きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹をもつ子のことです。

自分が生まれた時、もしくは障がいのある弟や妹が生まれた時から、きょうだい児としての生活が始まります。

 

 

前回の記事は、こちらです。

 

 

 

きょうだい児は、親が亡くなった後のことを、他の人よりも考える時間が多くなります。

その理由としては、以下のことが挙げられます。

 

・一人で自宅にいることができないのに、誰が世話をするんだろう

・仕事ができないから、生活の手助けをしてあげないといけないのかな

・自分の生活もあるけど、障がいのある兄弟姉妹を放っておくこともできない

・今は親が元気だからいいけれど、いなくなった時にパニックになってしまいそう

・施設を探しているけれど、障がい者が入れる施設って、ほとんどないから自分が世話しないといけないか

 

 

障がいのある兄弟姉妹の多くは、自宅での生活をしています。

障がい福祉サービスを利用して、日中は自宅外で過ごして、夕方以降は自宅に戻ります。

 

 

大変だと感じるのは、一緒に自宅にいる夕方〜夜の時間帯です。

朝から調子が悪い時は、なんとなく接し方がわかることもあります。

しかし、朝は良かったのに、日中のサービス利用後から調子が崩れることもしばしばです。

 

 

・何が気に食わなくて、暴れているのかわからない

・いつもと同じことをしているのに、今日は機嫌が悪い

・ご飯も食べないし、話も通じない

・言いたいことがあるなら言って欲しいけれど、何を言っているのか不明

・大きな声で叫ばないでほしい

 

 

朝と夜のギャップが大きければ大きいほど、心理的な負担感も大きくなっていきます。

 

”できるだけ、早く理由を知りたい”

そう思うほど、理解するのに時間がかかってしまいます。

 

 

親は、障がいのある兄弟姉妹のことをいつも見ているため、

 

・送迎の人が違ったからイヤだったんだ

・お昼ご飯が気に入らなかったみたいだ

・自分の言いたいことが伝えられなかったんだって

・今日は、何もして欲しくない日なんだって

 

などと、理解するのが早いです。

 

 

そんな姿を見ていると、親は理解できるのに、きょうだい児であるわたし(ぼく)は理解できないと絶望的な気持ちになります。

親が元気なうちはいいけれど、親がいなくなったら、どうなるんだろうと急に心配になってしまいます。

 

 

「さっき、こういう風に感じているってわかったのって、何かサインでもあったの?」

 

親に聞いてみても、

 

『ん〜、特に何もなかったけど、多分これじゃないかなって思ってさ』

 

と感覚的な判断で行っていることがわかります。

 

 

”〇〇だと、こうなるから注意が必要”

”△△の時には、機嫌が悪くなるから、そうならないようにする”

 

と、決まりがあれば、対応することができますが、何の前触れもなく、パニックが起こった時は本当に困ります。

 

 

それに、同じ状況で注意が必要だと思っていても、何もない時もあります。

身構えていたのに、あれ?と不思議に思ってしまいます。

でもやっぱり、苦手な状況の時には、パニックに陥るので、心の準備は必要になります。

 

 

そうでないと、一緒にいる人の身が持ちません。

 

 

最後まで親が面倒を見てくれる、もしくは、施設などで介助してくれる人がいるところで生活できる。

 

 

これが叶うのであれば、一番苦労はしません。

しかし、大抵は、年齢順に、最期の時を迎えます。

 

『お兄ちゃんの面倒見てちょうだいね』

『あなたがいれば、大丈夫だね』

『他にもサービス使っているから、なんとかなるよ』

『まだ、(親自身)元気だから心配しなくてもいいって』

 

 

どこか、ノー天気に考えている親の姿を見ると、本当に心配になります。

 

自分たちが元気なうちはいいかもしれないけれど、いざという時に、今から準備しておかないと、いつ何が起こるかなんて誰にもわからないんだよ。

 

このような話をしても、『大丈夫、大丈夫』とだけしか親は言いません。

親の体調が悪くなった、障がいのある兄弟姉妹の調子が良くない、そんなことが頻繁に続くようになると、常に気を張って生活していくことになります。

 

 

 

そのためか、きょうだい児は、自ら、先々のことを考えて動けるようになります。

それぞれの生活も抱えているため、心配事はできるだけ、少なくしておきたいと感じているからです。

 

 

<障がい福祉サービスはどのくらいまで使えるのかわかる>

 

障がいの程度によって、利用できるサービスが異なっています。どのくらいの金額で、どのくらいの回数利用できるのか、最大でどのくらいまで使えるのか、年齢制限はあるのか、など詳細まで調べることができます。

インターネットを使って調べたり、兄弟姉妹の相談員に話を聞いたりすることで知ることができます。

必ずしも、親が全部把握しているとは思っていないため、リストにして、いつでも見ることができるように準備もしておきます。

他にきょうだいがいる場合には、一緒に共有することもできます。

 

 

 

<入所できる施設について調べられる>

 

障がい者の数よりも、障がい者が入所できる施設はとても少ないのが現状です。一度施設に入所してしまうと、最期を迎えるまで入り続けることが多いからです。

できるだけ、お金の負担は少なくしたいと思う一方で、必要な時に情報を出せるように準備を怠りません。

近隣の市町村だけでなく、車で2時間程度のところまで足を延ばして探すことも検討します。

何よりも、何かあったときに、すぐに対応できるようにすることを考えているからです。

重度の障がいの場合は、入所を断られることもあるため、どのくらいの介助ができるのか、きちんと調べられます。

 

 

 

<親を説得する力がつく>

 

さまざまなことを調べていくにつれて、将来のことを親に説明することができるようになります。

『まだ大丈夫だ』と言っている親でも、これから起こりうることを一つずつ説明することで、早い段階で必要な準備を促すことができます。

自宅で面倒を見ることも、施設に依頼して生活することも、最終的に決定するのは、本人であり親です。

きょうだい児の意向は、ほとんど反映されることはありません。それでも、将来を見据えての情報量は、きょうだい児が一番持っています。

早め早めに、動くように、親に伝えることができます。

 

 

 

親亡き後のことを考えると、大きなことから細々したことまで、たくさんあります。

意思決定が難しい場合には、成年後見制度などを活用する例もあります。

このように、きょうだい児は、親亡き後を考えながら、自分たちの生活も守るための行動を取ることができます。

 

 

 

たくさんの情報の中から、正しい情報をキャッチするのは、難しいし、骨の折れることですが、これをやっているかどうかによって、後々の対策になっていきます。

調べたり、説得したり、やることは多いですが、障がいのある兄弟姉妹、親、そして自分たちが一番よい生活を送るための最善の方法を考えることができるのが、きょうだい児の強みです。

 

 

 

 

障がいのある兄弟姉妹の面倒を見続けないといけない、と思ってしまうと、しんどい気持ちになってしまいますが、サービスを活用することで解決できることもあります。

将来の心配を最小限にして、きょうだい児が自分の好きなように暮らしを守れるようにしていきたいです。

 

 

次回に続きます。

きょうだい児は「自分の夢や希望を諦めることがある」