http://www.yasuienv.net/EneBirdsEye.htm
(最新記事「電池:材料は疲れるし我侭だ」が既に公開されています。こちらはちょっと難しいですね。)
この記事の目的は・・・
「いろいろな提案をしている人々がいるが、その立場を俯瞰図に描き、それぞれについて、その核心となっている主張、主張の利点、欠点、いつごろから可能になるか、などを述べてみようというのが、全体像だ。」
とのことです。
そして、「流派」を7つに分類して、それぞれの特性を考察されています。
要旨をまとめてみます。
1.不安定自然エネルギー派
風力派閥と太陽光派閥からなる。いずれの技術も実用を考えれば、ほぼ完成状態にある。1年間(8760時間)のうち、太陽光は1000時間、風力は2000時間動作すればよしと考える。
太陽光は、スマートグリッドを作れば、日照の推移を読むことで、ある地域の発電量について先が読めるようになるので、不安定度では制御しやすい点がある。
太陽光はコスト的に多少高いものの、個人が投資する可能性が高いので実現性はある。風力は、大型案件になるので、やはり企業が投資か。
大量の不安定自然エネルギーを入れるためには、電力網の直流化などによるロバスト(堅牢)化が別途必須。
電力供給量全体の10%までならばなんとか大丈夫という電力会社の主張があり、最終的に20%あたりが上限か。
2.安定自然エネルギー派
地熱、中小水力は、技術的には充分使えるレベル。コストもそれほど高くはない。現在の送電網との整合性が高い。
地熱は明日着手しても、完成するまでに、恐らく10年かかる。中小水力は、3年ぐらいでできるかもしれない。
問題はそれほどポテンシャルが無いこと。原発54基の10%を置き換えることができるぐらい。
将来の可能性をもっているのが、潮力、潮力発電の海洋エネルギー。
難点は、遠い発電地点からの海底ケーブルによる送電。
超長期のエネルギービジョンとして重要で、2040年頃に多少実用になっていれば、良いとする。
この派は導入可能量に限界があること、時間が掛かる技術であることから、しばらくは、使える原発は安全を強化した上で使おうという考え方になりがちである。
3.分散コジェネ派
電力自給型需要者を作ることを目的としている。
お湯という40℃でも価値のある熱利用が行える需要者のところで発電を行うことで、総合効率80%を目指す。
(典型的には、家庭用ガスヒートポンプですね。)
単独で原発のすべてを置換できるほどの強力な勢力ではない。
4.大型天然ガス派
天然ガスを利用した自家発電などを増やすという派。
難点は、自家発電はコジェネにしないと効率が悪いが、コジェネだと熱利用を考えなければならない。
大きなエネルギーを使用する化学工業、製鉄業、セメント産業、製紙業はそれぞれ既に特性に応じた発電と熱の利用が行われており、天然ガスをコジェネで高効率利用した発電は難しい。
ただ、この派は、原発をすぐにゼロにすることを主張する会派にとっては、大きな味方である。
5.バイオマス派
現状では趣味のレベルを超えるのは難しい。
日本では、(ブラジルのバイオエタノールとは違って、)ウッドチップの石炭発電での混焼といった森林バイオマスが本来の本命なのだが、コスト的に難しく、エネルギーのメインメニューに据えるのは、大変難しい。
藻類産出の油などは、カーボンフリーの液体燃料がどうしても必要になったら、時期的には、大体2050年前後には、意味が理解されるようになるのではないか。
6.節電派
節電は、日本人の、特に60歳近い者以上の年齢層にとっては、得意中の得意技のようだ。
しかし、電力使用量を減らすことに関しては、かなり苦しくなっている。
現時点なら、自動車の燃費にこそ改善の可能性がある。特に、プラグインハイブリッド車を活用した省エネ化れが普及すると、オフラインによる充電も陽の目を見るかもしれない。
7.蓄電派
不安定自然エネルギー派の一部に、蓄電派がいる。
しかし、電池は高くつく。特に、寿命をしっかりと考慮しておく必要がある。
電気の固定価格買取制度があるかぎり、売った方が有利という点で不利な状況に置かれてしまう。
電力網が不安定になって、ときどき停電するような状況になると、まったく別の観点で、電池派が有利になる。
・・・結構長くなりましたが。
そして、これら各派を、縦軸を原発軸、横軸を短期-長期とした図の上に置いて、「思想的俯瞰図」を作成されています。

与野党の超有力議員たちからなる「地下
式原子力発電所政策推進議員連盟」などの原子力維持派は、一番下のグループですね。
さて、私の意見は、「不安定・安定自然エネルギーの比率を中長期でできるだけ高めていく。一方で原発については、既設で安全対策が十分と判断できたものだけは稼動を継続(停止中の原発の再開も含む)しつつ、新しい原発は作らない。設計寿命に従って、稼動している原発は順次停止していく。」というものです。
そのために必要な政策の転換として、送電・発電の分離=東京電力など地域電力会社の解体・再編、スマートグリッドの導入、自然エネルギー(暫定)優遇策の実施、研究開発の支援などを、国が主導して進めてほしいと考えます。
原発の運転継続の可否については、安井先生は、テロの危険性は別にして、
「津波だけを考えれば、1000年に1回も起きないかもしれない。1000年に1回でも、今回の福島のような事態は避けなければならない。となると、非常電源の多重化は必須。さらに、5m程度の今となっては低めの津波対策の強化は重要な課題」
と書かれています。
私も、今回の事故も踏まえて、中立な第三者による(・・・これが難しいのですが)徹底的なリスク検証を行った上で、その結果によっては停止中の原発の再開を認めるとともに、逆に稼動中の原発の停止も考えるべきと考えます。
そして最後に、
「原発の安全上の本当の問題点は、使用済み核燃料の処理がいまだ確立していないこと」
とされていることも、重要な観点です。
欧米では、使用済み核燃料を10万年貯蔵しておけばよいとの考えだと。
廃棄物の処理方法が確立されていない技術など、未完成の技術です。
これ以上原発を増やすべきではないと、今さらながら強く考えます。
以上、安井先生のブログにおんぶにだっこの記事でした。m(_ _)m