気持ちが上がって来る季節なので、アクション映画もよろしかと。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

夏かと思うほどの温かさかと思ったら、急に寒くなったり...体があれこれ悲鳴をあげそうです。
春も終わりですね...
花びら散る下で、紫陽花が葉を広げ、季節の代わり行く姿を静かに味わえます。

私、最近、座っている時間が多いためか、ちょっと猫背に成っていたようで、腰回りが痛みがちです。
軽く揉むだけで良く成るし、意識して背筋を伸ばして生活しているとさっぱり痛みません。でも癖はつい背筋を丸めてしまうようで、気づくとガチガチです。
いたた...
お婆ちゃん並みの退化を実感しております。
ストレッチもヨガもさぼっちゃいけません...
サボり癖が...頑張ろ...

5月12日は母の日でした。美しいバラを全世界の母へ。
私も欲しいなあ... :p


そんな季節感を味わっている最中に...
映画「沈黙の達人」を観ました。そして「沈黙の大陸」も。当然「沈黙」です。主演はスティーヴン・セガールです。
私、セガールの映画はヒットした「沈黙の戦艦」があまり好きでは無く、その後の低迷も有って、ここしばらくは避けていました。
しかし、少し前に「沈黙の包囲網、アジアン・コネクション」をタイ目当てで観て、セガールはあまり出ませんでしたが意外にも満足してしまい、最近はセガール映画を"無理せず"くらいに観ています。
ただね...やはりイマイチなものや「観られる」程度なものが殆どでした。そして観た「沈黙の大陸」はトップクラスで酷い作品でした。
私、どんな映画でも良い面を探したいと、愛ある目で観ようと努めますが、これはあまりに酷かった。
映画は中国がアフリカ大陸の通信業の権利を手に入れようとして欧米の企業と争っているところから始まります。中国、欧米、選定委員、現地政府、部族...が邪魔し合ったり揉めたりするのですが、何しろ驚くほどの中国讃歌で、冗談抜きに共産国のプロパガンダみたい。中国国旗を掲げるシーンなんて、必然?だとしても、まさに共産ポスターまんま。比べて欧米側は、見せ場無く、風貌含めて悪魔みたいに描かれます。
感情演技の乏しい中国人主人公がブロンド女性といつのまにか恋仲に成っているのも、嫌らしい東洋人のエゴくさい。
何より酷いのは、部族との接触シーン。部族は女性の割礼を行っていて、選定委員の女性が女の子を救います。結局、奪い返されてしまいますが、中国側はそれを風習と許容し、更に同盟関係を得るどころか敬意を配ります。
更に、沈黙シリーズと言えばスティーヴン・セガールなのですが、出番はほぼ無し。共演マイク・タイソンはアフリカの立場を代弁するキャラクターなのですが、立ち位置がブレていて、結構、頑張っているのに、褒める言葉すら思い浮かびません。
中国映画なのにアクションは悲惨な出来で、唯一の見せ場は序盤のタイソンとセガールが戦うシーン。...なのですが、スタント使用は勿論、スローや早回しなんて小細工多用の有り様で、2人の良さが無駄に扱われてしまいました。途中、机破壊シーンで机の脚が跳ねてタイソンの頭にコンと当たるカットは、大爆笑しちゃいました。死闘の最中なのに...
セガールは殆ど出ません。なのにアメリカでも2人が主演のような売り方されています。
タイソンはお世辞にも褒められる演技では有りませんでしたが、下手でもしっかり演じてました。
...そんな悪夢のような「沈黙」も有りました。日本の企業が勝手にシリーズにしているだけとは言え、あれだけ世界各地を飛び回ったセガールが、こんな偏った映画に出るなんて...と残念に思います。

そして観た「沈黙の達人」。
中東戦争の中、一般市民の犠牲と酷い扱われ方に失望した男は、中国の国境沿いにある町で東洋治療を民に施して静かに暮らしていた。
ある日、特殊感覚の有る少女が誘拐され、家族の求めに応え、助けに行く事に...

先ず、欠点から。シーン繋ぎが雑で更に整合性が甘く、あちらこちらに「?」が浮かび続けます。
悪人の凶行を見た次のカットで、少年が「父が自殺しそう!」と助けを乞えば、それは悪人のせいだと思うもの。しかし別問題。問題を起こした男は何処に居るのかよく分からなくなるし、誰かが命を落としても一目で誰だか分からない。
かつての戦友が手を貸してくれますが、登場シーンは軽薄で、敵の殺し屋だと思いました。
セガールが3年で東洋医学の師範級に成っていたり...
...中国武道の高潔さを謳うくせにセガールの兄弟弟子は繁華街を仕切るマフィアのボス。敵である悪人ともやり方が違うだけで同業者らしいし...これは...裏切りの哀感や「道を見失っていた...」なんて改心の綴りが有るぞ!と待っていたのですが、さっぱり有りませんでした。驚かされること無く、みんな善人でした。
少女の特殊感覚も誘拐の理由でしか無く、物語に意味は持ちません。
悪役に悪のカリスマが無いのも微妙です。
しかし。それ以外は見応えがあります。
「大陸」とは違い、かつてのマーシャルアーツを駆使するセガールが見られます。兄弟弟子による中国武術も併せ、映像的に楽しませてくれます。
まあ、体格太めに成ったセガールには、彼に合うスタントが居ないらしく、背面時にはスタントが大活躍しているのですが、体格でバレバレです。
終盤は軍隊仲間を総動員し"銃撃戦"で徹底交戦と、「武道はどうした?!」と本末転倒なクライマックスに勿体無さが満ち溢れます。
展開も捻り無く、何もしない序盤、そして中盤以降は直進あるのみ。
...殆ど欠点だ。
いいえ。粗はあれどもテンポが良く、なかなか観られるんです。
更に、合間に入る思わぬ撮影法にあなたの感性が刺激される筈です。この映画はとてもアート性に彩られています。思わぬところで、すっと心や記憶に鮮やかな飛沫を残してくれます。
例としては、ある男性が殺されるのですが、その顛末を逆回しで見せられます。一見、残酷極まりないカットから始まり、戻り、残酷さを印象に残しながらも、何故そうなったか...と言う状況を目撃することに成ります。更に血の描き方が、以前、紹介した「ミューズ」のように、変な言い方ですが、美しい。
亡骸を筆に、朱の墨で書かれたように見せられます。私は思わず「美しい...」と零し、このシーンからは目が離せなくなりました。一見の価値ありです。
そして少女の誘拐シーン。
染色が盛んな村らしく、通りにはたくさんの生地が日乾しされています。その間を走る少女をカメラが追うと、まるで鮮やかな色のカーテンを翻しているようで、非常に美しいのです。
...意図された映像は意味を持つ。時に、人の心に刻み込まれるほどの力を抱く。
たかが「沈黙」シリーズ。でも真っ当素材に意思を込めて、意義を孕んだ作品となりました。
前述。イマイチな点も少なくはありません。差し引き、やはり所詮「沈黙の達人」です。でも煌めきに満ちていました。

ちゃんとした映画も観ないとね。
と、「オンリー・ザ・ブレイブ」。
アリゾナ州、市立森林消防団グラナイト・マウンテン・ホットショットの創設とその活躍、そして家族のドラマを団長エリック・マーシュと新人ブレンダン・マックドノーを中心に描く実話を基にしたドラマです。

私、実話の映画ってあまり好きではありません。安直な英雄讃歌で現実離れしたり、美化されて真実が歪められることも。
「パーフェクト・ストーム」とか「ボストン・ストロング」あたり、大した人の話じゃないし。
考えさせられたのは「カポーティ」。「冷血」を書いたトルーマン・カポーティの伝記なのだけれど、話は良い点と悪い点が寄り添ってます。
あくまでネタから取材が始まり、後に「彼を救いたい」と考え始めるカポーティ。そして結果、失敗する。カポーティの苦い気持ちと悔やみが伝わり、良い映画だったと思いました。しかし、カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの物真似映画は本格的なものの、観ている人の望みはそこなの?と考えさせられました。
物真似は控えめで良い。映画に込められた"真実の魂"を良くも悪くも提示して、英雄かどうかは私達に委ねてほしいのです。
「オンリー・ザ・ブレイブ」はあくまで英雄譚。まごうこと無き英雄の話、物真似演技はおそらく無し。例に違わず押し付けられます。ですが、ただの讃歌ではありませんでした。
敵は"山火事"。それもおぞましいほどの化け物です。それを映像で見せ付けられます。おそらくドローンを多用した撮影の妙がとても効果を発揮していて、恐怖を越えて、素敵でした。
尾根に佇む消防士。下方から映像が上空へ。流れる山間風景。そして彼がどれだけ危なっかしい突端に立っているかが分かる。そして広がる豊かな森林。煙たつもの。予感。立ち上がる煙...そして炎。
山の小道を数珠繋ぎに登る消防士、右手には風に煽られ瞬く間に森を焼き付くす炎の海...
そんな光景を迫力満点の映像で見せつける。
序盤のプールとヘリコプターのシーンは、ちょっと面白く、まさに映像の妙。もしかしたらIMAXや3Dだったらもっと凄い映像なんだろうな...と思わせます。
そんな映像の力がふんだんに奮われた中、消防士たちの全力で熱い仕事魂を見せ付けられる事に成ります。
ちょっと家族ドラマが長く冗長で、更に消火出動シーンが切り取りで短くて「バックドラフト」に比べたらアクション性はとても低いです。
しかし専門性は映画を彩るもの。いえ、最たる力を発揮する。この映画では幾つもの消防士の思考やテクニックを拝見できます。
延焼を止めるために先に火を着けて、温度差を減らし、延焼速度を軟化させる。当然、燃えるものも無くなり、火は盛る勢いを萎えさせます。
盛る火を背にし、飛び火に目を凝らす隊員の姿は、あまりに衝撃的で、感嘆の声しか漏れません。
堀りを掘る事で風の流れを変えたり、そうして火の流れを湖に向けたりもする。風や視覚による火の動きを監視し、今、止める事に全力を尽くすだけでなく、先読みして確実な消火を目指したりと、消火テクニックレクチャーとしてもとても興味深く、その由々しき才気に惚れ惚れさせられました。
そして幾つもの消防士の家族と友情と絆の話が描かれます。
傷付き、正しい事の為に挑み、続けること。その困難と辛さは、きっと何かを生み出している...そう信じて彼等は人生に両足を立てて歩き続けて行く...そんな姿がしっかり描かれています。
不足無く、過剰過ぎず、とても見応えある時間を味わえます。前述、ちょっと新人消防士の話が長いので中盤ダレますが、それでも消防団の昇格の話や団長夫婦の話、喧嘩と尊敬、そして馬の話を織り混ぜて、とても意味深く上質なドラマとして紡がれています。
ただし。あくまで実話。美化もあり、更に造形された映画的なクライシスの段取りは踏みません。ですが、捉えるものはきちんと撮られていて、何しろ炎と煙の迫力は壮絶で圧倒的。炎に包まれた熊の話やディズニーの「ファンタジア2000」を思わせる、燃え盛る山中を逃げる動物たちの姿は、無力感と悲壮感を漂わせます。
感情移入もバッチリで、雷が瞬けば、火事を生まないだろうか...と案じ、いつの間にか、観客も消防団員の目で映画を見始めてしまいます。これこそ映画効果。
また、素晴らしいのはスコア。派手にかき鳴らして緊張感を煽るより、雰囲気を大事にしたスコアが素晴らしい。音楽としても前半は軽妙でノリを高め、消防士達の意気を煽ります。まさに映画「ツイスター」のよう。しかし次第にノリは成りを潜め、私たちは重厚なスコアに飲まれて行く。
中でも終盤の状況が停滞した時に流れる低い音程の長音。時が止まったような静けさ...
その時、私達は予感を感じてしまう。
着実に動いている"時間"...静けさは突如、破られる。
そして...
ラスト。生き残りが晒される"悔やみ"が堪らない。待ち受ける人達の感情がのし掛かり、耐えようとして張り巡らせた理性の覆いが、容易く脆く、崩れ去る。
過剰に煽らないラストは非常に感動的で、胸を焦がしました。

リーダー、エリック役はジョッシュ・ブローリン。「アベンジャーズ」シリーズや「とらわれて夏」など、多様に魅せる渋い俳優です。私は大好きです。
かつては「グーニーズ」で主人公マイキーのお兄さんを演じていた事は知る人も多いのでは?今や如何にもなオヤジ。でも意外とかつてから老け顔でした。:p
若手新人愛称ドーナツを演じたのはマイルズ・テラー。平凡そうな風貌ですがアメリカではイケメン扱いらしく、いつもアイドル抜擢...しかし意外と彼の映画は当たっていません。(*_*;
今作ではドラッグ依存から抜け出して消防士を目指す駄目団員を演じています。良い役です。
エリックの奥さんアマンダにジェニファー・コネリー。最近の彼女はアイドル時代のふくよかさを消し、とても芯の有る女性像を見事に演じられています。弱さと共存している感じがとても人間らしく、非常に魅力的です。
ラストの彼女の台詞は圧巻で、私達の心を鷲掴みにするでしょう。
消防団を支持するデュアン役をジェフ・ブリッジス。「クレイジーハート」や「恋のゆくえ」で魅せた音楽性を今作でも見られ、役どころもすごく良いです。驚くは体型が...実のお兄さんのボーに迫るふっくら...

まあ、やっぱり他の実話映画を観たくなるほどの力は有りませんでしたが、思っていたのと違う良い映画では有りました。
男、女を描く...とは違う、"人"のドラマで有ることも、この映画の魅力であり良さだと思います。
観る価値のある作品でした。


「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のBlu-rayが到着し、久々の再視聴。...前回の粗筋、写真のシーンの挟まれた場所がちょっと間違っていたけれど、まあ微々たるものなので...お許しあれ。
で。全編に渡るマーサの晴れない表情に、やっぱりこの映画、地味だなあ...と思いながら、ひしひしと伝わるマーサの閉塞感は、じわじわと私の心を侵食し、私達の信じる安泰の摂理を破壊して行きます。飲み込まれた私の心は、始終、じわっと濡れていました。
姉と何かをしようとしていると思わず零れる笑みは愛らしく、悲観から、襲い掛かるフラッシュバックはマーサから笑みを奪っていく...
マーサの口にする「夢が現実と区別がつかなかったら、どうする...」
幸せは夢でなんてあってほしくない...悪夢の体験は夢であってほしい...
まあ、説として挙げた"コミューンが虚言"とは思いませんが、虚言であって欲しいと思うほど"力の支配する繋がり"と言うものは、見ても聞いても溜め息しか溢れません。
でも終盤になって、怯え、考える事を放棄し始めて表情乏しくなるマーサを見ていると、嘘を誤魔化す子供のようにも見えました。
実のところはPTSDなんでしょうけれど...
人は弱い。支えられる手があなたに有ったなら、躊躇わずそっと手を差し出してあげてください。人はいつも弱さを抱えていて、誰かの助けの手を待っているのですから。意地を張るかも。それでもです。


孤独と筋力不足が痴ほう症に成りやすくするそうです。人と交わり会話を楽しみ、家族や友の居る時を大切にしましょ。もし兄弟が居るなら、それは素晴らしい贈り物です。そして、愛する人、愛してくれる人が居るなら...あなたの事を考え、案じてくれる人が居るのなら...
幸せって言うんだよね。