今日は珍しく医療の話題で。

 

 

待望の経口GLP1受容体作動薬として日本では2021年2月5日から発売となったセマグルチド。

 

商品名リベルサス。

 

当院は2021年10月の開業ですから、似たような誕生日です。

 

 

さて、そのリベルサスですが、糖尿病治療における実際の使用感と言えばいかほどなのか、

少し振り返ってみようかと思います。

 

 

いわゆる確固たるエビデンスではない雑談であることはご承知おきください。

 

 

 

まず最初に、当院の方針としまして、現時点で糖尿病以外の症例へのリベルサス使用に関しましては

使用できないということは明確ですので、その使用経験を振り返ることはできません。

 

今後他のGLP1受容体作動薬を含め、肥満症への適応が通る可能性はありますが、

単純な体重減らしたい願望のために服用することはやはり危険な印象を持っています。

 

 

やめると元通りになることが多く、一生服用するの?

 

健康な人が飲み続けることで他の害が出てくる可能性は?

 

などのクエスチョンマークがぬぐえません。

 

 

 

 

 

そんなリベルサスですが、3mg、7mg、14mgと3つの規格があり、松竹梅みたいな雰囲気。

 

mgが増えるにつれ値段は上がりますが、効能も強まります。

 

 

こやつ、他の薬や食べ物、濃度のついた飲み物と胃の中で容易に喧嘩をして、拗ねてしまうお薬さんですので、

 

かならず胃が空っぽの状態で服用し、30分間、胃の中で独りぼっちにしてあげます。

 

なんとわがままな。

 

 

それで、必ず3mgから慣らしてゆき、1か月後に診察時に医師と体調や血糖値を見て相談しながら7mg、14mgと進めます。

 

 

3mgで効果を感じる方もみえますが、ほとんどがあまり効かない印象。

 

効果、とは?

 

 

 

気持ち悪くなる、食べる気が起きなくなる、胃が痛くなる、つかえる感じがする、めまいがする、だるい。

などなどです。

 

ただし一定ではなく、人それぞれの表現を使う印象。

 

要は食べにくくなる、場合によっては結構きつい。

 

体重の減り方も効果によってまちまちで、1kg程度から5kg弱、レアケースで10kg近く減った方も。

 

ですが、10kg減った方は薬云々ではなく、体重が減ったことが楽しくなり、行動が変わって10kg減ったということ。

薬だけで10kgは減るものではありません。結局、この方は2年くらいしてほぼ元の体重に戻っていたので、モチベーション維持というのはむつかしい。

 

 

今のお話のように、長く使用していると効果が薄れてくる?

慣れてくる?ような感想を皆様からお聞きします。期間も人それぞれですが、

1年も飲んでいれば、さすがに慣れてしまったという方が多い印象。

 

松(14mg)で飲んでいても、結局は慣れてくる。しかし、それ以上のリベルサス増量はできません。

 

 

2粒飲めばよい!?いえいえ、

 

2錠の服用は添付文章や容量設定の面だけでなく、やはり互いに喧嘩してしまい効果がでないようです。

 

 

 

HbA1c低下力は個人差がありますが、1%、2%近く下がった方もいれば、あまり効かなかった方も。

それでも全体の印象として血糖を下げる力は強く、心血管イベントの抑制や、腎機能悪化のリスク抑制を期待して

服用するメリットは大きい。

 

 

 

特に血糖が高い、心疾患、腎疾患のリスクが高い患者さんではその恩恵が大きくなる可能性が上がります。

 

「総合的な」判断は、たくさんの症例経過を見ていてはじめてできる事ですから、やはりそれ相応の糖尿病治療経験値を要すると思います。

 

 

 

ここからは実際に診察室でお話することでもあるのですが、

 

リベルサスに慣れてしまった方も、よくよく話を伺うと、まだまだ効果を生かし切れていない方も散見される印象です。

 

 

 

「14mgを服用しているが、食べれてしまう。もっと増やせませんか?」

 

なるほど、しかしよく聞くと、食後に胃が痛くなるけど、食べれてしまうので、食べてしまうとのこと。

 

 

そんな時は、せっかくの効き目を逃してしまっていると説明しています。

 

 

リベルサスは胃を小さくするようなイメージ。(きっと実際に小さくはなりませんが、許容量が減る?)

 

胃が小さくなると、胃が仕事オーバーになったとき、胃痛や、気持ち悪さなど、何か信号を発します。

 

それを無視し続けてしまうと、もちろん、よくない。

 

 

これまではその信号を感じることができず、何も考えずに食べれていたところを、せっかく自覚できるように

なったのですから、一度その胃の声に耳を傾けてあげてください。

 

 

と説明します。

 

 

たくさん食べれてしまう人は、それだけ体のメッセージを聞き逃している、あるいは聞き取ることができなくなっている状態ですから、それがわかるようになることは大いなる一歩だと思うのです。

 

 

 

こんな具合に、せっかく薬を飲んでいただくのですから、それを通して、体の変化に気づけるようになるのも、医師としてはきちんと指導、お伝えしなくてはいけません。

 

 

処方したらおしまい。

 

あとは自動的に体重も減って、数値もよくなって、などという簡単な治療はロボットで十分可能でしょうし、

下がらない?飲んでないでしょ?食べてるんでしょで済ませ、全部患者さんの行動で片づけてしまうようでは、

治療サポートする側の行動としてあまり褒められたものではありません。

 

 

体重も減らすことも、糖尿病の数値をよくすることも、とても大変なことであり、

苦難な道のりですが、あーでもない、こーでもないとすることに意義があると思っています。

 

 

 

 

なんだかリベルサスから話が逸れてゆきますが、

 

リベルサスを服用することで起こる変化を逆手にとって、

行動を見直してみることは、ひょっとすると糖尿病治療に役立つことがたくさんあるのではと、

思うのです。

 

 

結論。

 

現時点で糖尿病治療において、血糖も下がり、体重も減るというユニークさから、欠かすことのできない薬剤。以上。

 

 

 

 

富永 隆史