トップ写真は、VOGUEの記事からお借りしたリー・アレキサンダー・マックイーンによってデザインされた衣装を着たモデルさんです。
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ギリシャ神話の酒神ディオニューソス(ローマ神話ではバッカス)の話に戻ります。
生を肯定的に捉え、死を怖れ否定的に捉えることから、生と死は分離し始めます。
ディオニューソスは、その生と死の狭間で誕生した瞬間、それ以前から、死を”陰り”として漂わせる存在でした。
彼は神ゼウスと人の間に出来た子で、嫉妬と陰謀の中で母セメレーは悲しく命を落とすことになり、まだ生まれる前のディオニューソスを父ゼウスが自らの体内(もも)に取り入れ臨月を迎え、そうしてディオニューソスは父ゼウスの身体から生まれました。
これの象徴するものは「父(男性)から生まれた息子(男性)」から何か「強烈な父性/男性性」を感じもしますし、そこは私の感じるところでは、”オリオンの持つエネルギー”とリンクするところがあります。
まずディオニューソスが象徴するものとして、その一つは”マイノリティ”です。半分人間の子であり、神にも認められない環境で育ったディオニューソスは、ゼウスの子なので偉大な力(才能)があっても、自分が存在する世界(社会)に認められない”マイノリティ”の象徴だと感じます。
ディオニューソスはその神話のあり方から「ディオニューソス的なもの」として「陶酔的」「創造的」「激情的」「混沌」など形容されるようになり、対して「アポロン的」という表現があり、「理性」「秩序」「明るさ」「正しさ」「形式的」などがあげられています。アポロンは太陽神、そしてディオニューソスは酒神。
「生と死」はそもそもは表裏一体のものですが、それが対照的なものとして分かれていく過程において、生はアポロン的であり、死はディオニューソス的なものとして印象付けられていくのだと思います。
「生と死」というテーマが、次元下降し分離していくとき、「死」は恐れるものとなり、忌み嫌うものとなる。どう扱っていいのか分からないものを恐れる、特異なものを恐れる、だから、排除したくなり、避けたくなり、あまりに恐れると攻撃したくなる。そういう私たちの心の反応です。
大衆に対してマイノリティ(少数)は、理解不可能な存在としていつも人々をおびやかし、潜在的に恐れられる存在だった。恐れられるがゆえに攻撃対象となり、弱者という社会的立場を取っていくことになりました。
ディオニューソス(バッカス)に導いてくれたのは、リー・アレキサンダー・マックイーンでした。
二十歳の頃に好きで見ていたファッションの世界の、その美しさと芸術性に感銘を受けたデザイナーですが、彼は私にとって、強烈な生のマイノリティの象徴であり、二十歳の頃ただ眺めておくだけで、その後20年かけて見つけるために手つかずで置いておいたものの象徴だったのだと解りました。
VOGUE 2月11日はアレキサンダー・マックイーンの命日。天才が遺した“野生の美”を忘れない。
リー・アレキサンダー・マックイーンはズバ抜けた才能とそれによる成功を体験したけれど、同時に常に孤独であり、同性愛者という点においても社会では性的にマイノリティであったのだろうし、ドラッグにはまり、エイズも患っていました。
そして2010年に自らの命を絶ちました。彼の命日が2月11日であったことに、この記事を書くにあたって上の記事に出会い、気づきました。
2月11日は大塚国際美術館に行った日です。
その日に「あなたの絵画」で示されたのが「嵐(テンペスタ)」で、バッカス(ディオニューソス)と出会いました。
20年以上前、アレキサンダー・マックイーンに感動していた頃、私は大学生でした。
私が留学した先はアメリカだったのですが、留学先に選んだ町は、マイノリティが集まる町として有名なところだと行ってから知りました。そういう意味では”自由”な暮らしという点で発展もしていて、よりマイノリティたちが集まってくる。
ドラッグ、貧困、黒人白人などの人種の課題、同性愛の社会的立場、移民問題などなど、
その時、マイノリティの混沌に沢山身近で触れることができ、”何も答えは出ないけども” ”沢山の処理できないものをそのままに” 現実的な関りにおいて沢山の体験と観察をしました。
そうして”混沌”を手つかずに持ったままその後の20年をスタートさせました。
その手つかずに持った混沌を、回収できる時が来たのだと思います。
自身の内観も兼ねて、流れのまま書いている元記事です。
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