「ストリート甲子園」2012決勝 ~「パドリスタ」悲願の優勝~ | とむりん Logbook

とむりん Logbook

音楽を中心に文化活動の担い手の方を応援しております。
優れた才能を持ち真摯に音楽に取り組むアーティストが大勢いることを広く知って頂けるよう活動中です。
twitter「とむりん.i」(TomLean_i)
mixi「とむりん.i」

120チーム・360組のアーティストたちの熱い季節が終わりを告げました。


「148!」
「赤羽」チーム代表星野雄太さんの手にもうビー玉はなく、この瞬間、「パドリスタ」の優勝が決定しました。


「ストリート甲子園」。3組のアーティストがチームを組み、投票制・トーナメント方式で勝負を競い、優勝を争うイベントです。
第一回戦第一試合が行われたのが5月28日。決勝は9月1日。約3ヶ月にもわたる、長く熱い夏でした。


準決勝まで118試合。どちらが勝ってもおかしくはないという試合、何度もありました。その激闘を勝ち抜いて決勝に進んだのは、東京代表「赤羽」チームと埼玉代表「川越B」チーム。
「赤羽」は星野雄太さん、ふくろうさん、西村俊祐さんと、人気・実力を兼ね備えた男性ソロアーティストを揃えたチーム。一方「川越B」は「夢来-ゆらい-」「パステルカメレオン」「二人星」の、男性デュオ3組のチーム。「川越B」は、各アーティストの名前を組み合わせた「パドリスタ」と言った方がわかりやすいでしょう。昨年決勝で敗れた雪辱を期して、2年連続同じメンバーで参加した数少ないチームです。


これまでの試合は全て田町「Quarter Note」で行われてきましたが、決勝はいくらなんでも(イクラナンデモ、です!)キャパ的に無理ということで、渋谷「BOXX」で行われました。それでも会場は埼京線状態。イベント進行上、MCのためのスペースを設けなければならないということもありましたが、2階にも「お客様スペース」があって、そちらにで見ている人もいたでしょうから、多分「BOXX」のキャパをも越えていたと思われます。


そんな中、ライブは「パドリスタ」先攻で開始。「二人星」→西村俊祐さん→「パステルカメレオン」→ふくろうさん→「夢来」→星野雄太さん、の順で進行しました。
6組も出演して、しかもラッシュアワー状態の決して快適とは言えない状態の中でしたが、ライブ自体はあっという間。気がついたらもう、トリの雄太さんが最後の曲を歌ってました。
そして感じたのは、「ステージが人を造る」ということです。特に驚いたのが西村俊祐さん。初めて見たのは確か3回戦の時で、「なかなかいい男性ソロだなぁ」くらいに思ったものですが、それから1ヶ月くらいしか経っていないのに、決勝のステージはまるで別人。1まわり2まわりどころではなく、スケールが大きくなっていました。
両チーム「大将」の「夢来」と雄太さんも、さらにその力が大きくなったようでした。どちらも、そのままちょっと場所を移動して、NHKホールで歌っても全く違和感がないように思えました。



そして投票の結果、「パドリスタ」の優勝。
昨年の準優勝から1年、それぞれの活動もしながら、「パドリスタ」としても活動し、着実にファンを増やしてきた地道な努力が、ここに結実しました。特に「夢来」は、「ASHITA LABEL」アーティストとしての活動もあったのですから、その多忙さは想像するに余りあります。また路上ライブひとつにしても、1組でなく3組6人となるとできる場所も限られ、そういう所は注意も受けやすく、何度も移動を繰り返したことも珍しくありません。1年間、色々と積み重ねて勝ち取った優勝だといえるでしょう。


最優秀アーティストには「夢来」が選ばれました。11月8日(木)に田町「Quarter Note」で無料ワンマンライブを開催する権利を得たのですが、これは「夢来」としてではなく「パドリスタ」として行います。



今年で2回目となる「ストリート甲子園」。昨年の雪辱を期して1年間チームとして活動し、同じメンバーで臨んできた「パドリスタ」が栄冠をつかみました。
その「パドリスタ」に準決勝で敗れたものの、昨年の優勝チームであり、また票数からして「最強の敗者」ともいえる「川崎A」チームは、「ラポール」というアーティスト集団を母体にしていて、普段から活動をともにすることが多く、サポーターの結束も非常に固いチームです。同じ準決勝で健闘した「船橋A」チームも、よく共演するアーティストが組んだチームだそうです。活動はあまり重ならないものの、チームとしてのまとまりが良かったのが「からっぱこ」を中心とした「浦和猿児」チームで、2回戦で「パドリスタ」をギリギリまで追い詰めました。
また、強い集客力を持つアーティストを中心にした、音楽的に共通点の多いチームの強さも目立ちました。準優勝の「赤羽」はその典型ですが、その「赤羽」に3回戦で真っ向勝負していた、「オーバービークル」を中心とする「多摩」チームも忘れてはならないでしょう。
その点ちょっと気の毒だったのは「ナナカラット」で、直前までチーム編成が決まらず、ようやく出来た「秋葉原」チームもやや整合性に欠けるのでは、という感が否めませんでした。2回戦で、女性ソロアーティスト3人を揃えた「新宿A」に敗れ、ナナカラの力からすると意外に思えましたが、「スト甲」はあくまでチームで闘う、ということを象徴的に示すことともなりました。


アーティスト同士、サポーター同士、そしてもちろん、アーティストとサポーター。これらを全部含めた「チーム」としての力が、「ストリート甲子園」を勝ち抜いていくために必要だということが、2回目の大会で、はっきり見えてきたように思えます。



「パドリスタ」優勝で幕を閉じた今年の「ストリート甲子園」。ですが、「パドリスタ」に取って代わってもおかしくないチームはいくつもありました。中には、もうすでに次回に向けてリベンジの準備に入っているチームもあることでしょう。また、今年は都合が合わず、またはこのイベントのことを知らなくて参加しなかった強力なアーティストが、その盛り上がりを聞きつけ、参戦してくることも充分あり得ます。もしかすると南関東以外からも参加希望チームが現れるかもしれません。


運営方法も改善されることと思います。今年は決勝のみ、「イクラナンデモ」ということで場所を移して行われましたが、正直、準決勝第二試合の方が入場者は多かったようで、気分が悪くなったりする方もいらしたようです。強いチーム同士の対戦は、もう「Quarter Note」では無理があると思います。
また、準備を重ねてきたチームとそうでないチームとの差がはっきりしてしまった感もあります。チームとして結束が固く集客力が高いことが明らかなチームには、「シード」を検討してもいいような気がします。


全体として、観客のマナーが良かったことは特筆できるでしょう。たまに舞い上がってしまう人もいましたが、それでも相手チームへの妨害などは、私の見ていた範囲では一度もなく、むしろ多くの人が相手チームのアーティストも応援するなど、フェアプレイの精神は浸透していました。「競っても争わない」「バトル以前にライブとしてイベントを楽しむ」という精神は、大会の規模が大きくなっても堅持されることを祈ってやみません。


いずれにしても、次回大会も長く熱い闘いが繰り広げられることでしょう。「ストリート甲子園」、目が離せないイベントになっていきそうです。


http://quarter-note.com/street/