SY氏は私の韓国人の友だち第1号です。
心おきなく話せた、初めての友だちでした
彼とは「日韓合同ワークキャンプ」で知り合いました。
(韓国のハンセン氏病回復者の村に出かけ、日韓のメンバーが寝食を共にしながら、
道路舗装などのワークをしました。)
1986年夏・・・。
SY氏は忠南大学の学生でしたが、大学は休学して軍の服務中で(徴兵制)、
その時は軍の休暇をもらってワークキャンプに途中参加していました。
休暇であっても何かあればかけつけなければいけないので、
軍服で参加していました。
というか、夜に酒盛りしているところへやってきただけだったか。
(ちなみに私と同年代の韓国男子の当時の服務期間は3年でした。長~い!
今は軍隊は2年になってます。)
陽気な人で、テレビコメディの真似などをして笑わしてくれました。
私の韓国語は初級程度、(論文は読めても話せない)
SY氏の日本語も初級程度でした。
ちゃんぽんで話していたと思います。
(主に私は韓国語で話し、彼は日本語で話した。)
キャンプが終わってからSY氏の家に遊びに行きました。
のどかな田舎の、いかにも韓国の昔の家でした。(庶民の)
もう今はないだろうな・・・。
低い塀があって、庭に鶏が放し飼いで、戸は白い障子でパタンパタンと
一枚の開き戸のようになっています。
縁側の廊下に、そんな部屋が4つほどならんでいます。
トイレは少し離れたところにあります(もちろん水洗ではない)。
夜遅くまでSY氏の幼なじみの子たちと一緒に遊びました。
男の子も女の子も、飛び入りの私に対しフレンドリーに接してくれました。
若干はもの珍しそうに。
女の子の一人はSY氏の元カノみたいだったけど、
私にもニッコリしてくれて感じがよかったです。^^
ほとんど聞いてるだけでも面白かった。
部隊で誰かが訓練中に亡くなった話もしていました。
「プルサンヘ プルサンヘ・・・(かわいそうだ・・・)」とSY氏が繰り返していました。
朝はSY氏の家で朝ごはんを食べた記憶があります。
縁側に面した小さな部屋の一つです。
お父さんとお母さんとおばあさんとSY氏と私とが
一つのちゃぶ台を囲みました。
ご飯は各自あるけど、おかずは共同です。
自然な感じでフレンドリーに話しかけてくれました。
あまり気はつかってない感じでした。
(韓国のお宅でよく感じるのは、日本ほど大仰にお客さん扱いしないことです。)
突然やってきた日本の女の子に対して
さほど驚くこともなく対してくれ、
帰りに桃をおみやげにくれました。
桃と言えば、
SY氏は日本語は初歩だったのに、
突然
「も~もたろさん、ももたろさん~」と流暢に歌いだしたことがあります。
びっくりして、「何で知ってるの?」と聞いたら
「小さい頃お父さんがよく歌っていた」と言いました。
ご両親はちょうど今なら70代、
日帝(日本の植民地時代をこう言う)の学校教育を受けた
最後の世代です。
私たちはしばらく文通もしました。
私が翌年(1987年)韓国に行った時、
彼はまだ軍服務中でした。
彼が「部隊まで面会に来て」というので
行きました。
忠州市からタクシーで20分くらいの所にある部隊でした。
彼はいつも「僕はらっかさん部隊です」と言ってました。
部隊の前までタクシーで行って、
門の脇に銃を持って立っている軍人さんに(彼もたぶん徴兵の若い人)
「日本から来たんですが、SY氏いますか。」というと、
電話(無線?)で連絡をとって、しばらくしたあと
中に通されました。
87年のことですから、
その頃に韓国部隊の敷地に入ったことのある日本人の女の子は
あまりないと思います。
(今は結構あるみたいですね^^。ドラマ「フレンズ」の深田恭子ちゃんのように。)
部隊ごとに掛け合う合言葉があるのですが、
この部隊では「특공!!」でした。
指を頭の横にピッと当て、
「トゥッコン(特攻)!」
「トゥッコン(特攻)!」
と言い合ってます。
「特攻!」って・・・。
ちょっと絶句でした。
耳を疑いましたね。
「特攻」といえば戦争での特攻隊。
日本では「もう過ちは繰り返しません」というイメージだけど、
韓国ではそうではありませんでした。
もちろん標的は北韓(北朝鮮)です。
今より北との対立(冷戦)の激しい時代でした。
チュン!ソン!
충 성 もよく聞きました。
[忠 誠]
部隊の横に住んでいる中隊長さんが
自宅で昼ごはんを私たちにごちそうしてくれました。
奥さんもいました。(記憶が定かでないですが)
そうしてSY氏は休暇を得ました。
私が日本人だからか、特別に休暇をくれたみたいです。
だからしょっちゅう
「面会に来い」「面会に来い」と手紙に書いていたのでした。
SY氏と3年くらい文通をして音信不通になりました。
どうしているかな。
真面目で明るい性格だったから
学校の先生なんか向いていると思うけど。
きっと幸せに暮らしていると信じています。