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a beautiful tomorrow yea

イタリアの現場では、仕事が終わったらその場でみんなでワインを飲んで家に帰っていきます。片や日本はまっすぐ家に帰る。どちらが面白い人生を歩んでいると言えるでしょうか? イタリア人は生まれた時から生活は楽しむものだと思っているのです

 

イタリアの経済は正直、破綻寸前と言ってもいいですが、ファッション、フード、インテリアなど、生活文化にまつわる企業は今も元気いっぱいです。イタリア人たちは生活を豊かに楽しむためにはお金を惜しみません。ですから国も会社も個人も、みんなお金を貯めず、すぐに使ってしまいます。一方、日本人は先行きに対する不安からお金を貯めこみます。企業は内部留保、個人は貯蓄に走ってお金を使いません。長い人生を考えた時に、はたしてどちらがよいでしょうか。考えてみるのも面白いと思います。

 

イタリア人の美に対するこだわり、そして誇りにはすごいものがあります。小さい頃からコロッセやパンテオンを見て、ミケランジェロが近くにある生活を送ってきた人たちだからでしょう。現場の職人たちもそうです。だから、私は彼らの仕事、誇りに対して敬意を払います。彼らは、できあがった建築に強い愛着を持っています。自分たちのつくっているものが美しいもの、そして生活のために役に立つと信じている。アルマーニの建物も、完成してから15年が経っていますが、今もきちんと手が入っていて、ピカピカですよ。

安藤忠雄(雑誌『GOETHE』2017年1月号より)

 

2018年夏メンズ・ミラノコレクション

 

ミラノ・ファッションウィークが、先月16日から20日まで開催され、全部は書かないが、

 

17日にエンポリオ・アルマーニ、18日にフェラガモ、モンクレール・ガムブルー、ディースクエアード、19日にジョルジオ・アルマーニ、フェンディのショーがそれぞれ行われた。

 

ショー以外のプレゼンテーションとして、17日にジミー・チュウ、ブルネロ・クチネリ、キートン、カナーリ、ジュゼッペ・ザノッティ、ラルフ・ローレン・パープルレーベル、18日にサントーニ、エトロ、トッズ等々。

 

私的に最も気になった同ファッションウィークのイヴェントが、現地時間17日夕方にアルマーニホテルのバーで行われたパーティだ。なぜなら、エンポリオ・アルマーニのショーにモデルとしてデビューを果たしたのが、俺のお気に入り元祖スーパーモデルのひとり<シンディ・クロフォード>の息子だったからだ。

この話題は、国内外のファッションニュースでもほとんど取り上げられていないが、あれからもう17年もの歳月が経過したのかと、私的には驚きと共に嬉しいニュースだった。

 

そして本日、7月1日(土)を迎えたが、早朝には、東京都心の上空は雲に覆われ、梅雨らしい鬱陶しい空模様が広がっており、小雨が降っていた。ここ10数年、朝のルーティンとなって久しいモーツァルトのクラシック音楽をBGMに選択し、日経新聞に目を通したが、同紙1面には「香港が英国から中国に返還され20年を迎えた」と。3面には「iPhone発売10年」、そして5面の「5月家計調査」・・・レジャーに関しては「支出増」である一方、衣料・外食に関しては「根強い低価格志向」で、消費はまだら模様だと形容されていた。 

とはいえ、先々月ブログで取り上げた銀座の巨大複合商業施設「銀座シックス」の売り上げは好調のようだ。消費における二極化現象とも言えるが、それはよいことではないのか。

 

ところで、岡田暁生著『恋愛哲学者モーツァルト』のまえがきは、<モーツァルトは「語る」ことが本当に難しい作曲家である>で始まるが、ファッションはとりわけ「語る」ことが比較的易しいそれだと俺は理解している。 

俺のファッション熱は、小学生の頃に目覚めたが、具体的なブランド名を挙げるならば、中学時代にコム・デ・ギャルソンの黒シャツに袖を通し、高校時代にラルフ・ローレンのボタンダウンシャツを愛用し、大学時代にはエンポリオ・アルマーニのジャケットを羽織り、就職活動にはラルフ・ローレンの真面目なネイビースーツで挑み、成人式にはジョルジオ・アルマーニのスーツを身に纏い、それ以降、俺のワードローブはほぼ100%が“MADE IN ITALY”のモノで溢れかえっており、地球上にこれ以上の製品は存在しないとも断言できるが、アルマーニに限らず、メンズファッションにおいて、イタリアを超えるような洗練されたファッションを創出する国は存在しないのが現実だろう。成熟したラグジュアリーブランドの市場でね。

 

付け加えると、俺自身、世界中の大都市を旅したが、最もお洒落な人がいるのは、他でもないイタリアだった。あの独特のお洒落の感覚は生れ育った環境のおかげなのかもしれない。ニューヨークやロンドン、パリにもお洒落で洗練された人はいたが、ミラノの伊達男たちのそれは特別だった。

 

「知識のあるえり抜きの人々」は「表示が控えめな製品、繊細でいて特徴的なスタイル、目立たない高級ブランド」を好むことがわかった。

―ハーバード・ビジネス・レビューのコラム「非顕示的消費に対抗する高級ブランド」より

 

             コラム<ダメリーマンが着ている「スーツ」3つの残念な特徴>         

 

そんな矢先、先日Yahoo!ニュースで目に留まったダイヤモンド・オンラインのコラム“ダメリーマンが着ている「スーツ」3つの残念な特徴”は、メンズファッションに無知な、結婚相談所の(60歳前後と思われる)おばちゃんが書いたそれであり、それについた怒り?のコメントが647件にも上り、その炎上ぶりが殺気に満ちていて面白かった(笑)。先述した日経朝刊の衣料に関する「低価格志向」はさておき、同コラムに対しての、俺の意見をまず述べたい。

 

彼女が書いたコラムはナンセンスだと前置きしておくが、スーツを購入する際・・・「サイズ感が大事」という部分は正しい一方、間違っているのは、「吊るし」のスーツに関しての知識の無さだろう。

 

普通体型であれば、ほとんどの男性は、百貨店をはじめ、セレクトショップ、量販店に並べられた既製服(プレタポルテ)のスーツは良かれ悪かれ似合うはずだ。極端な痩せ型や肥満型でなければ、ね。付け加えるならば、スポーツをやっていて、胸筋や肩回り、そして太ももが異常に発達した方々もまた、既製服の選択は厳しいかもしれない。したがって、彼女が例を挙げた「オーダーメイド」の某仕立て屋のスーツは4万円と異常に安いのが魅力的なのかもしれないが、普通体型の男性が「オーダーメイド」でスーツを仕立てる必要性など全くないのだ。安いオーダーメイドのスーツが一部の男性の間で流行しているようだけれど・・・。

 

安価なスーツを身に纏った成功例は、フランスの若き大統領マクロン氏の格安スーツだろう。参考までに、そのネイビースーツはフランスの「ジョナ シー(JONAS ET CIE」のもので、価格は340ユーロ(約4万1000円)だとWWD紙で紹介されている。付け加えるならば、彼のスタイルの特徴は、そのネイビースーツにナロータイを合わせている点であり、それゆえ、モダンな印象を与える一方で、大統領らしからぬカジュアルテイスト(粋がった印象を与えるかもしれない)のその遊び心がアンバランスゆえ、トゥーマッチなスーツスタイルだとも言えよう。

したがって、サルコジ元フランス大統領のプラダのネイビースーツにネイビータイのスタイルは退屈だった一方で、クラシックで普遍的なそれだったのかもしれない。

ブリオーニを身に纏った元気なベルルスコーニが懐かしい今日この頃だ。 

コラムに話を戻すが、この筆者はスーツをかっこよく着こなすルールのひとつとして、「サイズ感」にフォーカスし、「プレタポルテ(既製服)」ではなく、「安価なオーダーメイド」をお薦めしたまでは理解できるが、後半部分では、ニューヨークの弁護士事務所を舞台にしたアメリカドラマ「SUIT」の中で、エリート弁護士で高収入な主人公が身に纏っているトム・フォード(アメリカ)のスーツを、ビジネスマンにお薦めのスーツだと紹介しているのだ(俺のブログで、5、6年前に取り上げた同ドラマのそれだね)。

 

そして、同ブランドをはじめ、ブリオーニアルマーニラルフ・ローレン等々、4ブランドの名前を挙げ、「自分の目指す収入に合わせて、スーツを選んでみてください」と提案しているのだ。私見だが、ラルフ・ローレンのスーツはないと思うが、同ブランドの最高峰モデルの「パープルレーベル(イタリア製)」であれば、上質の生地に縫製も素晴らしく、1着50万円前後するため、先述した3ブランドと同価格帯になるとはいえ、この価格帯のスーツを日常的に何着も着回すビジネスマンの想定年収は3000万円以上だろうね。それに超高級な・・・シャツ、タイ、靴、バッグ、腕時計、クルマ、住居等々を合わせるとなれば、理想の年収は1億円か!?

 

そう、647件(RT時点)のコメントにも興味本位からすべて目を通したが、ヤフー!のコメント欄に書き込みするくらい、みな暇人なのだろうが、ラルフ・ローレンを除いて、他の3ブランドをすべて所有している人は皆無だと思われ、それぞれのスーツに袖も通したことがない人がブランドイメージや雑誌などで得た知識で書き込んだそれなのだろう。トム・フォードのスーツは悪くはないが、英国調スタイル(チェンジポケットが特徴)で、イタリアのブランドに置き換えると、エルメネジルド・ゼニアと同等(もっと詳しいことも書けるが、長くなるので今回省略する)であり、それ以下でもそれ以上でもない、ただそれだけ。したがって、トム・フォードのスーツが、ブリオーニやキートンのスーツ、ハンドメイドラインのアルマーニより、色んな意味で、上であることは100%ないことは、ファッションに精通している人であれば、容易に理解できるはずだ。

 

結論。この結婚相談所の筆者が書いたコラムは、俺が推測する限り、相談所に来店した男性客のスーツのサイズ感が合っておらず、サイズ感を合わせるため、安価なオーダーメイドの仕立て屋を提案したと思われる。また、プレタポルテのお薦めを4ブランド(すべてラグジュアリーブランド)紹介しているが、電車通勤するビジネスマンが着るそれでないことは明白であり、多くの男性から反感を買ったのだろう。メンズファッションに疎い、その昭和的感覚を除いても、ね。

 

なお、トム・フォード(ブリオーニ)のスーツに、アストン・マーティン(BMW)の組み合わせだと、映画『007』シリーズのジェームズ・ボンドの世界そのものだが、それが理想だとすれば、結婚は無理な話だが、同コラムの筆者はバツ3なんだよね(笑)。

 

白シャツ

 

メンズ・プレシャス最新号の「白シャツ」特集は、とても興味深かったが、すべて知っているブランドばかりで、シャンパン片手に、その歴史や蘊蓄に目を通すその時間はとても楽しかった。

全部は書かないが、スーツスタイルを格上げするドレスシャツ・・・シャルベをはじめ、フライオリアンルイジ・ボレッリバルバターンブル&アッサープラダエルメスの白シャツも取り上げられていたのは愛嬌だろう。

 

帝国ホテルが誇るランドリーの「白シャツを洗う工程」はとても貴重なそれだったし、白シャツの奥に潜むダンディズムの真髄はさておき、究極のシャツ生地<カルロ・リーヴァ」社の社長インタヴュー、ブリオーニのスーツが完成するまでの工程などなど、同雑誌は今回も俺の期待を裏切ることなく、俺のファッションへの想いを掻き立ててくれた。ブリオーニの1着60万円ほどするプレタポルテ(既製服)のスーツが完成するまでには、220工程、そして6000ものハンドステッチを要している、と。なお、同ブランドの工房では、約1000名の職人(うち75%が女性)が働いているそうだ。

 

KENZO

 

最後になるが、同誌に掲載された日本を代表するファッション・デザイナーのひとり<髙田賢三>氏のインタヴュー記事から、意外だった彼の一面を一部抜粋して紹介したい。

 

サンローランのミューズだったルル・ド・ラ・ファレーズとよく遊んでいました。朝4時とか5時まで踊り明かして。だから、イヴのパートナーのピエール・ベルジュが、僕がルルをサンローランから引き抜くじゃないかと警戒していたらしいです。それに、サンローランが、カールの恋人のジャックを好きになってしまって、クラブで彼を捜す姿も見かけましたね。イヴ・サンローラン時代のエディ・スリマンはよかった。クラシックなものを現代的に変える力がありました。ベルルッティも、今度ハイダー・アッカーマンがきたので面白くなるかもしれない。

―髙田賢三

 

 

Have a nice weekend!