福島県に大雨の恐れがあるようです。どうやら、幸いにも福島第一原発あたりは、さほどの雨ではなさそうで幸いですが。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110731k0000m040108000c.html?toprank=onehour
(引用開始)
気象庁によると、記録的豪雨を引き起こした原因の一つである暖かく湿った空気は、太平洋高気圧の移動などに伴い、30日昼までに新潟県に直接流れ込まなくなった。しかし、31日は東日本から西日本の広い範囲で大気の状態が不安定で、局地的に大雨が降るおそれがある。31日午後6時までの24時間に予想される雨量は関東甲信100ミリ、新潟県60ミリ、福島県50ミリの見込み。【池田知広、太田穣、飯田和樹】
毎日新聞 2011年7月30日 23時55分(最終更新 7月31日 0時10分)
(引用終わり)
さて、福島第一原発の敷地面積は350万平方メートル。もしここに50ミリメートルの雨が降ったら、その水量は、
350万m2 × 0.05m = 17.5万m3
水の比重は1ton/m3ですから、17.5万トンになります。
あふれそうな汚染水は10万トンと言われています。それに比べて、一回の豪雨で敷地内に降る雨水が17.5万トン・・・。
敷地内に降った雨水は、汚染水に送って処理するものと思っていて、昨日もそんなことを書きましたが、そうではないようです。
海に放流されているようですね。
6月の記事に、こんなのがありました。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110603/dst11060312580004-n1.htm
(引用開始)
2011.6.3 12:56
東電は、汚染水の放射性物質を除去するなどして浄化するシステムを15日以降に稼働させる計画だが、間に合わない可能性がある。東電によると、5月末には100ミリを超える雨が降り、その影響で水位が50ミリ以上上がったという。
(引用終わり)
100ミリを超える雨が降り、汚染水の水位が50ミリ上がった。
すなわち、汚染水のタンクの上に降った雨の分すら、タンクには入っていない。
敷地内に降った35万トンを越える雨水が、ほぼ全て海に放流されているのでしょう。
敷地内には、爆発で飛び散った放射性物質を含む破片がまだ片付いていない状態のはずです。
飛び散った破片を樹脂で固めるという話があり、実行されたはずです。これは放射性物質を含むホコリが飛び散るのを防ぐ目的でしたが、雨水が汚染されるのを防ぐ効果はどの程度あるのでしょうか。
そうすると、海の汚染が気になります。
放射性物質による海の汚染のモニタリングは、文部科学省のサイトにあります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304148.htm
5/8までは「福島第一原子力発電所周辺の海域モニタリング結果」なのですが、それ以降は「宮城県・福島県・茨城県沖における海域モニタリング結果」となっており、福島第一原発のすぐ近くの海域のモニタリングデータは、なくなっています。なぜやめてしまったのでしょうか。
さて、7/22の「宮城県・福島県・茨城県沖における海域モニタリング結果」を見ると、全て「不検出」となっています。
これはいい結果・・・と思ったらちょっと早合点。
日本海洋学界が、このモニタリングで使われている測定方法は検出限界が高すぎるので、その1000分の1まで測定できる高感度分析法を採用すべきとの提言を行っています。
部分的に引用します。読みやすいように改行も入れました。
http://www.kaiyo-gakkai.jp/sinsai/2011/07/post-14.html
(部分引用開始)
福島第一原子力発電所事故に関する海洋汚染調査について(提言)
平成23年7月25日
5月以降の沖合観測のデータとして公表された値の大多数は「N.D.」(Not Detectable: 不検出と説明されるが,正確には検出限界以下とすべきである)とされている。これは緊急時の簡易法による測定を行っているためであり,数Bq/L(1リットルあたり数ベクレル)レベルでも不検出とされる
[例えば,文部科学省が発表している「宮城県・福島県・茨城県沖における海域モニタリング結果」(5月20日~)における検出限界値は,ヨウ素が約4Bq/L,セシウム134が約6Bq / L,セシウム137が約9Bq/Lとされている]。
事故前に,文部科学省の「海洋環境放射能総合評価事業」において(財)海洋生物環境研究所が実施してきた調査の結果によれば,福島第一原子力発電所沖合海域の海産魚介類のセシウム137の濃縮係数は100倍を超えるものもあった。
すなわち,仮に不検出として発表されている数Bq/Lのセシウム137が含まれる海水であっても,特定の種類の魚介類が十分長い時間生息すれば,生体組織に数百Bq/kg(1キログラムあたり数百ベクレル)のセシウム137を含む可能性がある。このような仮定は,現段階においては必ずしも非現実的とはいえない。
魚介類の放射性セシウム(セシウム137およびセシウム134)についての暫定規制値が500Bq/kgであることを考慮すれば,数Bq/Lレベルの放射能で汚染された海水の拡がり方に関する情報は極めて重要なものといえる。
今回の事故以前に実施されてきた海洋中の放射性セシウムに関する大多数の研究では,簡易法ではなく,高感度分析法による測定が用いられてきた。
高感度分析法ではγ線スペクトロメトリーを用いて,バックグラウンドの影響に十分配慮した上で長時間の計数を実施することや,大量の海水から微量のセシウムを濃縮することにより,海水中の放射性セシウムを,mBq/L[リットルあたりミリベクレル(1000分の1Bq)]以下のレベルで測定することができる。
政府が実施するモニタリングにおいても高感度放射能分析法を導入するよう,ここに提言するものである。日本海洋学会はそのために協力を行う用意がある。
(部分引用終わり)
うーむ。
今まで研究に使われてきた高感度分析法をやめて、検出限界の高い簡易法をわざわざ採用している。。。
文部科学省も、放射能汚染の正しいデータを公表して国民の注意を促すのではなく、「不検出」という情報を公表することで、できるだけ汚染を隠したいように見えます。
私は、いたずらに過度な不安を抱くのでもなく、逆に何でも安全だと主張するのでもなく、正しく怖がることが大事だと主張し続けているのですが、その大前提として正しい情報が不可欠です。
政府・官僚の行うことは全て不審に思えてきます。
この国はどうなっているのでしょうか。悲しくなります。