ゆっくり濡れて来い | 徳富 均のブログ

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自分が書いた小説(三部作)や様々に感じた事などを書いてゆきたいと思います。

 パールハーバーのオフィサーズクラブのバーの壁には、鐘が釣ってある。着帽で入って来た客を見たらそれを鳴らし、鳴らされた者はバーの全員に一杯奢るというしきたりだということである。これは、ネイビーの躾である。

 小泉信三元慶応義塾大学塾長は、初代防衛大学校校長の人選を当時の吉田茂首相から依頼され、槇智雄氏を選んだ人物である。その小泉塾長が六大学野球観戦中、にわかに雨が降り出した。そのため、慶応ボーイたちは慌てて走り出した。それを見た小泉塾長は、「あれはみっともない。雨ぐらい降ってきたって、もう少し堂々としていろ。少々雨に濡れても死にやしない」と言った。信三氏の息子・小泉信吉氏は、海軍経理学校に入っていたが、父の信三氏から「海軍ではどうか」と問われると、「ゆっくり濡れて来いと言われています」と答え、信三氏は、海軍の息子は自分より一枚上だと感心したという。

 雨に濡れたからと言って直接死ぬことは、まずないと言ってよいでしょう。そうであれば、雨だからといって慌てふためくことはないでしょう。人間、何か事が生じた時、どうしてよいか分からず「右往左往」して、逆に大怪我をするということは少なくありません。想定外の事が生じた時こそ、「どうすべきか」「何が原因なのか」と考え、その対応策を考え、実行すべきなのでしょう。ですから、平常時からの心の訓練が必要なので、事が生じた時、衝動的に対応することがないよう心掛けておくべきでしょう。