エレキ化したRCサクセションに対する言葉として、
しばしば耳にしたことに、
ライブでは音が太いのに、アルバムは音が細いというのがありました。
遅れてRCを聴くようになり、結局、ライブに行けなかった私の場合、
それほどそんな言葉がピンと来たわけではなかったんですけどね。
ただ、アルバム「PLEASE」を聴くに、
少しそんな言葉に実感が湧いた覚えがあります。
RCがエレキバンド化して最初のスタジオ録音アルバム。
ライブと比較するまでもなく、
音の線が細い、80年代的な録音の一枚。
もっとも、だから本作が良くないという感覚だったかというと、
私の場合、むしろそれゆえ、
本作に愛着を感じることになったように思っています。
RCのコンピレーション・アルバム「EPLP」について、
若い頃のフォトアルバムを見るような気分になると私は書いていますが、
その点、本作も同じというか、
こちらは、まるで若い頃の日記でもあるかのような、
いっそう極私的な世界が浮かび上がるんですよね。
それは、そんな音の細さゆえなのではないかと。
そこに綴られた言葉が、その繊細さゆえ、
より内心を描くとともに、
ある意味、文学的な雰囲気まで纏うところがあるっていうね。
(逆にそうでなければ、日記の言葉なんて、
それ自体は醜悪な戯言だったりもするものですし。)
若き日の行為行動を描いて感じられた「EPLP」。
それに対し、心情や心象といった、
より内面的なものを描いて感じられる「PLEASE」。
結果、これらの作品が表裏になって、いつかの本音や気取りを、
いっそうリアルに、それでいて美しい時間として、
映して感じられるのではないかなと。