福島第一原発、使用済み核燃料の方の危険性がクローズアップされて、原子炉の方はここ1-2日はあまり注目されていないようです。
強度のある反応容器・格納容器に収められていて、大半の専門家はそれが最後の砦となっていて、万一のことがあっても、原子炉から放射性物質が大規模に拡散する可能性を十分に下げていると説明しており、私も一応それを支持しています。
しかし、その最後の砦である反応容器・格納容器の強度を下げてしまうかもしれない現象があります。
それは「水素脆化(ぜいか)」と呼ばれる、鋼材中に吸収された水素により鋼材の強度が低下する現象です。
Wikipediaの説明は↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E3%81%9C%E3%81%84%E5%8C%96
反応容器内で、露出した燃料棒のジルコニウム合金と水とが反応して水素が発生し、これが火災・爆発につながってしまったことについては、専門家の見解は一致しています。
つまり、鋼材の中で水素は発生していますので、水素脆化が問題になる可能性があります。
たまたま3/5の私のブログで、すばらしい本として紹介した
「大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀」
で、彼らがアンモニア合成技術の開発において最も苦労したことのひとつが、この水素脆化対策でした。
http://ameblo.jp/tomamx/entry-10820803944.html
Googleの"ニュース"において、「福島第一原発 水素ぜい化」「福島第一原発 水素脆化」で検索しても1件も引っかからないので、報道では問題にされたことはないのかもしれません。
しかし、Web上では早々と指摘している方もおられます。
H.Y.さんのブログから引用させていただきます。
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/23372985.html (3/15の記事)
3.原子炉容器溶接部の水素脆化(ぜいか)に注意
原子炉の遮蔽容器自体は、内圧が設計値を超えても、数倍の安全率がかかっていますから、そう簡単には壊れません。しかしながら、容器の配管貫通部が問題です。配管貫通部付け根の溶接部(応力集中部)は、地震によって曲げ強度が劣化している可能性(材料が降伏点に達している)があります。ここが応力腐食割れを起こす危険があります。とりわけ、水素が介在すると脆化がひどくなります(注2)。
原子炉内で副次的に生成された水素により、2号機の格納容器の配管貫通部などの溶接部がクラック(亀裂)を起こしやすい状態となっているはずですから、格納容器の内圧はできるだけ下げる方がよいのは明らかです。
格納容器内圧の設計値は400キロパスカル(4気圧)とのことですが、水素脆化部位はこれ以下の内圧でクラックが入る危険が残ります。もうクラックは入っているかもしれませんが、貫通クラックでなければ放射能漏れは防げます。クラック部位の応力が低ければ、クラックの伝播拡大は防げます。
貫通してしまったクラックでなければ、放射能漏れは防げる、と。
これを信じたいところですが、ぜひ専門家による意見(できれば、大丈夫だよという意見!)を聞きたいものです。