助言 | 徳富 均のブログ

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自分が書いた小説(三部作)や様々に感じた事などを書いてゆきたいと思います。

 京都の洛南、宇治市にある黄檗宗(おうばくしゅう)大本山萬福寺(まんぷくじ)は、禅宗の一派で中国の僧隠元隆琦(いんげんりゅうき、1592~1673)によって開山された。

 黄檗第44代管長である柏樹禅師の有名な実話があり、この話は今でも相撲博物館で紹介されている。

 柏樹禅師が、新居浜(にいはま)の円蔵寺に逗留していた時、相撲部屋の陣幕親方の一行がやはり逗留していた。その中に大浪(おおなみ)という関取がいたが、負けてばかりである。そこで、柏樹禅師が、

「わしが勝つ秘訣を授けよう」

と言って、その大浪に何かを話した。すると、大浪は翌日から連戦連勝である。そこで、周囲の者が、どうしてそんなに強くなったのか、と大浪に聞いたところ、大浪の返事は次のようなものであった。

「柏樹禅師から、『お前の名はすばらしい名だ。その名前になりきってみろ』と言われました。そこで、部屋に戻り一人になって柏樹禅師の言われたことを考え、自分の名は『大きい浪だ』と繰り返しているうち、自分自身が浪になった気分になってしまい、何もかもを飲み込んでしまうような気持に浸ることが出来ました。気付いたら一睡もせずに浪になりきってしまっていて、その気持ちで相撲をとったところ、勝っていました」と。

 アドバイスは、一般的には難しい。ただ、「がんばれ」とか、「自信を持て」とかの精神的なものから、技術的なものとか多岐にわたるものが多いでしょう。しかし、悩める当人にとっては、そのようなことは大体分かっているのです。では、アドバイスに何が必要かというと、まず、相手の話をよく聞くこと、次に、難しいことは言わない。そして最後に、深く考えさせないで、頭の中を空っぽにしてやることです。アドバイスを求めている人は、話を聞いてもらい、同じ土俵に立ってもらいたいだけなのです。ですから、「仲間意識」を植え付けてやることで、ある程度の満足感が得られているはずです。