おじいちゃんちに住むようになって、2年生になった。
歩いて5分の所に元の家があったから、たまにお父ちゃんには会ってしまっていたけど、平和に過ごせていた。
大好きなおじいちゃんおばあちゃんとお風呂に入ったり、寝るのもおじいちゃんの所に行ったり。
そして夏休み。
お母ちゃんがママさんバレーに学校に行った。
私は友達と遊んでいた。
しばらくしたら、おじいちゃんがバタバタと私を呼びに来た。
早くしろ!
お母ちゃんが事故にあった!
病院行くぞ!
意味がわからなかったけど、それこそ運ばれるように車に乗せられ、大人達の狭間に挟まれるように病院まで行った。
おじいちゃんとおじいちゃんの弟たち、おじさん、おばあちゃんももちろん居て、何だか大騒ぎだなと思った。
ビックリし過ぎて、一言もしゃべってなかった。
病院に着いて、引っ張られてどこかに連れていかれた感じだった。
少し待つと、ストレッチャーに乗ったお母ちゃんが運ばれてきた。
みんなが声を掛けながら近付く。
私を引き寄せて、
お母ちゃん!って呼んでみろ!
って言われた。
声が出なかった。
声を出したら泣き出してしまいそうで、ぐっと堪えた覚えがある。
お母ちゃんは処置室に運ばれ、おばあちゃんが残り、私達は家に帰った。
お母ちゃんは、重傷だった。
よくわからなかったけど、アゴには大きなキズがあった。胸にもキズがあった。そして、意識がなかった。
それしかその時はわからなかった。
その夜、親戚がビックリする位集まった。
話し合いをしている。
意味はわからなかった。
お父ちゃんも来ていた。
深刻な事になってるのが伝わって、どうしていいかわからず、わざと笑ったりおどけたりしていた記憶がある。
私は行き場をなくしたのかと一瞬怖くなったのを覚えている。
離婚して母に付いてきたが母は意識不明。
どうしたらいいんだろう…
お父ちゃんの所に行くのが、みんなに迷惑にならないのかな…でも私はおじいちゃんちに居たいな…
思っていても言えなかった。
大人が決めた事に従うしかないから。
おじいちゃんも、おじさんも、私をここに置くと言ってくれたらしかった。
お母ちゃんが居ないだけで、同じ様に生活出来るようにしてくれた。
だけど、お母ちゃんが居ないだけで、遠慮をスゴくするようになった。ハッキリ覚えている。迷惑にならないように、邪魔にならないように、泣かないように。
数日して、いつも寡黙なおじさんが、お母ちゃんの病院に行こうと言った。
正直、話もしてくれないおじさんと片道30分かかる病院まで行くのはキツいなと思ったけど、断れる訳もなく、行く事になった。
ほとんどしゃべる事なく病院に着いても、お母ちゃんの意識はなく、付き添っていたおばあちゃんと少し話して帰る事になった。
帰りに、病院の売店に寄った。おじさんは、
好きなの何か買ってやるよ。
と言った。おじさんはその頃小遣いも少なくて何か買ってくれるなんて、はじめて言われたので、びびってしまったが、断る訳にはいかないなと、ブドウ味のガムを一つ選んだ。
それだけでいいのか?
と言われ、うなずいて、ガムを握りしめて車に乗った。
しばらくしたら、おじさんが、
食べろよ。
と言ったので、開けて一個食べた。
それは、いとこに分けないで一人で食べていいからな。
と言われた。そうはいかないなと思ったから返事ができなかった。
そしたら、
お母ちゃんがあんな状態で、お父ちゃんがいなくなったからって、悪い事しても怒る人が居ないと思うなよ。
と言われた。
車での会話はそれだけだった。
でも、私にはちょっとこわかったけど、温かい言葉だった。
それを言われて、この家に居てもいいんだなって思わせてもらえた感じだった。
その日から、おじさんは心のお父ちゃんになった気がする。
今、振り替えると、2年生が考える事じゃないね。
確かに辛かった。
でも、ほんとうに辛くなるのはこれからだった。