舟を編む(日本/2013) | 娘がやっている栄養療法を父と母もやってみるブログ

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娘が2026年中受予定。娘のチックを治そうと4年前から栄養療法に取り組んでます。



一言でまとめると国語辞書を編集するお話です。


BSで放送されたドラマ版の「舟を編む」がちょうど終了したばかりで、数年前に観た映画版がまた観たくなったのでAmazonPrimeの無料体験で再見。


初めて観た時は題材が地味すぎて、どうかと思ったが、これが非常に面白く、思わずブックオフで広辞苑を3000円で購入してしまった(漫画は読んだが小説は未読)


あらすじ

玄武書房という出版社が中型辞書を新たに出すことになったが、ベテラン編集者の荒木(小林薫)が定年退職することになり、代わりの編集者を西岡(オダギリジョー)と探す。


そんな時に営業部の馬締(松田龍平)を偶然見つけ、荒木は「右」の語釈を尋ねる。「西を向いた時に北にあたる方角が右」という的確な答えを返したので、辞書編集に向いていると確信して引き抜く。


そもそも大学院で言語学を学んだ馬締がなぜ営業にいて、社交的でモテモテな西岡が辞書編集部にいるのかよくわからないが、まあいいか。


辞書編集部に引き抜かれた馬締は2.カード選別の作業にかかる。


既に玄武書房で出版された小型辞書に載っている6万語には◎が付けられているが、「大渡海」は24万語を予定する中型辞書だからそれ以外に載せる18万語の選定作業が必要になる。


資料室には100万以上の用例採取カードが保管されているが、そのリストの中から広辞苑と大辞林の両方に載っている言葉は◯をつけ、どちらか一方は△をつける。


どちらにも載ってない無印の言葉が問題で、どんな言葉を載せるかが「大渡海」の個性を決めるのだという。


選定作業の様子が展開されるが、画面に映ったカードを羅列するとこんな感じ。


「哀韻△」「相酌◯」「間遮◯」「愛器✕」「噯気◯」「愛縁機縁◎」「哀恤△」「哀傷◎」「愛唱◎」「愛妾◯」「哀情◯」「相携える✕」「愛聴✕」「愛猫△」「間紙◯」「相仕△」「合い決り◯」「哀愁◎」「愛執◎」「愛称◎」「愛情◎」「愛書◎」といった具合


「愛称◎」だけでもなぜか3つもカードがあり、意味ごとに追加しているのだろうか。黄ばんだカードが年季を感じさせ、美術さんがいい仕事をしている。


ちなみに「哀恤」「相仕」「合い決り」は一発変換できず。私のスマホの元ネタの辞書は何だろうか。


地味な選定作業に音を上げる西岡に「三省堂の大辞林は完成までに28年もかかった」という荒木。それを聞いてなぜかやる気を見せる馬締(笑)


選定作業は馬締の自宅でも続けられる。完全なサービス残業。「異彩を放つ△」「意気衝天◯」「異端児◯」「生きる◎」・・と、「ア行」が終わり、「イ行」の選別作業に入っているのがわかる。


ちなみにドラマ版では用例採取カードの外部への持ち出しは禁止となっていたので、夜遅くまで会社に残って残業していた。どっちがいいのやら。


荒木が馬締に「長年こういう作業をしていると指紋がなくなる」と言うが、さすがにそれは冗談だろう。


合コンに行って用例採取してきたという松本先生(加藤剛)が西岡に渡したカードには「チョベリグ」「コギャル」「MKE」「ルーズソックス」という言葉がある。もはや仕事が生活の一部になっている。


少し前に再放送されていた「仕事の流儀」の辞書編者の方もそんな日常を送っていた。


38年間、辞書一筋だった荒木の送別会の後、馬締が会社に戻ると暗いオフィスに荒木が佇んでいる。

荒木は馬締に袖汚れ防止のアレ(名前がわからぬ)をプレゼントする。後は頼んだということか。↓アレ



見出し語の選定作業と並行して◎の言葉の語釈の執筆が始まる。



既にある辞書の使い回しではなく、容易に理解できる語釈にするのだという。気の遠くなる作業だ。


夜中、アパートのベランダに出た馬締はアパートの大家の孫の香具矢(宮﨑あおい)と出会い恋に落ちる。


それがきっかけで馬締は「恋」の語釈を任される。新人にそんな言葉の語釈を任せるかね?なんて思ってしまうが、それもまあいいだろう。


ドラマ版では岸辺みどり(池田エライザ)が「恋愛」の語釈を任されたが、LGBTを鑑み「恋愛」は男女に限定するべきではないとみどりは主張する。ドラマ版ではデジタル辞書だとか、時代を取り込んでいた。


映画版の馬締の「恋」の語釈


ドラマ版のみどりの「恋愛」の語釈


ひょんなことから香具矢と馬締は一緒に合羽橋に行き、その後東京ドームシティの観覧車に乗る。


その頃の選別作業は「ミ行」

「道◎」「未知◎」「乱れる◎」「未来◎」「ミラクル◎」「ミレニアム✕」


馬締が香具矢宛に書いた恋文を西岡に読んでもらう。なんと横長の紙を折り畳んだものに筆で書いてある。「戦国武将じゃねえんだぞ!」には笑った。


馬締は手紙を直すことなく(笑)ある晩、香具矢に渡し、翌晩、玄関で正座して帰り(返事)を待つ。怖いね(笑)


帰宅した香具矢は手紙が読めないから板前の師匠に読んでもらって恥ずかしかったと怒っていたが、馬締が「好きです」と伝えたら「私も」という返事。


選別作業はついに「ン行」に突入


「んとする△」「んば△」「んばかり△」「ンビジ・ア・ングル✕」「ンビラ✕」「ん坊✕」ついに見出し語の分類作業が完了


◎62017

◯138356

△80504

無730109


合計すると1010986!


101万以上もの言葉を3人で分類したのだから凄い。


12年後、岸辺みどり(黒木華)が辞書編集部に配属になる。ファッション誌からの異動で不満そうだが、やがて編集部に馴染むようになる。

そのへんの葛藤はドラマ版は丁寧に描いていたが、映画版はサラッと描かれている。


西岡は麗美(池脇千鶴)と結婚して子供がいる様子


見出し語に「血潮」が抜けている事件が起きる。ドラマ版はみどりが見落としたのが原因だったが、映画版は誰のミスか判らない。馬締が「自分の責任です」と謝罪する。


一つ抜けているということはまだ抜けている言葉もあるかもしれないということで(そこはスルーしようぜと思うが)、学生総動員で徹夜で調べるが、結局、他に抜けている言葉はなかった


ドラマ版ではチェックした行を赤インクで模造紙を塗りつぶしていくのだが、まさに血潮のようだった。


こうして15年かかってようやく大渡海が出版されたが、松本先生(加藤剛)は完成を見ることなく亡くなっていた。


無力感に苛まれる馬締だったが、海を見つめる馬締に香具矢が「まじめって面白い」と言って映画は終わる。


映画版では挙動不審な馬締(松田龍平)を西岡(オダギリジョー)は下に見ている感じだが、ドラマ版の西岡(向井理)はそんなことはなく、信頼しきっている感じだった。


ドラマ版で二代目馬締を演じた野田洋次郎はプライベートでも松田龍平と仲良しらしい。日頃から言葉を扱う仕事をしている彼にはまさに適役だった。


この映画の素晴らしさを伝えることは出来ず、結局、あらすじをまとめてステレオ写真を貼り付けるだけで終わってしまった。私も言葉を自由自在に操れるようになりたい。