福島第一原発で、循環注水冷却を開始したものの、水漏れのため約1時間半で停止しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110627/2010_mizumore.html
(引用開始)
東京電力は、汚染水を浄化して原子炉の冷却に用いる「循環注水冷却」を進めるとして、今月14日から浄化設備を動かした結果、原子炉の冷却に使える水が27日午前11時の時点でおよそ1850トンたまったということです。
東京電力は、27日午後4時20分から浄化した水を1号機から3号機の原子炉に注水する配管に流し始め、「循環注水冷却」がスタートしました。
しかし、注水用の配管から水漏れが見つかり、1時間半後の午後5時55分に、循環注水を停止したということです。
「循環注水冷却」は、来月中旬までに原子炉の安定的な冷却を目指すとしている工程表の重要なステップと位置づけられていて、これが実現できれば安定的な冷却の実現に一歩近づくことになります。
東京電力は、水漏れを止める措置を行ったうえで、できるだけ早く注水を再開したいとしています。
(引用終わり)
またドタバタしてます。
(化学)プラントの試運転を経験している身としては、この手の初期トラブルはなかなか避けられないものと、同情したくなる気持ちもありますが・・・。そうも言っておられません。
ところで、今さらながら「循環注水冷却」ってて変な名前ですね。
新たな注水を行わなくてすむように、浄化水を循環しているはずなのに、なぜこんな名前にしたのでしょうか?
それはさておき、私は循環注水冷却ではなく、汚染水を単純に循環して冷却に使うべきだと何度も主張しています。そして、浄化システムは独立させて、処理された水は海に放流して汚染水を減らすべきだと。
この汚染水循環冷却の問題点は、今回のような漏れが起きた場合に、人が近づくのがより難しく、修理が困難になることでしょうか。そこは何とかアイデアを出してしのげるのではないかと思うのですが。
浄化されたきれいな水は、セシウムが既に溶けている汚染水よりも、核燃料に含まれるセシウムをより溶解させやすいので、この循環注水冷却では、核燃料からセシウムを溶解・運搬して浄化設備で高レベル放射性廃棄物を延々と製造し続けるシステムになっています。そしてキュリオン社とアレバ社は大儲け。
一方で、循環注水冷却では汚染水の量は増加が抑制されるだけで、全く減ることはありません。
発電所地域に降った雨水は、飛び散った放射性物質を含む瓦礫に接するので、放射性汚染水としてタンクに貯めなければなりません。したがってこれからも汚染水は徐々に増える一方であり、いずれタンクは満杯になる。その対策が何か取られているとは思えません。
こんなことを心配しているのは、私だけでしょうか?
まぁ、汚染水増加の抑制だけでも早く実行しないと、タンクはすぐにあふれるので、とにかく早期に回復することを待つしかありません。
さて、また気になることが、26日に報道されています。
NHKでは、「3号機プール水 強アルカリ性示す」という、何ともそっけないタイトルで報道されていますが。
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110626/1310_3gouki.html
(引用開始)
水素爆発で原子炉建屋が激しく壊れた福島第一原発3号機では、爆発の際に飛び散ったとみられるコンクリートなどのがれきが使用済み燃料プールの中に散乱していることが分かっています。
東京電力では、プールの状態を調べるため、先月、水を採取したところ、pHが11.2と強いアルカリ性になっていることが分かりました。
プール内のがれきから水酸化カルシウムが溶け出したことが原因とみられ、東京電力によりますと、このままの状態が続くと、使用済み燃料を束ねた燃料集合体を入れているアルミニウム製のラックが腐食するおそれがあり、最悪の場合、集合体が倒れて再臨界のおそれもあるということです。
このため、東京電力は、26日からプールの中に弱酸性のホウ酸を入れて水を中和する作業を始めました。
26日と27日の2日間でホウ酸を入れた水を90トン注水するということです。
(引用終わり)
3号機と言えば、忘れてはいけないMOX燃料。
そして、ホウ酸と言えば、中性子を吸収する物質。
瓦礫が溶けてアルカリ性になったので中和する、という説明になっていますが、実は3号機使用済みプールで再臨界の可能性があるのではないかとの疑いが出てきています。
おさらいすると・・・、
核分裂の連鎖反応では、中性子がある原子核に衝突して核分裂を起こし、このとき放出される中性子がまた別の原子核に衝突して核分裂を起こし、と次々と核分裂反応が連続します。この状態を臨界状態と呼びます。
再臨界とは、一旦連鎖反応が止まった(未臨界状態)原子炉などが、再び臨界状態になることです。
そしてホウ酸はその中性子を減速・吸収する性質があるため、再臨界を防ぐために用いられます。
今回は本当に、単にアルカリ性の水を中和する目的だけでホウ酸を投入したのでしょうか?
MOX燃料は、通常の原子炉で使用されるウラン燃料に比べ、使用実績が圧倒的に少ないため、その挙動がよくわかっていないと言われています。
未経験の現象が起きていて、それを防ぐためにホウ酸を投入しなければならなくなった。
しかし、「使用済みMOX燃料で再臨界の可能性」などと発表すると、今後の原子力発電推進に障害が出る。
だから、単に腐食を防止するための中和ですよ、と発表しておこう。
・・・こんなことが起きているのでは、との疑いがあります。
ネット上では一部、もう既に臨界が起きている、とのウワサも流れています。
さすがにそこまではないと考えますが、こんなデマを誘導しないためにも、事実を正しく発表、報道してほしいものと考えます。
ちょっと勉強した人なら、「3号機・ホウ酸」と聞くと、「MOX燃料で再臨界」と結びつけるのが当然です。
それと関係ないのであれば、先回りして「関係ない」と発表すべきです。
また報道規制が敷かれているのか、(あるいは、報道機関がそろいもそろって、素人の私以下の視点でしか発想しかできないのか・・・まさか) Googleのニュースで調べた限り、このホウ酸投入とMOX燃料とを結びつけた報道は1件もありませんでした。
何も起きないことを、遠く中東から祈るしかありません。