:)
とても丁寧に綴られた、死に向き合う人達の、物悲しくも愛らしい人間ドラマです。
日本映画に有りがちなワンシチュエーションにコメディカルな小ネタを挟みながら、ちょっと人間の醜い部分と刹那的な心のドラマを見せ付けます。そしてその先に辿り着く答えが待っている。
清々しいラスト。もやもやが晴れ、明日が楽しみになる終局...
葬儀を描く映画は基本、死の先に生ありと説きます。そして生きる某かの中にその姿を見る...そんな描きを味わいます。
今作では、その生の受け継ぎの見せ方が、上手いです。誰もが妹の髪飾りと後ろ姿にそれを見ます。父と共に、母のかたちは娘に受け継がれていると目撃するでしょう。しかし、つい、忘れている。母の面影は、遺物や形より、もっと生活に密接した感覚に訴える"もの"にしっかりと染み込んでいると言う事を忘れている。
父は、それを前にして、ただ、嗚咽する。
映画は溜める事もせず、それを自信たっぷりに見せてくる。
この映画はワンシチュエーション。辿り着くは私達の想像の枠は越えません。
吉本映画の場合、多く狙ってばかりだけど、今作はそれが少なく、味わい深い非常に良い映画でした。映像も芸人監督とは思えぬ程好さで不満が有りません。
とは言え、やはり内容は高尚ながら、地味。評価されるのは分かるけれど、愛着持って何度も観たいと思わせる牽引力に欠くのが残念でした。それにちょっと長いかな。50分くらいで時間を確認してしまいました。残りの時間は瞬く間でしたけれどね。
欠点はあれこれ有りますが、それを"映画"としての巧みさと作り手の意欲で、まさに"仕上げた"、良い映画です。
☆最近、おそらくオレオレ詐欺と思われる無言電話が、うちによくかかって来ます。
そして先日、留守番電話が入り、そのままにしていると、録音開始と共に相手が驚くほど咳き込んで、咳き込み終わると僅かに笑い、録音を終えました。
...嫌がらせなのでしょう。何とも悲しい気持ちに成りました...
暑く成ってきましたね。今夏は穏やかに過ごせるでしょうか?
今、草花をたっぷり育てています。お家ライフばかりでは有りませんが、やはり家が多い。でも、結構、楽しんでやっています。
暇にはゲームも...プレイステーション4を埃まみれにしてプレイステーション3をフル稼動。ファンタジーゲーム「スカイリム」を再開し、更に、ついに「Fallout、New Vegas」に手を出しました。世紀末のアメリカ西部を舞台に孤高?のサバイバルが繰り広げられます。
手間のかかるオープンワールドゲームを2つ同時に進めるのはナンセンスですが、気分で分けて楽しんでいます。
...やはり概ね「Fallout」。スカイリムは王国や組織の思惑や陰謀に振り回される展開なのですが、Falloutは自らの意思で世界を切り開いて行く感じを味わえるのが魅力です。でも傑作3は勿論、ほどほどの4よりイマイチかなあ...