2004年、とある屋根裏部屋 | 韓国語教室 とるめんい川西

韓国語教室 とるめんい川西

2005年から兵庫県川西市で韓国語を教えています。

事情があって2004年にソウルに滞在していた時のこと。
某大学の「韓国語教師課程」に一ヶ月通っていたのですが、同じクラスの日本人の女の子が
ある日私に声をかけてくれました。

「〇〇さん、今日の夕方時間ありますか?知り合いが翻訳できる人を探してるんですけど」

授業が3時に終わってから私たちは梨大前の繁華街にある古びた雑居ビルの3階に
登って行きました。屋根の形が天井にそのまま出ているような
雑多だけれどもいい感じのオフィスでした。

そこのオーナーは日本人女性のようでした。
詳しいことはわからないけれど、とにかく
明日までに何十ページかの原稿を翻訳しなければならない、とのことでした。

そこのスタッフと私たちと計4名で分担しあって
A4の用紙を1人何ページだったか、記憶があいまいですが
夜までには終えられるような分量でした。

その時まではどういう内容か知りませんでしたし、教えてもくれませんでした。
とにかく訳せばいいという感じで。

パソコンの前に座って、原稿を見ながらワードに打ち始めたのですが
訳しはじめて、すぐに何の原稿かわかりました。






 冬ソナ・・・






준상 とか 유진とか 상혁という名前が出て来たのです。

私は日本で以前このドラマを見ていたので、
なんとか勘をつかんで訳すことができました。(それまでの流れを知っているから)

4時半くらいから始めて、大体A4一ページを訳しながら打って行くのに30分かかるペースで、
終わったのは10時くらいでした。軽食はオフィス側が出してくれました。

かなり集中してやったと思います。
一章分を4人で分担してしましたが、何の決まり事も相談せず
各自が別個で訳しました。

まあ私はその時だけの駒(人員)に過ぎないので、
後のことはわかりません。
オーナーが現在ご病気だという話もチラッと聞いた気がしますが
お名前も、どういう経緯でそこにいるのか知る由もありません。





そして帰国後・・・

そういえばあの屋根裏部屋で翻訳の作業をしたけれど
もしかしてあれじゃないかピンとくる
とある題名の広告を見かけました。

書店に寄る機会があった時にその本を探してみて
立ち読みしてみました。
私が訳した部分・・・

あった!!
後ろのほう。

あの時訳したそのままの文章です。
全く手が加えられていない。
こんなんでいいのかな??

数ページではありますが、
冬ソナブーム最盛期に、結構売れたんじゃないかと思います。
ずっと後になって私はブックオフで100円で買いました。

少なくとも当時「話題の本」だったと思うんですが
こんなふうに本が作られたとは驚きでしょう?

偶然かき集められて、梨大前の屋根裏部屋で
だーーっとタイピングして、最後に一回読み直しただけの文章なんですよ。
それが本になってるって。

その前年に「チョン・テイル評伝」を共訳出版した時は、
何回も打ち合わせをし、出来上がった訳文を何回も読み直して
校正に「何か月も」かけて、日本語の表現一つに悩んで苦しんで…

あまりに違うので不思議な感じがしました。

でも話題の本は時期を逃すとカネにならないっていうのはあると思うので
そんなものなんでしょうね。