素敵な春の1時間あまり。私、2016年3月30日を忘れません。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

ひやあ。女性ホルモンと寄り添って、1年と7ヶ月が目前です。
子供は1年にたくさんの出来事と出会うから1年を長く感じるのだそうです。私もこの1年と7ヶ月は結果こそさほど有りませんが、充実した長い日々でした。
人生を頑張って生きているからなのでしょう。:p
ふふふ。


暖かい春の日。
いつものように河原に野良猫さんに会いに行きました。
今日はあまり姿が見えないなあ…と思いながら、一番たくさん集っている所に着くと、可愛い猫ちゃんがたくさん待っていてくれました。
私はいつものように飛び付いて、抱き抱きし始めたわけです。
すると通り掛った男性が「おや、猫がいっぱい居るじゃないか」と言い、猫ちゃんに近付いて行きました。すると猫が必要以上に反応したので、彼は「ちょっと置かせてね」と言うと手荷物を私の止めた自転車の荷台に置き、私の傍へ。
そして猫ちゃんを撫でました。
私たちは猫の周りで「可愛いね」とか「慣れてるみたいだね」なんて些細な会話をし、写真を撮ったり曝け出された猫ちゃんのお腹を撫で回したりしました。
しばらくそんな時間を、名前も知らない二人は、些細な会話と共に過ごしていました。
特に何かが有った訳では無いのですが、私は何と無くむずかゆさを感じてしまい、手近の猫ちゃんを置いて草の中で身を小さくしている猫ちゃんを抱え上げに行きました。
その猫ちゃん、馴染みの猫ちゃんだったのですが、最近、草刈りが有ったので人を怖がってしまったようで、私の腕からするりと逃げてしまいました。
サイクリングロードに成っている道の向こうには小さなベンチが作られていて、その猫ちゃんがそちらに向かったので、私は先回りしベンチに腰を下ろし、猫ちゃんを誘いました。猫ちゃんは私の促しに応え、ゆっくりと躊躇いながらベンチに上りました。そして私の脚に躊躇いながらも前脚を乗せてくれました。私は子に与える母の愛のように、優しく、猫ちゃんの体を撫でました。
至福の時間...すっごく幸せに満ち満ちている中、先程の彼がベンチの私の隣りに座りました。
先程のむずかゆさを感じたのは、彼が「これからこの先の道の駅に行くつもりだった?」とか「いつも自転車で?」と聞いてきたから。
彼は自然に、私の隣りで猫の話を投げ掛けていましたが、私は"つい"、猫ちゃんを無理に自分の膝の上に乗せてしまいました。
さて。何故、私は「つい」そんな事をしたのか。それは股間を隠そうとしたのです。だって、彼、私を示す時、猫ちゃんに向かってこう言うんです。「ほら、お嬢ちゃんの方に行きな」「お嬢ちゃんに撫でて貰いな」って。
猫ちゃんは私が腰を撫でると目を瞑り、舌を出すほど気持ちよさそうにし始めました。すると彼は「本当に気持ち良いんだね。ほら、舌まで出しちゃってるよ」と猫ちゃんのあごを撫で始めました。
彼の手は私の手の傍、そして彼の手の甲が触れました。
「手に触れてすみません」と言うので、私は「大丈夫ですよ」と答えました。
その後、彼は猫ちゃんのあごを撫でる手を大きく振らせ、彼の手の甲は私の手だけで無く、私のお腹、そして胸の膨らみに触れました。ブラをしていたので、変な感触を感じた訳では有りませんが、そこに少しばかり意図を感じずには居られませんでした。
しばらくそんな時間を過ごし、私は猫ちゃんを元のねぐらに戻すと、別れを告げました。
彼との会話の中で私はこの先の道の駅に行く事に成っていたので、行く気は無かったのですが行かざるを得なくなってしまいました。
自転車を動かそうとすると、彼は「手も汚れてしまったし、私も道の駅まで行くかな」と言いました。
私はそんなに悪い気持ちでは有りませんでしたが、歩くのかあ…と思いながら、2人、数百メートルの道程を歩きました。
その間、猫の話、花の話、今日の陽気や風の話をし、しばらく何気無いデート気分を味わっていました。:p
ちょっとプライベートな話も有ったかと思いますが、緊張していたのか忘れてしまいました。
そして、もう少しで道の駅に着こうと言う時、彼は私にこう言いました。
「専業主婦なんですか?」
私は「いいえ、違います。ひとり身です」と答えました。
「あ、いえ、失礼な事を聞いたね」
「いえ、大丈夫ですよ。…お独りなんですか?」
「…あ…いえ…子供も居ます」
「ああ…」
「すみません」
「いえ。社交は豊かな方が良いと思います」
「え?」
「社交、人付き合いです」
「ああ、そうですよね。こうやって素敵な時間も過ごせますしね。素敵な人と出会う事もできますから」
「え?」
「素敵ですよ」
「そんな事は無いですよ」
「...また会いませんか?」
「え?」
「電話番号を教えてくれませんか?」
「え?いえ、あの…」
「ちよっと失礼だったかな。良ければ私が教えるのはどうですか?」
「う…えと…なんて言えば良いか…」
「いえ、失礼、会ったばかりでこんな事を失礼ですよね。それにこんな年寄りと」
「そんな事は有りませんよ」
「いえいえ、こんな年寄りから声を掛けられてもね」
「関係無いですよ。私も決して若くは無いですし」
「そんな、若く見えますよ。綺麗ですよ」
「いえいえ」
「どうでしょう、電話番号は駄目ですか?」
「う…ん…」
「よくここに来るんですか?」
「まあ、そうですね」
「水曜日?」
「必ずでは有りませんが、そこそこ来ていると思います」
「仕事が休みなんですか?」
「不定期なんです。でも水曜日は割合、休みです」
「そうですか…。ならまた会えますね」
私はただ微笑みました。
「また会いたいなあ…お付き合いできませんか?」
「それは…」
「そうですよね」
「いえ」
「初めてでこんな事、すみません」
「いえ…運命を信じましょう」
「そうですね、また会えたら、二度三度会って話をして、そうしたらぜひ」
私は複雑な気持ちではなく、喜ばしいわくわくに満ちていたわけでもなかったけれど「はい」と答えました。
「せめて名前を」
私は躊躇いながら「マリです」と伝えました。
その後、道の駅の自転車置き場に自転車を置いて、トイレに行って手を洗って、彼がまだ出て来ていなかったので、私は野菜売り場へ赴きました。しばらくきょろきょろしていたのですが彼は姿を見せなかったので買い物をして、そこを出ました。
自転車置き場に行くと、その傍らの休憩所に彼の姿を見かけたので、ゆっくり自転車に荷物を置き、出る準備をし、自転車を引いて歩き出しました。彼をに目を遣りながらゆっくり移動していたのですが、彼は携帯電話から顔を上げなかったので、数秒進める脚を躊躇いましたが、そのまま私はその場を立ち去りました。
私は笑顔満々で自転車を走らせました。
擦れ違う人がみんな笑顔に見え、曇天も光に満ち、風は暖かく、私の中を流れました。
家までの道程がなんて長いことか。

「♪恋の呪文はスキトキメキトキス…逆さに読んでもスキトキメキトキス…」
今の私はちょっと壊れています。すっごく体が熱くて、疲れているのに興奮しています。
そしてとても不安で、とても辛い。
私は、あの道の駅の休憩所に忘れ物をして来てしまったかのように、落ち着きません。彼は無事に帰れたろうか、見捨てられた、嫌われただなんて思っては居ないだろうか。
不安でなりません。胸が痛くてたまりません。
ふざけていないと、泣いてしまいそうなんです。


私は彼に「女では無い」と伝えませんでした。それはとても罪深く、私は彼を傷つけてしまったかもしれません。傷つけてしまうかもしれません。
悔しい。何て私は最低なんだろう。

でも、ヒロシさん、ありがとう。私は貴方に特別なものを貰いました。私は毎日、「明日、前に向かう勇気を手に入れられるかも」と期待していました。

明日からは勇気を持って前に向かっていけます。ありがとう。



追記; その晩。ちょっと熱を出してしまいました。女性ホルモンが活性したのか、変に興奮状態で、落ち着きません。
そして、ちょっと、お風呂に入りながら、泣いてしまいました。