福島第一原発 浄化装置稼動へ | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

福島第一原発で、汚染水の放射性物質を除去する浄化装置、稼動に向けて試運転が行われています。

とりあえず、放射性物質がうまく除去できることを期待します。


キュリオン社の技術による汚染水の吸着処理というのは、どうも私の知っていた情報からは抜けていました。

網羅的には見れていないということですね・・・。


6/12に、安全保安院から「セシウム吸着塔 概略図」なるものが発表されています。


http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110612001/20110612001-6.pdf


これでは何のことか全くわかりませんが。

油分・テクネチウムとヨウ素も除去するんだ、ということくらいです。


一般に吸着塔というのは、吸着剤がそれ以上吸着し切れなくなる(飽和する)ので、一定時間後に吸着剤の交換が必要となります。その時でも連続的に処理を継続するため、2系列設置して、片方だけを稼動、片方は吸着剤交換作業を行った後に待機させておき、もう一方が飽和(正確には「破過」)したら切り替え、という設計にすることが多いです。

4系列に分岐させた上で、4基直列の吸着塔を持つのは、どんな目的があるのかはよくわかりませんが、調べ切れていません。



最も肝心なのは吸着剤で、気になって調べましたが、使用されるものは、スリーマイル島事故の汚染除去でも使用された、分子ふるい作用を持った"特殊媒体"であり、海水でも使えるそうです。


http://www.businesswire.com/news/home/20110331007068/ja/


(引用開始)

福島原子力発電所では緊急冷却に海水を利用しているため、従来の有機イオン交換樹脂は効力を失い、汚染除去のために利用できません。キュリオンの無機イオン特殊媒体は、樹脂を用いたイオン交換プロセスとは違い、分子ふるいと吸着剤の役割を果たします。このため水溶液中にある同位体吸着剤としての優れた性能は、塩水その他の一般的な阻害物質から悪影響を受けません。

(引用終わり)


ちょっと解説すると・・・、


福島第一原発では、冷却に海水を使用したこともあったので、汚染水には海水が混ざっています。

海水には塩素イオンとナトリウムイオンが大量に存在します。


放射性セシウムは陽イオンとして存在しますが、その性質はナトリウムイオンとよく似ており、一般のイオン交換樹脂では桁違いに大量に存在するナトリウムが多く吸着してしまって、セシウムの吸着の効率が低いと考えられます。

キュリオン社の吸着剤は、セシウムイオンの大きさ(直径)が、ナトリウムイオンの大きさよりも大きいという性質を利用して、ナトリウムイオンが存在してもセシウムイオンを効率的に吸着されるように開発されたものだということです。


(吸着剤の原子構造に工夫があるものと思いますが、直径が大きい方のイオンだけ吸着するというのは私はどんなものなのか、ちょっとよくわかりません。逆に分子構造の小さいものだけを通す孔を持つものなら知っていますが。)


ま、いずれにせよキュリオン社の言う通りの性能が出るならいいですね。


これにアレバ社の共沈法による除去を合わせて、放射性物質を処理するようです。

とにかく、うまく行くことを願うしかないです。



さて、ひとつの大きな問題が、以前から何度か書いていますが、水の方は放射性物質が除去されてきれいになったとして、吸着剤や沈殿した汚泥がきわめて高レベルの放射性廃棄物になることです。


何ヶ月も前から計画しているのだし、素人の私でも思いつく当たり前の疑問なので、対策方法もすでに手を打っていることを期待しましたが、案の定まだ何も考えていないようで、唖然とします。


http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110616ddm003040105000c.html


(↑この毎日新聞の記事、いいですね。)


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(引用開始)

 しかし、汚染水処理に伴い、アレバ社製除染装置では、放射性の汚泥が年末までに約2000立方メートル(ドラム缶換算で1万本相当)発生。濃度は1立方センチ当たり1億ベクレルもの高レベルになるとみられる。他にセシウムを吸着し終えた容器(高さ2・3メートル)も1日2~4本程度発生する見込みだが、その処理は工程表に含まれない。


 経産省資源エネルギー庁幹部は「とんでもない高レベルの廃棄物が大量に発生し、第1原発の事故処理は未知の領域に入る。工程表に影響が出る可能性がある」と指摘する。同庁や原子力安全・保安院は、処理のための法改正や新法の制定も視野に処理策の検討をスタートさせた
(引用終わり)



そして、もうひとつよくわからないのがその後の処理です。


高コストの処理によって放射性セシウム等を除去できた水から、さらに淡水化して(テレビで見たところ、限外ろ過膜法を使うようでした)、この水を循環冷却に使うと。


放射性物質を除去できた水を、なぜ淡水化までして冷却に使用してまた汚染してしまうのか???


アレバ社等の技術で、海に放出できるレベルにまで処理して(できるのでしょう?)海に捨てないと、保有する汚染水の量は、増加が抑えられるだけで、減りません。


一方の循環冷却は、どうせまた核燃料に接触して放射性物質で汚染されるのだから、放射性物質の処理などしないで、外部で熱交換器で冷却するだけで循環すればいいはず。


汚染水の処理と、循環冷却とは、それぞれ別々に実行すべきことです。


なのに、なぜせっかく高いお金を使って処理した水を循環に使ってまた汚染するのかなぁ。

これによって、高レベル廃棄物も増加するし。


本当に東電や経産省や安全保安院など関係者は、何を考えているのか、全く意味がわかりません。



・・・というようなことを書き上げて、アップしようとしたときに、新たなニュースが。


http://www.asahi.com/national/update/0616/TKY201106160625.html


(引用開始)

汚染水処理施設で水漏れ、試運転停止 福島第一原発  2011年6月16日22時35分


 東京電力は16日、福島第一原発にたまり続ける高濃度の放射能汚染水を浄化処理する施設の試運転中に、一部の装置から汚染水が漏れ出したことを明らかにした。装置は自動停止した。水が漏れた場所を見つけて修理するのに半日はかかりそうだという。17日に予定する浄化施設の本格稼働に影響が出る可能性がある。

(引用終わり)


このようなトラブルは試運転ではどうしても起きることであり、批判はしません。

危険な現場で、動き難い作業服を着て(多分)、作業されている方々の苦労はいかほどかと思います。


でも、とにかく、早く何とかしてくれと願うばかりです。