グリコ・森永事件 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

NHKスペシャルで 「未解決事件 グリコ・森永事件」を観ました。
日本ではドラマとドキュメンタリー合わせて3話で放映されたようですが、こちらでは一気に続けて放映していました。

http://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/


この事件、もう27年も前のことになるのですね。

入浴中の江崎グリコの社長が全裸のまま誘拐されたり、カップルが襲われて彼女の命を保証しないと言われて指示通りに車を運転した青年が逮捕されたり、「どくいれきけん たべたらしぬで かい人21面相」と書かれた注意書きを貼った青酸ソーダ入りのお菓子がばら撒かれたり。
グリコ・森永以外にも丸大食品やハウス食品なども脅迫しました。
そしていつも警察を挑発するような手紙を送りつける。

「劇場型犯罪」という言葉が作られたように、ドラマを観るような展開でした。

そして、犯人は捕まらないままで、自ら終息宣言。
「くいもんの 会社 いびるの もお やめや…悪党人生 おもろいで」
その後も捜査は続けられたが、犯人が捕まることはなく2000年に時効が成立。

模倣犯がたくさん現れたが、その全てが逮捕されたが、本家本元の犯人だけが捕まっていない。

事件の展開とその犯人像の推理をWikipedia で読むだけでも、結構面白いです。


当時、私は大学生でした。
そして、この事件に関係する現場がたいへん身近なところにあったので、特に印象深いのです。

京都大学のある百万遍という交差点のすぐそばに、当時「百万石」という中華料理店があったのですが、そこの2階がゲームセンターになっていました。
私はそこに夜な夜な通ってはバイト代を浪費するという、まっとうな(?)学生生活を送っていました。

その3階がコピーセンターになっていたのですが、何とグリコ・森永事件の脅迫状がここでコピーされたことがわかったのです。

そして、うちの学科のK助教授(当時)が、犯人として何度も目撃されたり防犯カメラに写ったりした「きつね目の男」にそっくりだといって騒いだり。(本気で思っていた訳ではないのでですが、K先生すみません。)


さて、今回の番組ではいくつか新しい事実が見つかったようです。

ひとつは、現金の受け渡しの指示を、女性と男の子が読み上げたことがあったのですが、その録音テープの声紋を最新の技術で改めて検討した結果、男の子は実は二人いて、また女性は30~40歳台と考えられていたのが、10代後半だとわかったそうです。(まぁ、これは今さら、という感じですが)

そしてもう一点。
現金受け渡しのための車を、犯人が指示して名神高速道路で滋賀県にまで運ばせたのですが、滋賀県警の警察官が大阪府警に秘密裏に派遣していた捜査官が、大津サービスエリアで「きつね目の男」を、次のパーキングエリアでも別の犯人が指示書をベンチの下に貼り付けていたのを目撃していたことが明らかになりました。

しかし、捜査員は職務質問をしたかったが、大阪府警の縄張り意識に遠慮して行わなかったと。

きつね目の男は、その前にも京都駅で指定の現金を持った男性にしつこくつきまとっていることに気づいた大阪府警の捜査官たちが、捜査本部に職務質問させてくれと連絡したのに、本部が許可しなかったため、結局取り逃がしてしまったと。


職務質問を許可しなかったのも、滋賀県警にでしゃばるなと言ったのも、当時の大阪府警の本部長であった四方修氏。番組内のインタビューでも、当時の自分の判断を、自信満々に正当化していました。

番組ではこれが判断ミスだったと言いたかったことは伝わりましたが、はっきりとは言いませんでした。
四方氏のインタビューを撮って視聴者に考えさせようという手法なのでしょうが、ちょっと回りくどかったですね。
失敗から学ぶべきだ、とか。

ここできつね目の男の尻尾をつかんでいれば、全く異なる展開になったでしょうに。
もっと堂々と糾弾してもよかったのに、と思いました。


滋賀県で現金の受け渡しを行われようとしていたとき、犯人は現金を高速道路から下の道路に放り投げさせようと計画していたのですが、何も聞かされていない滋賀県警のパトカーがその高架下で不審な車を見つけました。
職務質問しようと近づいたところ急発進して逃げられてしまい、後にこの車が犯人が使った盗難車であることが判明しました。

その後、当時の滋賀県警の本部長山本昌二氏が、自身の退職の日に焼身自殺しました。この取り逃がし事件の責任を取ったといわれています。こちらの本部長は、ノンキャリアのたたき上げだったようです。

番組に出てきた滋賀県警の捜査官は、本部長を深く慕っており、弔い合戦としてずっとこの事件を追い続けたと。自動車の車内にあった掃除機のホコリからEL(エレクトロルミネッセンス)の粒子があることを見出し、それを扱う工場は関西で1社しかないことを突き止めたとか、犯人像に迫る執念を垣間見ることができました。


一方の四方氏。こちらは京大法学部卒のキャリア。
Wikipedia で調べると、退職後に

関西電力常勤顧問~関西空港専務取締役~ジャパンメンテナンス代表取締役~マイカル代表取締役~ジャパンメンテナンス相談役~一富士債権回収社長~日建会長

と華麗な転職(?)を繰り返しています。経営手腕を評価する声もあるようですが。
それにしても、インタビューで見る限り、面の皮の厚さだけはさすが、といったところでした。


ところで、ドラマのほうで気になったこと。
警察官も新聞記者も、いつも怒鳴ってばかりで、かなーりうるさかったです。チャンネル替えようかと思ったくらい。

当時、男たちはこんなに熱かったのでしょうか。それともドラマの演出だけ?
原発事故で東電の発表を聞いている新聞記者たちのおとなしいのと、あまりに対照的と感じた次第です。


おまけ。

この事件に着想を得て書いたとされる高村薫の小説「レディ・ジョーカー」。
上中下の3冊と長いですが、とても面白いです。おすすめ。

今Amazonで見たら、「一時的に在庫切れ」となっていました。
やはりこのNHK番組の影響でしょうか?

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)/高村 薫
¥740
Amazon.co.jp