ということはサラサラなく。
わたくしは1日7時間睡眠を遵守している中年であります。
眠らないと機能しないタイプで、休日に時間が許すなら10時間寝ます。
起きた時の回復感がたまらない。
寝ることがなにより好きで、他事よりも寝ることを優先するタイプと言えるでしょう。
最高に気持ちいいと思っているし、怠惰な部分をちゃんと持っている自分が好きとも言えます。
今回は、そんな寝ること大好き怠惰マンが考えている。睡眠についての話。
内科医をしていると不眠の相談はよく受けます。
睡眠薬を出したり、出さなかったり、当たり前ですが相手のニーズや切迫感で決めます。
そもそも睡眠は回復の基本、というかすべてと言っても過言ではない。
うつ病、メンタルの不調は言うまでもなく。
傷んだ筋肉、骨の修復。内臓の修復。目、耳、神経、そして脳の回復。
高血圧や糖尿病にだって影響しますし、身体すべてのメンテナンスを行う重要な役割があると考えてよいでしょう。
そこがおろそかになると、いろいろ具合が悪いことは誰でも知っている。
ずーっと睡眠をとらずにいると人間はどうなってしまうのか。
皆さん正解がわかりますでしょうか。
自身はクイズ形式で大学院時代の教授に問われました。
そこに居合わせた医師数名は脳出血、心筋梗塞、不整脈などを想起した訳なのですが、誰も正答できず。
答えは免疫が機能しなくなり、感染症で絶命する。ということなのだそうです。
風邪のようなウイルスでも敗血症を起こし、絶命するといった感じでしょうか。
とにかく、睡眠を怠っていると、果ては死に至るという教訓です。
睡眠が大事なのはわかったけれども、じゃあ眠れないときにどうするのか。
先に睡眠薬の話をしましょう。
内科医も睡眠薬の処方を求められますが、最近は昔から使用されているベンゾジアゼピン系の睡眠薬への風当たりが強く、依存性が少ない薬へ変えてゆこうという流れが強まっています。
商品名ですと、マイスリー、アモバン、ルネスタ、レンドルミン、デパス、リーゼ、ハルシオンあたりがメジャーですが、このあたりの薬は出さぬようにという流れです。
変わりにベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィなどのオレキシン受容体拮抗薬への変更が進んでおりますが、話はそう簡単ではないのが現状です。
先のベンゾ系の薬は効果が実感できる分、依存度が高い。
簡単にやめれません。それぞれの薬剤に特徴があり、個人差や使用感も様々なように感じます。
花粉症の薬と同じですね。
当方、精神科の先生のように使い分けできている自信もなく、これから処方しなくなってゆく薬剤ですので、ここれではそれぞれの特徴は割愛。
後のオレキシン受容体拮抗薬ですが、うーん、補助的な使用に留まるかな。というのが、自分が診ているフィールド(内分泌内科外来)における第一印象です。
使い分けに関しても、新しい薬剤であるが故にこれからでしょう。
入眠障害に関しても、中途覚醒に関しても、完全解決というイメージはまだもっていません。
ベンゾ並みに期待しすぎているせいでしょうか。睡眠薬と呼ばず、睡眠補助剤くらいの表現の方がよいような気もします。
しっかり効いて満足感が高い患者さんも一定数みえますが、全体的な比率では万事解決が多くない印象。
結果、当院では長続きして使用している患者さんはそれほどたくさんは見かけない現状です。
ベンゾからの切り替えも、丁寧さや丹念さが必要となるケースが多く、やはり精神科の先生と相談しながらがよさそう。
当院が本腰を入れて行う余裕はないように思います。
他には海外ではサプリメントとして売られているメラトニン作動薬。
それから漢方も処方しています。
どちらも当たり前ですが補助的。
漢方薬はハマればそれなりに効果がある印象ですが、どん底を助けるくらいのイメージです。
プラセボ効果は睡眠においてある程度大切かもしれませんが、果たして常用薬となるかといわれると…。
睡眠を意識して処方する漢方は状態や境遇に応じてですが、酸棗仁湯、甘麦大棗湯、加味帰脾湯、抑肝散あたりが多いです。
ここまでの説明でお分かりいただけるとおり、不眠に薬剤は最終手段か、補助的かくらいに考えているということです。
あまり自身が不眠に困っていないため、このような考えになっているのかもしれませんが…。
緊張があると眠れないのは皆が知るところで、自身も経験があります。
明日は朝が早い、寝坊できない。
失敗できない本番がある。テストがある。
あるいはワクワクしすぎて。遠足、旅行、ゴルフの前。
このあたりはコンディションを整えたいため、ぐっすり寝たいのは間違いないですが、制御できないこともあります。
性格などもあるため、こればかりはよほど自制できる人でないと難しいような気がします。
そして最も多いであろう不眠の原因。
悩み事、考え事が多すぎて眠れない。
これもなかなかむつかしい。
意識を消しても気づいたらまた浮かんできてしまう。
自制に任せるだけでは個人レベルのマインドコントロール技術が求められてしまうため、難易度が高いように思います。
解決策としては、寝る前に入浴からの消灯。ヨガ、瞑想、ストレッチ。画面を見ない。などのいわゆる整う系で攻めるか。
いやいや、そんな意識高い系の行動はハードルが高い。
となると、漢方薬は一法となるかもしれません。
興奮をしずめる。考えが多く浮かびにくくする漢方はありますので、白湯でゆっくり飲むと効果を期待できるかも。
ここまで考えてきたことを見ても、やはりサイクルやセッティングは重要で、こうなったら寝るという習慣、スイッチみたいなものを用意しておくと、スムースに行くように思いますが、それができるならやっているはずですので…
不眠症という悩みはサイクル作りが難しい方における問題という側面が大きいのかもしれません。
となると、最後は力わざで寝る方法も「一応」考えます。
横になって考えが浮かばないくらい事前に疲れておく、(まったくおすすめできないが)満腹になる、お酒を飲む。
なんだかそれでも眠れないこともありそうですが、他にもあるかなあ…
満腹は胃腸に血液が集中し、脳に行く血流が減る。
お酒も同様にお酒の分解にエネルギーを取られる+アルコール濃度上昇による意識レベルの低下。で眠くなるのですが。
身体に悪いに決まっています。
それならまだオレキシン受容体拮抗薬を使用した方がマシでしょう。
やはり事前準備やサイクルにこだわって修正をかける方がよいのは明白ですね。
すぐ寝ることを「のび太くん」と形容しますが、彼はなぜあれほど早く眠れるのでしょうか。
スイッチを切るのが上手い、ということなのでしょうが、あれも一種の現実逃避手段なのか。
寝ている間は誰にも邪魔されない。頭を使わなくてよい。
悪夢を見ない限り、これほど素敵な時間はないということですね。
現実逃避として眠らなくてはいけないというのも、なんだか切ない、世知辛い世の中です。
人それぞれ、考え方、見え方は違いますが、改めてこの世の中で生きてゆくということは、なかなかに大変なことなのかもしれません。
富永 隆史