ラルフ・エリソン 『見えない人間』 | わりと短いブログ

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Ellison, Ralph (2014). Invisible Man. London: Penguin Books.

(ラルフ・エリソン 『見えない人間』)

 

 

“SISTERS! BROTHERS!”

同志諸君!

“WE ARE THE TRUE PATRIOTS!
THE CITIZENS OF TOMORROW’S WORLD!

我々は明日の世界を生きる真の開拓者だ!

“WE’LL BE DISPOSSESSED NO MORE!”

我々は何ものにも縛られることはない!

 

 

原題のinvisibleは、否定の〔in-〕+visible(見える)で=「見えない」という意味を持ちます。

HG・ウェルズの古典SF小説The Invisible Manは、偶然にも同じ題名ですが、こちらは『透明人間』の訳で広く私たちに知られています。

 

Invisibleは、相反するつの意味を内包する言葉といえます。

ひとつは見ようとしても絶対に姿が見えない透明人間、そしてもうひとつは、実際は見えていても見えないかのような扱いを受ける人間の存在です。

 

小説の舞台は1930年代のアメリカ・ニューヨーク。

見えない人間とは当時のアメリカ社会における黒人の立場を表しています。

ある誠実な黒人青年が大学奨学金を手にしますが、実直であるがゆえに不運にも退学を余儀なくされ、大都会で職を探しながら社会の不条理に幾度となく直面し、学び、そして挫折していく物語です。

 

上の引用は、ハーレム地区で黒人の老夫婦がアパートの強制立ち退きにあい、たまたま現場に居合わせた主人公が、いてもたってもいられず群衆の先頭に立ち、無我夢中で即興の抗議スピーチをした最後のフレーズです。

 

dispossessedとは、否定の〔dis-〕+possessed(所有する)で

=「(土地や家が)奪われた」という意味になります。

言いかえると「何も所有しない」。

ひいては「何にも縛られない」。

私利私欲や競争にとらわれず

自由で平等な理想社会を創ろうとする思想をも内包する言葉です。

 

TT)

 

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この文章を書いた、TT

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