百貨店の専門店ビル化 | 猫好きのブログ

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 百貨店の販売形態は複雑だ。自社編集売場(様々なブランドを集めて販売)、ブランドコーナー、インショップ、テナントがある。

 

 販売員も百貨店の社員’(正社員、契約社員、パート・アルバイト)、納入業者の派遣販売員、テナントの社員がおり、混然としている。

 

 百貨店の正社員はざっと1割ぐらいだろうか。彼らは事務作業が多いので、店頭にあまり出てこない。

 

 百貨店とショッピングセンターとは似て非なるものである。ショッピングセンターを運営するのはディベロッパー(運営会社)であり、店はテナントである。 

 

 それに対して百貨店では自社が施設を管理し、営業を取り仕切っている。例えインショップでも売上が悪いと場所を変えられたり、売場面積を減らされたりするし、アパレルメーカーの派遣社員が販売していても、百貨店の仕入れという形を取る。彼らはあくまでもお手伝いなのだ。

 

 とすればテナントは本来、百貨店経営とは異質なものである。テナント契約をすると賃借権が発生するため、売上が悪くても百貨店は契約を打ち切ったりできないし、面積を減らしたり、場所を変えることも出来ない。

 

 百貨店特有の販売形態が発達したのは、季節の折りや社会のムードにより消費者の気分がコロコロ変わる為、臨機応変に対応するためであろう。

 

 百貨店はいわばプロデューサーなのだ。商品を入れ替えたり、ディスプレイをし直す回数が多い為、席替えを頻繁に行うことになる。また商品の品目が非常に多い為、アパレルメーカー各社に販売を任せることで百貨店社員の専門性の不足を補う。アパレルメーカー各社にとっても売れる場を確保することで利益を出せる。このように考えるとテナントは例外的な存在だということが分かる。

 

 ところが2000年に入ってからテナントが増えてきた。強力な大手専門店チエーンに広いフロアを貸す訳だ。

 

 これは百貨店が家具、書店、スポーツ用品など専門店チエーンに勝てなくなった部門を廃止し、有力な専門店の力を借りることで集客力を図ることを意味している。百貨店は得意なファッション分野に集中する訳だ。

 

 上手くいったか?

 

 別の面で見ると百貨店が総合的にコントロールしなくなった訳で百貨店と専門店との方向性がずれた場合には修正が難しい。

 

 家電量販店や100円ショップを入れると確かに集客力はアップするが、客層が異なるため、融合が難しいように感じる。パソコンソフトを買ったついでに服を見て帰る人は少ないだろうし、高級服を買った客が家電売り場でプリンターのインクを買うとも思えない。

 

 百貨店は次第に専門店チエーンを増やし、建物の2/3が専門店化したりもする。そうして最後は閉店し、全て専門店となってしまう。

 

 どこの百貨店かを敢えて書かないが、元々化粧品売り場のあった1階が安売りの食品スーパーになった施設もあった。

 

 つまり地域のニーズは日常使いの商品・サービスであり、高級ブランドではなかったということだ。

 

 百貨店側も赤字を出すぐらいなら、テナントに貸して家賃を貰うことを選ぶと全館テナント化が進みやすい。

 

 とはいえ、有力チエーンは入ってあげる立場なので、低い家賃でないと出店に応じないだろう。不動産の簿価が高いと百貨店はテナント化しても採算が取れず、最後は閉店となりやすい。