YAMAHA NS-10Mレビュー | とれすけのブログ

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中古でYAMAHA NS-10Mを入手しました。

状態はコーン紙の黄ばみ、ターミナルのくすみの他は筐体に少し傷がある程度といった感じです。

但し、型としては初期に近くかなり年代は経ているようでした。

 

NS-10Mは以前から憧れというか、いつかは手元においてみたいスピーカーでした。

音楽をやってる人なら一度は思うのではないでしょうか。

スタジオの写真には大抵と言っていいほど写り込んでいる白いウーハーのスピーカー。

シンプルながらバランスのとれたデザインとともにスタジオのモニタースピーカーの位置を長期間守り続けた実績。

一度はじっくりと聞いてみたいとずっと思っていました。

ただ、既に生産終了で、入手すると言えば中古でしか買えません。しかし、今までは中古で買ったとしても置く場所なし、音量もそんなに出せない環境でしたから、半ば諦めていました。

今は後継品が出ていますが、やはりちょっと感じは違うようです。

 

 

転居してからはそれらの条件は一切なくなりました。あとはモノと値段だけ。

今回はユニットのしっかりしてそうなものを選びました。交換ユニットも入手困難になっているようなので。

 

さて、ミニスタジオの構築も佳境で、その一員としてNS-10Mを迎え入れたのですが、ミキサー卓の出力からエフェクト(リバーブ、EQ、コンプレッサー)を通してアンプはYAMAHAのA-100というパワーアンプ。

このアンプはオーディオ用でなくて、楽器用、PA用みたいな感じですね。以前使った経験ではちょっと分離が悪かった印象があります。

で、NS-10Mの音ですが、どうもバランスが悪いというか、聞いてて落ち着かない感じ。

ネットなどのレビューでは、高音がうるさいとか低音が出ない、モニター用であってリスニングには向かないなどの記事が多く、こんなもんか?と思ったのですが、それで諦める訳には行きません。

これではモニターの役割も果たせません。

 

まずはスピーカーのネットワークですね。

コイルと電解コンデンサーで構成されているウーハーとツイーターを分けるネットワークですが、電解コンデンサーは経年劣化で容量が変わってしまっている可能性があります。

早速代替品を注文。

使われているコンデンサーは1台につき2.7μFが並列で2個、10μFが一つです。

 

で、この2.7μFのバイポーラ(無極性)電解コンデンサーというのは普通の部品屋さんではまず置いてないので、オーディオ専門店に発注します。

ちょっと特殊な容量でも結構選べます。

今回は耐圧がちょっと低いのですが、安いやつをチョイスしました。

ひとつ数千円の通向けのものもありますが、そこまでは求めない、というかまずは設計通りの帯域で分けられればいいので、10μFのも安価なものでやってみます。

 

もともと付いてるのはとにかくでかいですね。新しいやつは1/10もないくらいです。

外したコンデンサーを容量が測れるトランジスタテスターで測ってみます。

 

2.7μFは並列状態で24.48μFありました。

本来なら2.7+2.7で5.4μFでなければならないところ、4倍強も増えちゃってます。コンデンサーは古くなると容量が増えるケースが多いみたいですね。

10μFの方も11.83μFに増えてます。

こうなるとちゃんと帯域分けられてないですね。

NS-10Mの音が悪い、って人の半分くらいはこういう劣化が原因なんじゃないでしょうか。

 

さて、交換後はどうでしょうか。

締まりがでて、抜けが良くなりました。

ですが、個人的にはまだNGです。満足する音になっていません。

問題はやっぱりアンプですね。こちらもパワーはありますが元の素性が素性だし、経年劣化もかなりありそう、ということで交代です。

ここで登場するのはPAM8403というアンプICを使った121円の中華アンプ基板です。

いわゆるデジタルアンプという奴で、出力3Wでおもちゃのようですけど実力は侮れません。結構素直な音がするのです。

 

で、余っていたペンケースとこれまた余っていたリレー基板を組み込んでミニアンプを組みました。

リレー基板は何に使うのかというと、このアンプ、ボリュームつまみがスイッチも兼ねていて、最左位置から右に回すとスイッチがONになるのですが、盛大なポップノイズが乗ってしまうんですね。スピーカーを痛めかねないので、アンプのスイッチを入れてからリレーでスピーカーを接続するという仕組みです。

ずっとリレー入りっぱなしは省エネでないですしノイズ的にも悪影響があるので、リレーを動作させるとスピーカーが切断されるようにしてあります。

まずリレースイッチを入れてスピーカを切ってからボリュームを回してアンプの電源ON。そしてリレーを切ってスピーカーを繋ぐという感じです。切る時もスピーカーを切ってから電源をOFFにします。なんか真空管ギターアンプのスタンバイスイッチみたいですね。

完成品。

 

スピーカーをMuteする仕組みは基板のICには組み込まれているようで、改造すれば電源ON時のポップノイズは回避できるようです。チャレンジしたのですが、ICの足をもいでしまってあえなく撃沈。またチャレンジしてみます。もう3枚ほど追加注文してあります。なんせ121円です。

 

さて肝心の音ですが、見違えましたね。迫力というか、分解能が高いというのでしょうか。

スピーカーのレスポンスがいいという記事もありました。たしかにそんな感じです。

ですが、よく聴くとサー、というかシーというようなノイズが結構乗ってしまっていて、無音時は特に気になります。

無視できないので、対策をしました。

 

まず電源です。アンプ基板もリレー基板も5V動作です。なのでお手軽にUSBアダプターを介して5Vを供給しています。問題の第一はアダプターですが、1A、2A、2.1A等といくつか試してみて、家にあるものではダイソーの1A品iPhone用電源アダプタ(4S世代)が一番マシでした。

次に回路的に対策ですが、本当はLPF等で対処すべきなんでしょうが、電源も作業も大掛かりになるので電解コンデンサーとセラミックコンデンサーで簡単な平滑回路を挟み込んで、あと入力ジャックと電源のアースをつなぎます。実際これが一番効果あったようです。それと入力のところに4.7μFのコンデンサーをかませました。おまじないみたいなものですが、これら一通りをやった結果、ノイズは気にならない程度にまで低減しました。

用途を考えれば十分です。

 

ようやく環境が整ったので、色々試聴してみます。

スピーカーとか作ったり弄ったりするので、随分前から試聴用の楽曲集がiTunesに入っています。古い曲が多いのですが、これでいろんな楽器の鳴りや分離、帯域感、低音量、ピーク帯域などがわかります。

今回驚いたのは、今までちょっと録音やMIXが古くて音に迫力がないなと思っていた70年代から80年代にかけての邦楽(ジャパニーズポップスの前ですね)がとんでもない迫力で迫ってくることでした。

特にボーカルなんかは生首がそこに登場したような感じで、曲によっては気持ち悪いくらいでした。

媒体にエンコードされた楽曲が、正しくデコードされたような、そんな再現性をもっているスピーカーだと感じました。

確かに低音は弱いし、帯域もすこし中音に癖があって、1kHzよりちょっと下くらいを落とすと聴きやすくなります。

経年劣化と個体差もあるのでしょうが高音が耳につくとかうるさいとかはなかったですね。

それとエコーというか、リバーブがはっきり聞こえます。

これはかつてない体験で、なるほどスタジオモニターで使われることだけはあると思いました。これだけ残響が聞こえると、曲によっては掛け過ぎで、ちょっと不自然に聞こえたりもしますが、率直に感動しました。

ダンスミュージックなんかもいいですね。低音はキックの音とかあんまり出てないですが、ベースの帯域がしっかりしていて、十分低音を感じます。それより歯切れが良くてリズムに乗ってしまう感じです。

難点としては、低音が豊かでない分小音量だとスケール感が薄いというところでしょうか。

たしかに気楽に聞き流すというよりは音楽に聞き入るという感じのスピーカーだと思いました。

個人的には十分リスニング用途でもアリですね。

特にiTunesでEQを少し調整して、エンハンサーを効かせると、別次元のリスニング体験が出来ます。もちろん好みによりますが、私はこういうの好きです。

 

あとYAMAHAのA-3というプリメインアンプで試聴と測定をしてみました。測定はiPhoneアプリのe-scope3in1というので行なっています。マイクがiPhoneなので実際との乖離はままあるとは思いますが、まずは比較にはなるかと思います。

まずサイン波で出力のピークを60dBで揃えています。スピーカーとの距離は95cm。同じ位置で測定してます。赤線が実測値です。

NS-10M&ミニアンプ

NS-10M+A-3

 

A-3もアンプとしてはそこそこいいはずなんですが、実際の音はなんかおとなしくなってしまってちょっと迫力が減じた印象です。

測定の結果でもミニアンプの方が帯域も広く、谷が少ないです。

低音はたしかに両方とも80Hz付近でストンと落ちていますが、A-3がカクンと落ちているのに比べてミニアンプの方は徐々に下がっていってます。結論としてはミニアンプの方がNS-10Mにマッチしている、と言っていいと思います。まあ、あくまで我が家での結論ですが。

能率のいいスピーカーなのでプアなアンプの方がマッチするようです。多分、スピーカーケーブルも安いやつの方がいい音がすると思います。

測定中に気づいたのですが、テスト音が15kHz付近を超えると、私の耳には何も聞こえなくなります。これはあまりよろしくないエイジングですね。

 

ちなみに以前記事に書いたPM-M0841CKと吉本キャビネットのダブルバスレフエンクロージャーキットDB-800を使った自作スピーカーもYAMAHAのA-3との組み合わせで測定してみました。ダブルバスレフのエンクロージャーなんですが、なかなか堂々とした音を出してくれています。

こちらは測定位置は2メートル前後でちょっと環境は変わっています。トーンは±0。

 

低音も十分出ていて、なかなか侮れない性能です。見た目からは想像できないほどの音が出ます。バスレフの割にはしっかりとした低音ですね。高音は少し出過ぎるので中に紅茶のティーバッグをぶら下げています。あと開口部も少し吸音材で抑えてます。

トーンでBASSとTRBLEを少し持ち上げてやれば十分なスケール感が出ます。PM-M0841CKというスピーカーはこのキャビがベストマッチだと思います。結構人気の出てきたユニットですが、小さいエンクロージャーでは低音は出ないです。ダブルバスレフがバランス的に一番だと思います。記事を書いた頃に比べてエージングも進んだせいもあるかと思いますが、こちらのスピーカーはA-3がマッチしますね。このスピーカーは増税前は400円でした。プアスピーカーにはちょっといいアンプがいいようです。

こちらはゆっくりリラックスして聴くのに最適です。

今もこの組み合わせで曲を聴きながらこれを書いています。

 

NS-10M、スタンバイ完了しました。ミキサー周りの配線もようやく山を越えたので、役者は揃いました。

121円のアンプを使うとは当初考えてなかったのですが、必要にして十分な感じです。

70年台80年代の邦楽をまた聴くのが楽しみになりました。

音がいい悪いではなく、生き返った感じ、の音ですね。

もしやと思って昔のカセットテープを引っ張り出して聴いてみました。当たりです。みずみずしさが蘇るというか、違和感なく入って来ます。

これは他のスピーカーでは決して味わえないんじゃないか、と思います。交換ユニットの入手が難しい現在、今のユニットの寿命までではありますが、メンテナンスをしっかりやって、長く使っていこうと思います。

 

外したパワーアンプYAMAHA A-100の方はRolandのギタープリアンプSIP-300と合わせてギターアンプにしてみます。