うねりが収まらない。
 波も大きく、満潮時が夜明けと重なり、潮も高くて釣りにならない。


 金曜日だけ、波が少し収まりかけていた。
 夜明け前のまだ暗い海から、何となく魚の気配を感じ、胸の高鳴りを覚えていた。


 そして運よく、日の出と同時に45㎝のハマチが釣れてくれた。その後すぐ2回当たりがあったが針に乗らなかった。
 遥か南海上の台風の影響なのか、土曜日から再びうねりが強くなり、またしてもこの海岸に近寄れなくなっている。

 
 秋も深まり少しずつ、魚体が大きくなってきている気がする。そろそろメジロクラスが釣れるはずだが。


 当日は片身を刺身で。


 1日寝かせて翌日はムニエルで。


 鹿児島産黒毛和牛がスーパーで3割引きだったので、思わず衝動買い。
 シンプルに塩胡椒で焼いて、わさび醤油で頂く。


 昼は久々に、あっさりと小豆島の島そうめん。
 鰹節と利尻昆布、煮干し、干し海老、干し椎茸で出汁を引いた、自家製の素麺つゆで。


 余ったつゆで茄子の煮物を作る。


 えのきとちくわが冷蔵庫に余っていたのでバター醤油で炒める。
 贅沢な昼飯となった。




 最近、かんたろうは悩んでいる。
 トンと対面を果たしたものの、どう接したらいいのか悩んでいるようだ。


 真夜中、毎日ふたりは対面する。かんたろうの方からトンに向かって大声で叫ぶように呼ぶ。
 その声で起こされる私は、毎夜トンの部屋の扉を開け様子を伺う日々が続いている。


 微妙な距離感。
 トンは小猿のように敏捷に走り、飛び回り、轟音を響かせて縦横無尽に駆け巡る。
 渋い、困った表情を見せるかんたろう。


 トンはかんたろうにもちょっかいを出してくる。真剣な怒りの表情で応戦するかんたろう。
 遊んでいるとは思うのだが、少し心配。


 一方的にかんたろうが叱りつけるように吠えたかと思うと、突然トンに向かって大きな甘えた声を出したりする。
 仲が良いのか、悪いのか。とにかく夜中から朝方までかんたろうのテンションが高く、私は眠れない日が続く。 


 疲れ果て、二匹とも昼間は死んだように眠っている。
 おやすみ、かんたろう、そして、トン。

 ずっと一緒だ。



 秋深き隣は何をする人ぞ     芭蕉

 とてもいい季節なのに、南海上を通過した台風16号の影響でずっと海に近づくことができなかった。


 まさしく、怒涛逆巻く荒れ狂った海。


 日曜日、どうにか波が収まってきた。一週間以上荒れ狂っていたので、待ち構えていたのか、釣人も非常に多い。


 波打ち際の貴重なバイトを捉えてどうにかシオ1匹。
 まだまだうねりが高くて釣りにくい。


 即日、コリコリのうちに食べてみる。半分は冷蔵庫で一日寝かす。


 翌日、月曜日の日の出。早くもだるま朝日になっている。
 満潮時と重なり、潮が高く何故かうねりも前日より強まって釣りづらい。


 ナブラも魚の気配も何もない中、夜明けとともに沖合で喰った貴重なハマチ45㎝。
 運が良かった、感謝。



 トンがトライアルでやってきて四日目に下痢を起こしてしまい、翌日も下痢が続いていたので病院に連れて行き、薬をもらった。
 そして六日目の土曜日、正式に里親として契約を済ました。
 これでトンは、かんたろうの妹になった。 


 少しやつれているトン。手足が細長くその姿はまるで貴婦人のようだ。
 ゲージから出して2階の六畳間を一部屋締め切ってトンに解放しているが、夜中ずっと走り回っている。おかげで睡眠不足が続いている。
 様子が伺えるように、その部屋の入り口のドアと隣の部屋に続く襖に、何箇所か少しづつ隙間を開けている。


 ところが・・・。
 部屋から音がするので、かんたろうは気にして近づき、隙間からトンを見つけると大きな声で威嚇する。
 離れていてもイラついて草をむしゃぶりついたり、体中を頻繁に舐め回して落ち着きがない。


 それでもトンはドアの隙間からかんたろうを見つけると嬉しそうに近寄ってゆく。
 見ていて健気で愛くるしいが、何故か哀しくなってくる。 


 ふたりで仲良く楽しく暮らしていたのに、かんたろうに悪いことをした気がする。
 思うように、かまってやれないトンにも。


 仲良くなれる日はやってくるのだろうか。
 おやすみ、かんたろう。
 深まる憂愁の秋に、今はただ哀しみだけが広がってゆく。




 彼岸が過ぎてめっきり涼しくなった。
 北寄りの乾いた風が時折強く吹き抜け、さざ波が海面を滑ってゆく。夜明けの海岸はもう肌寒い。


 台風通過後、この広大な海岸には適度に波気が残り、ハマチ、シオ、カマス、などが数は少ないながらも回遊しよく釣れていた。


 ところがその高活性も秋分の日で終わったようだ。
 金曜日からの飛び石連休中は釣人ばかりが多く、魚はどこに行ったのか当たりすらなかった。 

 秋分の日にどうにか釣れた43㎝のハマチ。


 刺身は少し飽きたので、この日の夜はハマチのムニエル。
 すだちを絞ってご飯と。醤油でもマヨネーズでも美味い。


 三枚に卸して小骨を抜き塩を当てたカマスと、二日寝かしたシオの塩焼き。これもすだちたっぷりで。
 旨味が凝縮されている。


 二日寝かしたハマチの刺身。
 血合いを取り、生姜醤油に少し漬け込み、漬け丼で頂いた。熱々のご飯と相性が良い。


 深まる秋とともに鰹の脂が乗ってきた。
 ハマチやシオの刺身には飽きても、美味しい鰹の刺身は毎日食べても飽きない。


 日曜日から南海上で発達中の台風16号の影響で早くも海が荒れてきた。
 今週は大荒れでとても海に近づくことはできない。



 日曜日、近所のスーパーで地元の猫の保護団体主催の「里親会(譲渡会)」が開かれていた。
 秋も深まりつつ、最近かんたろうも時々淋しそうな素振りをするので、どんな猫がいるのか冷やかしのつもりで覗いてみた。 


 目が合った途端、驚いた。そして目を疑った。
 その猫は、かんたろうとそっくりだったのだ。
 「メス、生後3ヶ月、名前はマルちゃん」と書かれていた。気がつくと思わず、係の人に声をかけていた。
 「ぜひお試し一週間のトライアルにチャレンジしてみてください」
 そう押し切られ、急遽ゲージと共に家に連れて帰ることとなった。


 今日で三日目。
 しかし、全くかんたろうはこの子猫に近づこうとしない。近くに連れて行くと一目散に逃げる。
 何と、ゲージを置いてある2階にさえ行かなくなった。


 「トン」と勝手に名付けた。
 まるでトンボのような丸い目が印象的で、運命的に突然トンと私の前に現れた気がしたのだ。
 まだまだ怯えきっているが、トンは食事もトイレもすぐにできた。私の中ではすでにおとなしくて良い子の印象が強まっている。


 しかし飼うかどうかはかんたろう次第だ。かんたろう、どうすればいい?  仲良くなれるか。
 もう少し様子を見て見るけど・・。
 今週中に決断しなければいけない。