少しずつ感想を書き足していたのですが、全部読み終えたので以前の記事をあらためてアップします。
前半は読んだ方は、後半を読んでください。mーーm
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李光洙にハマってしまってるのか、それとも読むのが遅いだけなのか、もうかれこれ、
一ヶ月くらい彼のことを考えて暮らしてるㅎㅎ
「毎日新報」に連載されただけあって、描写が細かい。悪く言えばくどい。
1917年1月から6月にかけて、126話で連載されたという。
この平凡社の単行本がまさに126項でなっているので、新聞に連載された通りなのだろう。
日本語で読んでいるのが我ながら情けないが、でもこれ面白いですよ。
大衆小説としても読める。著者を投影した主人公が家庭教師先で知り合った
柔らかで香しい女子学生にあれこれ妄想するシーンや
昔の彼女?とまでは言わないまでも、彼女と再会し、艶っぽさにこれまた妄想しまくる。
李光洙は25歳。仕方ないか。
当時どういうふうに読まれていたんだろう?
「当時、若い読者の熱狂的な支持を受けた」
http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=936129&cid=43667&categoryId=43667
早く次が読みたいと思いながら新聞を買ってたのかな?
http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=892253&cid=41708&categoryId=41736
「ある読者は新聞を買うために10里の道を往復した」
「ある読者は新聞が配達されたら、まず最初に無情を読んだ。声を出して読み、家族全員が無情のストーリー展開に気を揉んだ」「知識人が読む、初めてのハングル小説だった。」
面白いですね。約100年後に私が楽しんで読んでいる。
読む前はもっと難しい堅苦しい内容かと思ってたです。
でも今の所は面白く読んでます。波田野先生の訳がうまいからかもしれません。
しかし昨日読んだシーン、やたらと「処女じゃない」「いや処女だ」の連続にはかなり辟易…。
昔はこうだったのかなあ~。結婚後の自分たちの姿まで妄想しておきながら前提はそれかよ!みたいな。
子供が読むにはきわどい場面もあるし、小中学生には不適切じゃないかな。
少しずつ吟味して読みたいけど、図書館の返却期間が気になる(既に一回延長してる)。
買うのは少し高い 3672円。
『無情』李光洙  波田野節子訳 平凡社(2005年)
http://www.amazon.co.jp/%E7%84%A1%E6%83%85-%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E8%BF%91%E4%BB%A3%E6%96%87%E5%AD%A6%E9%81%B8%E9%9B%86-%E6%9D%8E-%E5%85%89%E6%B4%99/dp/4582302335
50話まで読みました。少しずつ感想を書き加えて行きたいと思います。
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・平壌に彼女の行方を捜しに来たのに若い小娘とイチャイチャしてる主人公…。
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・74話で初めて「無情な人」という言葉が下宿屋の婆さんから発せられる。
 主人公はエリート気質で、「朝鮮の文明発達のために努力してきた」
 
 直後、話は急展開…。
・79話 「古い人間は新しい人間が自分より多くを知ることを嫌うものだ。新旧思想の衝突の悲劇は、
     その責任がつねに古い人間にある。」
・主人公の動向を見ていると、なぜこの作家がないがしろにされてきたかわかる気がします。
 この主人公はエリート意識が過ぎるのでした。
 私が学生の頃に望まれていたのは「泥臭い庶民」であって「民衆の力」だった。
 80年代の「日韓連帯」に、李光洙は読む価値もない親日派だったんですよね…。
・86話からは平壌に行った彼女の話に戻ります。
 「三従の教え」(家にあっては父に従い、嫁いでは夫に従い、夫亡き後は子に従え)から「新しい人」へ
 
・その後の「愛」についての考察は現代にも十分通じる。「この婚約は愛にもとづいたものか?」
・「結婚した妻に愛情を持てない」という作家自身の経験は、留学同期の友人の話として出てきます。
・文明開化「鍾路や南大門に立ってお互いの話し声が聞こえないくらいに、文明の音は騒がしくなるべきなのだ」
・105話「たしかに彼は無情だった」(笑)
「三人の娘の間にはこんな話がかわされた。しっかり学んで帰って来て、将来は力を合わせて
 朝鮮の女性界を啓発しなくてはという話、ちゃんと勉強するつもりなら米国か日本に留学しなくてはならない
 という話…」
・韓国ドラマのような偶然と人の繫がりで、それぞれの運命やいかに…。
・114話「釜山に行って船に乗り、下関に行って汽車に乗り、横浜に行って船に乗り、
    サンフランシスコに行って降りればいいのさ。」
・115話「祖先の時代から伝わってきた思想の系統はすべて失われ、混沌とした外国思想のなかで
    まだ自分たちに適した考え方を選ぶことができず、どうしてよいかわからずに…」
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・118話からエピローグに向けて話に展開が起きます。
・124話から急に啓蒙小説っぽくなります。主人公こんなキャラだったっけ。
・126話(最終回)でまとめ。それぞれの数年後の姿…。
 とってつけたような、明るい未来を想起させる模範教科書的な終わり方です。
 朝鮮総督府の新聞だから、明るい結末でないとね。
 しかし全体的に新聞小説として面白いと思います。面白かった。
 当時の生活状況を知る資料としても有用です。
 ずっと作者が言ってるのは「朝鮮の近代化」と「教育」ですね。
 出遅れてしまったことに対する焦り、上昇志向。
 そして現在の私たちと同じように恋愛に思い悩む若者であったことがわかります。
 これを書いたのは若干25歳。いまからちょうど100年前。
 日本の統治になってしばらくした頃ですが、激動期とはいえ
 人々の生活は一日一日単位ではそれぞれ普通に続いていたのだなあと思いました。
*『無情(1917年)』は川西中央図書館に今日返却しますので、興味のある方は借りて読んでみてください。