夏だから。ホラーの痛みと苦さこそ、私達の心を捉えて放さない。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

梅雨本番。
ようやく脚の怪我も落ち着き、危なげながらも自転車散策も出来るようになりました。
家の中を歩いて、庇い続けて萎えた筋肉の回復を図り、階段もひょいひょい上がれるように成りました。
でもまだ違和感抜けず。
あと少し。あと少し。
ちょっとホラー映画風味です。顔が呑気で大失敗。:p
少し歪んだ感じが幽霊屋敷探索中みたい?
でも実は若干カメラの広角による歪みは有るものの被せ加工以外には弄ってません。ちょっと不思議な感じ。

ふふふ。
そろそろ暑くなって来ましたので、ホラー映画です。
「ザ・リング、リバース」
サマラによる呪いを実験する教授と学生たち。「毎日連絡を」と大学に旅立ったホルトとの連絡が取れなくなり、悩みあぐねるジュリア。ある日、見知らぬ女スカイがホルトのパソコンで対話してきて、よく分からない事を口にした。不安になったジュリアは、彼の元へ。そこで実験の事を知り、スカイの呪いによる死を目撃してしまう。
更にサマラの呪いの映像を見てしまうことに。
ことの現況がサマラにあると知ったジュリアは、呪いの映像に新たに焼き付けられた謎の映像を手掛かりにサマラの秘密への糸口を辿る...
もういつ終わるのさ~と嘆いてしまうほどの「リング」のループは、安直なセオリーをただ辿るだけで、もういい加減にして欲しいもの。
日本の「リング」はTVで放映されたものが一番面白く、サスペンス風味で謎解きと駆け引きの妙が、とても素晴らしかった。映画版は母子と言うエッセンスを取り入れ、話は元から良かったので安定した作りには成りましたが、何せ評判悪い松嶋嬢の牽引力は低く、辛うじて真田氏が深みを醸していました。話は「らせん」に続きますが、こちらは荒唐無稽感が凄く、私は好きでしたが、映画界は無かった事にしようとしたのか「リング2」を製作しました。出来はまあまあですが「リング」のファンサービスとしては及第点。そして驚くべき完成度の「リング、バースデイ」へと続きます。貞子の始まりを描いた今作は非常に出来が良く、青春ものとしてもよく出来ていて、壊れ行く貞子の姿はまるで「キャリー」のようにも見えました。
「貞子VSかや子」なんて番外編もありましたね。「呪怨」のヒロイン?と貞子が戦います。意外にも遊び心と共にドラマ性があり、B級覚悟ならば、なかなか見応えはありました。
まあ「貞子3D」からは、邦画の悪いところが露骨に出てしまい、キャラクターは貧弱、脚本は驚きも深みも無く、スティーヴン・キングの爪の垢くらい飲んでから出直しなさい、と言いたいくらい安っぽい。
そんな日本「リング」甘々で信奉する方々の大嫌いなハリウッド版「ザ・リング」シリーズは、第3段を迎えておりました。
第1段は日本の劇場版1作目を丁寧に改変。地味で淡々とした暗さを、勢いとミステリアスさで導きを上げ、アクション映画並みの爽快なホラーに仕上げられました。
母子のドラマも伝わりやすく、父の存在感が減退しながらも、サマラを巻き込んで感動要素までも私達の心に忍ばせてくれました。
そして「ザ・リング2」が作られました。しかし何とも尻が浮いたままのような不安定な映画で、安っぽさが拭えず、サマラの涙は拭われる事無く、闇に沈んでしまいました。
あれから長い時間が流れ、「リング」は「リバース」します。
長くなりました...
で。この「リング」。以前から私が理想とする、概ね人の亡くならないホラーです。全く亡くならない訳ではないので、恐怖と戦慄感は有りますので悲観せぬよう。
まず、プレストーリーとして飛行機事故が描かれます。そこではサマラの呪いがアナログを越えてデジタルに転換されている事を知らされます。ここでの荒唐無稽な虐殺は、ショックと事情説明としては充分ですが、やり過ぎ感があって、私は嫌いです。
そして新たなる始まり。ビデオデッキを手に入れた教授ガブリエルと女生徒スカイ。テープが中に残っているようだ...と再生...じっとりじわりと迫る気配...鳴る携帯電話...7日とのメッセージ...ハエ...天に流れる雨水...
見事な前振りに背筋がぞくりとさせられます。
ただ、ちょっと携帯電話の呼び出し音が甘いです。固定電話のベル音がいいのになあ。携帯電話でもベル音に設定したらいいのに。音ドキッ!が減退してます。
そして、ジュリアとホルト。ジュリアは病気の母の為に故郷に残りホルトだけが大学に進学し、旅立ちます。このシーンは、とてもロマンティックで素敵な映像と台詞で描かれます。
「...オルフェウスが、死んだ彼女を助ける為に地獄へ」
「いつも男が助けるのね」
「探し回って彼女を見つけ、悪魔と取引をして、彼女を解放させる。彼が先に地上へ向かうが、条件は"地上にふたりが出るまでは、彼女の方を振り返ってはならない"と言うもの。しかし不安になったオルフェウスは振り返って彼女を失ってしまう...」
この会話は、ホルトのジュリアを置いていく気持ち、そして後のふたりの行動に影響していきます。
これはギリシャ神話のアポロンの息子オルフェウスが精霊エウリュディケーを愛し、失ってしまう悲しみと悔やみの物語です。ホルトはジュリアを失いたくないと常に思い続けます。その為に、積極的に謎解きに挑むことに成ります。その寄り添いは愛に満ちていて、とても心強く、頼もしくもあります。
彼はオルフェウスの話の最後にこう付け足します。
君に振り返らないなんて僕には無理だ」
オルフェウスとエウリュディケーの話では、"ふたりが光の中に出るまで"が条件だったので、オルフェウスはほんの数歩を我慢できなかった愚かものでもあったわけですね。教訓ありきなのに、ホルトもちょいちょいミスしてます。:p

"振り返る"と言う話は聖書にも有りました。
退廃と腐敗に満ちたソドムとゴモラを、神が天の火で焼き払おうとした際、信仰深きロトが神に慈悲を受けます。彼は家族を連れて町を出る事を許されます。しかし何があっても振り返っては成らない...と神に告げられます。天からの火は町を崩壊させ、怒号と叫びに包まれます。しかし思わず振り返ってしまったロトの妻は、命を落としてしまうのです。
まさにオルフェウスと同様の物語。
人間は、あまりのおぞましき惨状を見てしまうと、命を支えきれないほど耐えられない、と言うことなのか、絶対神が理を逸した時、それを人ならずとも神でさえ見ることはならないと言うことなのか。真は分かりませんが、もしかしたら、過去を振り返るべからず...と言った隠喩なのかもしれませんね。

蛇足ですが、オルフェウスの話には続きがあります。
彼は後に女性との愛を一切絶ち、父アポロンを偉大な神と崇めるオルフェウス教を広めます。しかし、トラキアの神ディオニソスに敬意を見せなかった為に怒りを買い、マケドニアのディオンの狂乱の女マイナスに命じ、オルフェウスを八つ裂きにしました。
オルフェウスの首はヘブロス河に竪琴と共に流されましたが、それは川を下り、海へ、そして遥かレスボス島まで流れ着きます。島民は彼の死を悼み、竪琴と共に弔います。そんな事実を知った父アポロンは絶対神ゼウスに懇願し、オルフェウスは琴座と成りました。
オルフェウスの奏でる竪琴は世の女性や女神だけならず、冥界の渡し守カロンや番犬ケルベロスをも魅了し、おとなしくさせ、更に冥王ハデスの妻ペルセポネーをも魅了、彼女がハデスを説得した為にあの取り引きが行われました。
残酷なギリシャ神話の中で、オルフェウスの心とその愛はあまりに美しく、しかしその顛末はギリシャ神話らしくあまりに残酷でありました。

もとい。
ジュリアはホルトとの別れの際、
「匂いが恋しくなる...」と語り、彼からシャツを受け取ります。ジュリアはそれを抱え込み、彼との別れを惜しみます。
私はここまでの10分程度で、心からこの作品に惹かれてしまいました。その後もフェンスに寄りかかりメッセージをするジュリア...など愛らしいカットが続きます。
本当に映像が美しい。

予感めいた恐れ、"セブン"と呼ばれるホルト、スカイとの途切れた対話...
そして彼の元へ飛び出して行くジュリア...
日常が次第に傾き、携えた愛を信じるためにジュリアは悪夢の渦に飛び込んでいく...
ホラーはこうでなくちゃ。不明瞭な断片が集まり、主人公の背中を押して、更なる不思議に晒されていく。
踏み込みすぎて後戻り出来なくなった主人公に、警告または予言としての死を放り込む。そうなったらもう映画の虜。悲劇は私達に焼き付けられ、主人公の意識にシンクロさせられる。
巧みなホラーはサスペンスに近い。そして更に心を惹き付けるホラーは、愛や絆、好奇心、嫉妬、裏切り、そして悔やみや執着、時には罪悪感や労りを行動根拠にする。この映画は、その多くを孕んでいる。1や2よりも、遥かに心が描かれています。そして...
死にかけの鳥、新しい映像、サマラの出生の秘密、幻覚、ジュリアだけ違うこと...そんな鍵となる要素が断片的に表れ、次第に結び付き、絡み合って、ある衝撃的な真実へと辿り着かせていく...
「リング」信奉者はこの映画が大嫌いなようです。原作とは違いすぎるのでしょうか?彼等からすれば、この映画は異端でしかないようです。
しかし道筋を辿り、謎を解き明かして行く件りこそ、かつての「リング」の醍醐味では?と私は思います。

「私が呪われた事を無駄にしたくない」
サマラの呪いを解いていこうとするジュリアの意志力は、かつてない「リング」の新次元を垣間見せます。そんなジュリアの姿は、"オルフェウス"を体現する"女性の物語"として描かれ、それはサマラへの共感となり、繋がり、誰よりもことの真髄を解き、ほどいて行くことになります。
女性映画とは言っても、ホルトもちゃんとジュリアに寄り添い、最後まで支えます。そして教授ガブリエルも悲観的ながらも、手は止めず、自らの罪悪感と責任に向き合います。
みんな、自らの心に問い掛け、誰かの為に頑張ります。
そうして、物語は"いわく"や隠した町の過去を、露にして行きます...

主演はマチルダ・アンナ・イングリッド・ルッツ。
一見の美人では有りませんが、意志力で行動しながら弱さも見せる、等身大の女の子を繊細に演じ、健闘していました。作品の性質上、多く表情は暗く堅めですが、序盤の笑顔は印象的です。

デジタルになったサマラは薄型テレビだろうがスマホだろうが、何時如何なる場所でも、その狂気を奮い始めます。ちょっと無敵感のあるサマラの呪い...いつか晴れる時が来るのでしょうか?その時までにはもう少し、道程が必要みたいです。
私は、充分に面白かったです。1や2有りきのサマラですが、おおよその知識さえ有れば、今作だけでも楽しめますよ。


ついでにこちらはホラーでは有りませんが、ホラー並みに口に苦い映画です。
「ブラッド・マネー」
正直、言うと、良い映画とは言い難いのですが、こんなに心を掻き乱される映画も少ないでしょう。
ビクター、リン、ジェフの3人は高校時代の親友で、心許し、何でも共有し合った仲。卒業と共に別の道を歩んでいた。3人は久しぶりに集い、かつて楽しみだった、川下りを楽しむことに。
そんな時、飛行機が墜落、脱出したパイロットと荷物が落下する。
そうとは知らない3人は久しぶりのレジャーを楽しんでいた。かつてビクターとリンは交際していた。しかしリンは陸上競技の夢のために彼と町を捨てて、都会の大学に進学していたのだった。楽しいいとまに流れる柔い不協和音...
リンは川辺に流れ着く荷物を拾う。それは驚くほどかの大金だった。リンはジェフに相談、大金を持ち帰ろうと画策する。
そして彼等の元にパイロットの男が迫る...
先ず、川下り映像が清々しい。始まって山間風景の美しさをこれでもかと言うほど見せ付けられます。そして軽快な音楽とあまりに楽しげな3人の姿には、私、羨ましさを感じました。
あんな友達が欲しいなあ。
ビクターに飛び付き、お腹にパンチするリン。
再会を心から喜ぶジェフ。
躊躇わず川に飛び込み、笑顔と歓喜に溢れる再会...
ため息が零れるほど最高のオープニングでした。
しかし。ビクターだけは抱え込んで、ノリが悪い。彼女の愛称"チーター"と刻まれたナイフを携え、未練がましい。
そんなズレに忍び込み、容赦なく引き裂く"お金"と言う誘惑。相談を避けられるほどのビクターの生真面目さは、彼等の絆を壊してしまう。不器用なビクター。
とは言え、大金を主人公達がせしめようとする展開なのだから、次第に感情移入が傾いて行ってしまう...
もう観ていて、どう観ればいい?どう期待すればいい?とばかり考えさせられてしまいます。
しかし、そんな欲は彼等を容易く解き放ちません。
大金は、彼等を様々なかたちで追い詰めます。キャンパー達に見られそうになったり、袋が破れてしまったり、仲間割れ、そしてパイロットが探している...
それは思わぬかたちでパイロットに知られてしまいます。更に彼等の欲は、幾つもの事故を引き起こしてしまい、更に更にと悪運を引き連れてくる。
事態は取り返しが付かなくなり、歯止めも効かなくなり、彼等は必要以上に傷付き、怒り、死に物狂いの恐怖の時を過ごすことになってしまいます。
そして追い詰められて、"つい"行う衝動が、あまりに酷で陰惨で、彼等の友情を理性ごと奈落に堕とします。その顛末はあまりに口に苦く、堪らない気分になります。
でも。リンの抱えていた苦しみは尋常ではなく、そんな彼女へのジェフの労り、ビクターの気遣う心...それらがあまりに素敵で、映画が少しでも良い展開に成らないものかと常に祈り続けることでしょう。
しかし、そんなあなたの優しさは尽く裏切られます。
もう何しろ辛い。苦い。でもきっと、あなたが優しさだけならず心に辛さを抱えているならば、生存者の涙が理解できる筈です。そして奮われる"つい"を見ても、その者の嘆きと悔やみを共に抱え、終局、せめて助かって、幸せに成って欲しいと願わずには居られないでしょう。
パイロットのミラー役にジョン・キューザック。彼は主役級俳優なので、作品を確実に牽引します。ただし、彼の明るい映画を楽しんでいたりすると、彼の優しげな風貌も手伝って、違和感を感じてならないでしょう。私も、ちょっと安っぽい軽さを感じてしまいました。
リン役はウィラ・フィッツジェラルド。「スクリーム」のTVシリーズなどに出ているそうです。逞しささと共に弱さ、心の葛藤をその表情に垣間見せます。
ビクター役はエルラー・コルトレーン。ジェフ役はジェイコブ・アーティスト。二人ともキャリアは凡凡。ですが、複雑な状況に置かれた感情を丁寧に演じます。

ギリギリで危なっかしい、狂気に寄り添った"希望"。それに命を掛ける価値があるのか...
感情移入、そしてその崩壊は、じわっと心に暗いものを宿らせ、私のように捉えられてしまうかもしれません。
それは多くのホラー映画より恐ろしいものかも、しれません。(*≧ω≦)。


☆雨で出来ないことばかり。母の友達が脚を傷めて手術、更に庇っていた反対の脚も傷めてしまい、また手術になってしまいました。
彼女は私の事情を全て知り、そして心から受け入れてくれた方なので、手術の癒しにと、DVDにたくさん映画を入れて送りました。
私が誰かに出来る事なんて無いに等しいですが、それでも、こんなブログやちょっとした心が、誰かの為に成ったら...嬉しく思います。
最近、ちょっと人生なんてものを考えてしまったりする事が少なく有りません。でも、不幸じゃない。いいえ。求めすぎなければ不幸などどうにでも出来ます。
期待のようには成らないかもしれないけれど、私の為にと意識し続けてくれる母が居て、気を配ってくれる友が居る。それを信じて、笑顔で生きています。
タイ料理を召し上がれ。ガパオと私風に完成させたタイ炒飯です。
ライムの代わりにレモンをひと振り入れてみました。( ´∀` )b