きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹をもつ子のことです。

自分が生まれた時、もしくは障がいのある弟や妹が生まれた時から、きょうだい児としての生活が始まります。

 

 

前回の記事は、こちらです。

 

 

きょうだい児は、「できて当たり前」と思われていることが多いです。

その理由としては、以下のことが挙げられます。

 

・お兄ちゃんと比べたら、自由に動ける

・お姉ちゃんよりも、自分でやれることが多い

・何も言わなくても、弟の世話を率先してやってくれる

・妹みたいに、一緒にいないといけないくらい大変じゃない

 

 

比較対象が、どうしても、障がいのある兄弟姉妹となってしまうからです。

 

 

家族や周囲の人の想いが先行してしまい、そのことがきょうだい児をさらに追い込んでしまいます。

 

特に、

 

・もう少しで1番になれるね

・もっと頑張ったら、もっといい成績が取れるよ

・このくらいなら、余裕でできるでしょ

・お兄ちゃんの分まで頑張って

・あなただから大丈夫だよ

・他の人に比べてもできているから安心して

 

と言われると、どんどんプレッシャーに感じてしまいます。

 

 

きょうだい児本人の気持ちは、どこかに置いてけぼりになっていて、本音を言えない状態になっていきます。

 

 

本音では、

 

・本当はやりたくない

・しんどいって伝わらないのかな

・こんなに頑張りたくない

・無理していることに気がついてほしい

・わたしはお兄ちゃんとは違う

・いつもいつも、誰かと比べないでほしい

・もう無理って言いたい

・どうして、わたしだけ一生懸命にならないといけないんだろう

 

 

言いたいことは、山ほどあります。

 

 

だけれども、それを言葉にすることによって、家族や周りの人から、

 

『できるのに、やらない子』

『お兄ちゃんが可哀想』

『できない妹のために、やれるんだからやったらいいのに』

『どうして、あんな態度取るんだろう』

 

 

などと、思われてしまうのが怖くて、辛くて、言うことができません。

 

 

『無理しなくてもいいよ』

 

 

という言葉の裏に隠された本当の意味を読み取ってしまうからです。

 

 

『いつもできているんだから大丈夫だって』

『そんなこと言わないで、もっと頑張ってよ』

『みんな、あなたに期待しているんだよ』

『そんなこと言ったって、やれるじゃん』

『たまたまそういう気分になっているだけだよ』

『できないとか、冗談はほどほどにしてね』

 

 

家族や周りの人は、そこまで深刻になっているとは思っていないはずです。

だけど、きょうだい児としては、いろいろなことを考えてしまうのです。

 

 

期待どおりの結果を出さなければ・・・!

まだまだやれるんだから、頑張らなければ・・・!

やらないと兄弟姉妹に申し訳ない・・・

ちゃんとしないと・・・・!

 

 

”〜ねばならない” ”〜しないといけない”

 

 

誰に言われたわけでもないですが、自分で自分のことを縛り付けてしまいます。

無意識におこなっていることなので、縛られていることに気がつかないこともあります。

 

 

”辛い、しんどい、無理、助けて、当たり前って何?”

 

頭の中に思い浮かぶこの言葉の数々ですら、考えてはいけないものと感じてしまいます。

 

 

 

このような経験を小さい頃からたくさんしてきているので、当たり前という言葉が嫌いになります。

 

そのうち、

 

「どうせいつもできるって思われるし」

「兄弟姉妹よりちょっとできたらいいでしょ」

「適当にやり過ごそう」

 

となってしまうこともあります。それが、自分自身を守る行動であることがわかっているのです。

 

 

 

 

このように、”できて当たり前”というプレッシャーを感じながら過ごしていますが、その経験によって、周囲の他の人よりもできることが多くなっていくのが、きょうだい児の特徴です。

 

 

<できるという自信につながる>

きょうだい児としては、やらなければならないという状況で経験してきたことが、他の人にとっては、まだ未経験であることが多くあります。

 

特に、学校などで見られることですが、何かの体験授業の際に先生から、

『これについて、実際にやってみたことがある人は手をあげてください』

という問いかけを受けることがあります。

その時に、唯一手を挙げることができるのが、きょうだい児であることが多いです。

 

その状況を見て、

「みんながやったことがないことをやったことがあるんだ。」

「他の人よりもできている」

そう思えることがたくさんあります。

一度でも経験したことがあると、実際にどんな感じだったのか感想を聞かれたり、教える立場となって周りの人と関わることができるようになります。

それがさらに、自信となって積み重なっていきます。

 

 

 

<どんなことでも、平均かそれ以上はできる>

きょうだい児が言われる”できて当たり前”という状況は、ハードルが高いものであることが多いです。

常に、求められることが高い位置であるため、ある程度のことは、そつなくこなすことができます。

 

例えば、急遽予定していたこととは違うものを作り上げなければいけない、という状況になった時に、多くの人は「時間がないから無理」「わたしはそれはできない」と諦めてしまいます。

しかし、きょうだい児からすると、”普段からやっていることと似たようなことをするだけで良い”と考えることができるため、「できない」という考えはなく、「やれた」という経験になります。

 

難易度の違いはあれど、さまざまな経験から物事を捉えることができるため、どんなことでも良い結果を出すことができます。

 

 

 

できて当たり前という、とてつもないプレッシャーは、やり続ける忍耐力と継続性を身につけることにつながっています。

この状況がいつまで続くかわからない、そんな状況でも、どうにかなるだろう、と考えることができます。

 

 

きょうだい児がそつなくこなせることは、さまざまなプレッシャーを跳ね除けて培った自らの力であるということに、自信を持てるように、自分自身を認めてあげたいです。

 

 

次回に続きます。