老朽スーパーの鑑定評価 | 猫好きのブログ

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 築50年以上の大きめのスーパーがある。土地2000坪、建物1300坪ぐらい。駅から徒歩圏にあり、幹線沿いに面している。築年数の割には古びて見えない。立地も良く、運営企業の経営力あるため賑わっている。

 

 この物件を評価するとどうだろうか?

 

 一般的には築年数を考え、取り壊しを前提に評価されることが多いと思われるが、ニュース記事を読むとこのように書かれていた。

 

 古いので社内で取り壊そうという声が出たが、収益力のある店なのでとりあえずこのまま利用するということで落ち着いたと。

 

 物件所有者であるスーパーの立場で考えると、

・プランA・・・即時取り壊して土地売却

・プランB・・・即時取り壊して店舗建替え

・プランC・・・当面利用後、限界が来たら取り壊して土地売却

・プランD・・・当面利用後、限界が来たら取り壊して店舗建替え

 

 の4つが考えられる。仮にプランA又はCの価値が最も高くても運営会社は採択しない可能性がある。ここが通常の不動産鑑定と異なることだ。

 

 既成市街地では中規模以上スーパーの適地は少ないので、土地を売りに出すと同業者が取得する可能性が出てくる(直接売らなくても第三者を通じて取得するかも)。つまり縄張りを取られてしまうのだ。

 

 だから最有効使用でない自社店舗を続ける可能性が高い。不振店舗と違ってスクラップ&ビルドは成立しない。

 

 

 その結果、坪40万円が相場であってもスーパーの賃料負担力から考えると、土地の価値は低くなるかもしれない。

 

 仮に年間坪効率(売場1坪当たりの年商)を300万円としよう。

 

予想年商=300万円/坪×1300坪×売場面積比率0.7=27.3億円

 

スーパーの平均賃料負担率2.7%を掛けると

予想家賃=予想年商27.3億円×0.027=7371万円

 

 これを賃貸することを想定し、土地収益価格を求めると

 

 予想家賃7371万円×(1-経費率0.2)÷還元利回り5%-(建築費 坪60万円×1300坪)=3.9936億円(坪20.0万円)

 

 相場の50%の価値しか実現していない。本来8億円で売れるはずだが、自社利用に拘ると4億円損することになる。それでも縄張りを同業者に取られるよりマシなのだ。

 

 自社所有食品スーパーは平屋か2階建が多い。ではイオンモールのように高層化すればよいのではないと思われるが、地域の需要を無視した過大投資すると、経費負担が増大して却って利益が低下することになる。

 

 ではスーパーの上層階をマンションにすればよいという考えはどうだろうか?

 

 実際、賃貸ビルの下はスーパー、上はマンションという建物は見かけるではないか。これが有効なのは、不動産所有と店舗経営の分離がなされている場合だけだ。全て自社で行うと、利益は確かに大きくなるのだが、莫大な資金がかかる為、経営資源が分散して逆に非効率だ。イオンだってショッピングセンター運営会社(ディベロッパー)と小売会社を分けている。