映画『歌えマチグヮー』 | とむりん Logbook

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映画なのに、いい「ライブ」でした。


『歌えマチグヮー』という映画があります。「マチグヮー」とは沖縄の言葉で「市場」のこと。
那覇市にある「栄町市場」は、昭和24年に公設市場として設立され、昭和30年代頃には「盆暮れには歩くのも大変だった」と言われるほどの賑わいを見せ、那覇市民の台所を支えてきました。しかし平成に入る頃から客足の減少が著しく、いわゆるシャッター商店街と化していき、再開発計画も持ち上がります。

人と人とが触れあいながら暮らしてきたマチグヮーを、このままなくしてしまっていいのか。それは、大切なものをなくすことではないのか。

何とかマチグヮーの再興をしようとした人たちが、その原動力としたのが、音楽。自らもミュージシャンである居酒屋店主が先頭に立てば、民謡を唄ってきたおばぁたちは「おばぁラッパーズ」(!)を結成。他にもマチグヮーに集うミュージシャンや店で働く音楽好きが力を合わせ、祭でライブをやり、CDも作り、音楽のある商店街として「栄町市場」を盛り上げていきます。
元気が出れば人は集まるもの。噂を聞きつけた県内外の若い人たちがやってきて、前からのマチグヮーの人たちに助けられつつ個性的な店を営むようになり、閉まっていたシャッターが1つ、また1つと開いていきます。
今では「栄町市場」は「日本一元気な商店街」として知られるようになり、映画の最後のテロップによれば、2012年6月現在、空き店舗は1つもないそうです。
音楽の力で、マチグヮーは蘇ったのです。


実際にマチグヮー再興に携わった人たちが登場する、ドキュメンタリー映画です。


祭でのライブのシーンで始まり、ライブのシーンで終わるのですが、このシーンがとても印象的です。ステージの中心になるのは、本格的に音楽活動をしていない人たちなので、決して上手いとはいえません。でも、「いいライブ」なのです。(意味、わかるでしょうか?)
映画館だということを必死に思い出していなければ、手拍子して「ピ~~ッ!」とやりそうでした。



沖縄と東京との、音楽に対する考え方が全然違っていることにも驚かされました。普通の人が普通にミュージシャンだったり、そこまでいかなくても音楽の素養がたっぷりだったり、「これ東京じゃあり得ない!」と思うシーンが随所にありました。
ウチナンチュ(沖縄の人)は、血と一緒に音楽が身体の中に流れているのではないかと思えるような映画でした。音楽関係者にも見てもらいたい作品です。


映画『歌えマチグヮー』、東京での上映は9月21日(金)まで、渋谷「シアター・イメージフォーラム」にて、21:10からのレイトショーのみです。
詳しくはコチラをご覧下さい。
http://utae-machigwa.com/index.html  (『歌えマチグヮー』公式サイト)



なお、この映画は被災地で上映されるかもしれないそうです。個人的にですが、それならばぜひ、いわき市と南相馬市で上映してほしいと思っています。
いわき市は、この地出身の僧・袋中(1552~1639)が琉球に滞在している際、郷里の「じゃんがら」を伝え、これがエイサーのもとになったと言われている所です。10月には古謝美佐子さん・「パーシャクラブ」・下地勇さんが出演するイベントが開かれます。
南相馬市には市民文化会館があり、先月ここで夏川りみさんがコンサートを行っています。
いずれも今、苦境にあり、しかも沖縄とゆかりのある土地です。沖縄の元気が伝わることを願っています。