20年前、この問題を解決するために作られた「アジア女性基金」を振り返る内容です。
 『「慰安婦」問題とは何だったのか』
  ~メディア・NGO・政府の功罪~ (2007) 大沼保昭 中公新書
大沼保昭先生は私が学生だった80年代から書物を通して存じ上げています。
東大の国際法の先生で、市民運動家でもいらっしゃいました。世の中の矛盾(弱い立場の人)に寄り添い、
それを理論展開されていました。95年に作られたアジア女性基金の呼びかけ人でもあります。
この本は大沼先生が「アジア女性基金」に関わった12年を振り返ったものです。
いま考えてみると「アジア女性基金」はもっと評価されていい、再評価されるべきです。
大沼先生も書かれているように、当時あまりにも広報がなされなかった。
日本でも、韓国でも。
そして日本のマスコミは基金に批判的でした。
朝日なんかも、政府が自分でやらないと意味ない…っていう論調でした。
私も新聞を読んで、当時「アジア女性基金」をどう考えていいかわからなかった。
大沼先生がやってるし、変な団体ではないんろうけど?ってレベルで、
積極的に賛同意思を持てないでいた。大手マスコミの論調に流されていたんだと思います。
今思えば新聞は理想論ばかり言ってた。
「65年日韓条約で請求権問題すべて解決済み」ってのがあるから、日本政府は動けないんですよね。
かりに動こうとしてもあまりに反対者が多すぎる。今はもっとそうですよね。
「個人請求権は存在する」っていう人いるけど実際難しいのでは。
連立政権であった1995年、社会党の人が総理だった時に戦後50年の節目として、この問題を解決すべく
結成されたのが「アジア女性基金」でした。外交上何とかしないといけないし、ハルモニ達も年老いていくからです。ギリギリの線で産みだされた妥協案だったと思います。
基金は募金で賄われました。組織(職場伝達)や個人が募金を寄せたそうです。
被害女性には償い金数百万円にくわえ、首相署名入りの「手紙」も手渡された。
今思えば画期的なことだったと思います。
村山首相から歴代首相、小泉首相まで、署名入りの手紙が12年間添えられ続けたのです。
財団法人という位置づけではあったものの、日本政府もお金出してるし(医療支援300万/1人あたり)
これで解決できればよかったのに
理念で運動してる人たちには通じなかった。
(日本の広報の未熟さ、やる気なさ?もあってか)
一般の韓国人で「アジア女性基金」のことを知っている人はほとんどいません。
外務省HP(手紙全文)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/letter.html
アジア女性基金HP(縦書き手紙+総理大臣署名 写真あり)
http://www.awf.or.jp/2/foundation-03.html
結局、韓国ではごく一部のハルモニしか受け取れませんでした。
大部分のハルモニは、支援団体の反対にあって、受け取ることができませんでした。
あくまで日本政府の立法に基づく謝罪や賠償を求めているからです。
フィリピンでは支援団体が柔軟に対応してくれ、全員償い金を受け取ることができたそうです。
アジア女性基金は2007年に解散し、今また韓国の「従軍慰安婦」問題が未解決としてクローズアップされていますが、前ステージで、こんなふうに解決に向けて苦心した人たちがいたと記憶しておかなければ。
そして韓国でも「アジア女性基金」のことが再評価される日が来ればいいなと思います。
どのように考えればいいかわからないときは、大沼保昭先生の著作物をお勧めします。