福島第一原子力発電所の放水口の南、330メートルで、海水から国の基準のおよそ1250倍の濃度の放射性のヨウ素131が検出されたことが分かりました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110326/t10014920081000.html
法令では、ヨウ素131の濃度限度は水1リットル当たり40ベクレルで、今回の分析値は1立方センチメートルあたり50ベクレル、すなわち、1リットル当たり50,000ベクレルだったようです。
海水の汚染も大きな問題ですが、さらに気になるのはこれがどこから来ているのかです。
半減期の短いヨウ素131が検出されていることなどから、原子炉の中の核燃料が壊れ、放射性物質を含む水が外に漏れ出た可能性があるとして、漏えいルートの解明を急いでいます。
この件に関して、NHKの解説の動画があります。
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/movie/chapter_43.html
タービン建屋で、作業員が水に浸かって被曝した3号機だけではなく、1号機、さらに2号機・4号機でも放射線量の高い水が見つかっている。
原子炉建屋から配管を通って、タービン建屋に流れ込んでいて、これが放水路を通って最終的に海に流れ込んでいると考えられる、と。
しかし、、、
タービン建屋で放射性ヨウ素131の高い水が溜まっているのが発見されたのと、放水口の海水の放射性ヨウ素131の値が急に高くなったのとがタイミング的に近かったので、これらを結び付けて考えているようですが、これらは本当に直接の関係があるのか、疑う価値があります。
私の疑問は、反応容器に海水(ようやく最近は一部真水に変更)を注入して沸騰させることで冷却していますが、その水蒸気はどこに消えて行っているのか、ということです。
まず、タービン建屋の水についてWikipediaの図で考えます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:BoilingWaterReactor.gif

通常運転時には、上図のように水蒸気・水が流れます。
地震後、津波が来るまでは冷却が行えていたはずなので、このルートは生きていて、途中に弁があったとしても開いていたはずです。
(津波により)電源遮断されたとき、自動で弁が閉になるようにしておくことは技術的には可能ですが、原子炉の発熱が続いているのにその弁を閉めたら圧力容器の圧力が上がってしまうので、常識的に考えるとここを自動で閉めるとは考え難いです。
またこの配管はかなり太く、直径1メートルは優に超えるだろうと想像され、弁を閉めるといっても手動ではとても無理。
したがって、タービンまでの配管は生きていた(今も生きている)と考える方が理にかなっていると考えます。
そうすると、停電で何が起きるか考えてみます。
通常であれば閉鎖系であり、タービンの後はコンデンサ(熱交換器)に流れ、ここで凝縮して水になる。凝縮した水はポンプで圧力容器に送られます。
コンデンサは、冷たい海水を多数の管の中に通し、管の外側で水蒸気を凝縮させる方法と思われます。
電気が止まると、海水のポンプは動かず、コンデンサの管の中に海水が滞留したまま。
また、凝縮した水を圧力容器に戻すポンプも止まります。
このような状態になったとき、水蒸気は配管を通ってコンデンサに流入し、しばらくは管で冷やされて凝縮しますが、管の内部の海水の温度は次第に上昇、水蒸気側の温度・圧力の方が高いので、そのうち海水は蒸発して、管の中は空(食塩だけが残る)になると推定されます。
こうして、停電後の早い段階で凝縮の能力は失われます。
もし、その後、海水を圧力容器に注入して発生した水蒸気は、格納容器側に逃がして、圧力抑制室に導かれ、ここで凝縮しているのだとしたら、タービンやコンデンサが健全である限り、圧力容器と同じ圧力で保たれているものの、何も流入せずじっとしているだけと推定されます。
しかし、タービン建屋で放射線量の高い水が大量に存在することが見つかった要因は以下のように推定します。
・本来なら閉鎖系であるタービン~コンデンサの機器あるいは配管に漏れがある。
そして連続的に圧力容器から水蒸気が流入し続け、放熱によって凝縮して水になっている。
(液体の水では、隣の建屋に容易に入り込みません。)
・圧力容器内で燃料の一部が溶融するなどの現象が起きている。
ヨウ素の標準沸点は184℃なので、放射性ヨウ素の蒸気も水蒸気とともに配管を通ってタービン建屋に入り、ここで水蒸気が凝縮するとともにヨウ素も凝縮、あるいは水に溶け込んだと考えられる。
タービン建屋内の放射性ヨウ素濃度の高い水の発生原因は、このようなところかと考えます。
しかし、タービン建屋の水と海水のヨウ素濃度の高さでビックリして、これらを結び付けているようですが、そもそも原子炉を冷やした水蒸気が本当にどこに行っているのかが、報道ではまだはっきりしません。
推定しているように、これが格納容器に導かれ、圧力抑制室で凝縮しているとしたら、この水も間違いなく高濃度の放射性物質を含むはず。
この水はどこに行っているのかが疑問です。物質収支はどうなっている?
巨大な排水ピットがあってそこに溜め続けているのならいいのですが。(もしそうだとしても、いつ処分する?)
そうではなくて、最初から海に放流していると思っているのは私だけでしょうか?
すなわち、放水口で検出された高濃度の放射性ヨウ素131は、NHKの解説のようにタービン建屋から流出したものではなく、原子炉を冷やした水蒸気が凝縮した水を、放射性物質が含まれているのを知りながら、海に放流しているのではないかと疑っています。
タービン建屋の水が見つかって、これと関係付けて説明すれば、予想しなかった現象のせいで海水の放射性物質濃度が高くなったのだと国民に思い込ませることができると考えた、とまでは勘ぐり過ぎでしょうか。。。
今まで何度も、寺田寅彦(物理学者で随筆家, 1878-1935年)のことば
「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」
を書いてきました。
しかし、正当に怖がるためには、正しい情報が必要です。
特にプルサーマルの報道の件から、残念ながら東電・政府・マスコミまで一緒に情報を隠蔽している疑いを持ってしまい、正当に怖がることが難しく感じてきてしまいました。
さらに、技術的レベルの低さ、先を見通して何重もの対応を準備しておく能力のなさが目に付きます。
それでも、今回のさまざまな問題が何とか沈静化し、終息に向かうことを願ってやみません。