ほんもののシードケーキ~物語に出てくる英国菓子~ | とこかしこのお菓子作りの日々 ~お菓子教室開業にむけて~

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ほんもののシードケーキ~物語に出てくる英国菓子~

 

 

ずっと前から作りたかった英国菓子「シードケーキ」を作りました。

 

ここでいう「シード」とは、キャラウエイシードのことです。

 

 

ドイツ料理のザワークラウトに入っている小さな黒い粒々が、キャラウエイの種、キャラウエイシードです。噛むと、かすかにプチっとした食感とともに、独特なさわやかな香りが広がるハーブです。

 

あのキャラウエイシードがお菓子に入っているなんて、どんな味なのだろうととても興味があったのです。

 

 

アガサ・クリスティー「バートラム・ホテルにて」にでてくる「シードケーキ」

 

 

1965年に刊行された、アガサ・クリスティーの「バートラム・ホテルにて」に、シードケーキは登場してきます。

 

登場人物のセリナ夫人が、ホテルで午後のお茶の楽しんでいるときに、給仕にすすめられるのがシードケーキです。

 

「シードケーキね、もう何年もシードケーキなんて食べたことないけど、ほんもののシードケーキでしょうね?」

(ハヤカワ文庫:バートラム・ホテルにてより)と念押ししてからお願いしたのが、シードケーキです。

 

なぜ「ほんもののシードケーキ」なのかを念押ししたか。

 

実はイギリスのシードケーキは1700年代~1800年代にかけて人気があった、歴史あるケーキです。しかし食べ物にも流行り廃りはあるものです。そのうちだんだん食べられなくなり、あまり見かけることのないケーキになってしまったようです。

 

だからセリナ夫人は、今すすめられているシードケーキが「ほんもののシードケーキ」なのか、確かめずにはいられなかったのでしょう。

 

もともとは春の種まき作業が終わったことを祝うケーキだったようです。

 

キャラウエイシードは、豊穣を願う大切な存在だったことがうかがいしれます。

 

ちなみに「ホビットの冒険」にも、シードケーキは登場しています。NHK Eテレ「グレーテルのかまど」で紹介されています。

 

わたしは「指輪物語」は読んだのですが、「ホビットの冒険」は読んでいないのです。シードケーキの場面はおおいに興味があるので、ぜひ読んでみたいところです。

 

 

ほんもののシードケーキとは

 

 

さて、本日の主役「ほんもののシードケーキ」です。

 

レシピは伝統を重んじるステイシー先生の配合で作りました。材料の合わせ方・混ぜ方などについては、ちがうやり方で作っています。

 

いつもどおり、初めに材料をすべて計量しておきます。

 

 

 

基本的には材料を順番に混ぜていくだけです。

 

 

 

焼き上がりです。

 

 

あら熱がとれたところで、型から外しました。冷まし中。

 

 

 

微粒子グラニュー糖を、さっとふりかけました。(ほんとはそういうデコレーション?的なものはしないようですが、ちょこっとだけお許しください)

 

 

 

断面はこんな感じです。

 

 

 

 

ほんもののシードケーキの味は?

 

 

ほんもののシードケーキ。一口いただくと、キャラウエイシードのさわやかな香りが口の中に広がります。

 

 

 

キャラウエイシードは、意外と甘いお菓子にあうのです。オレンジとの相性もばっちり。たぶん好きな人はくせになる風味だと思います。もっとオレンジをきかせてもよかったかな~。次に作るときは、オレンジピールをちょっと増やすか、オレンジの皮をすりおろして入れるか、調整してみます。

 

 

キャラウエイシードを使った「ほんもののシードケーキ」、もしかしたら日本人には、ひとくせあるお菓子かもしれません。好き嫌いが分かれそうなお菓子ではあります。

 

*わたしはもちろん大好きです

 

 

それでも英国菓子好きであれば、一度は食べておきたいお菓子です。

 

遠い昔、イギリスの人たちが、自分たちが蒔いた種が豊かに実をつけることを願いながら、口にしたシードケーキ。その景色を思い浮かべながら、タイムスリップ気分でシードケーキをいただくのは、なかなかすてきなひとときになるのではないでしょうか。

 

久しぶりにアガサ・クリスティーを、だだだーっと読みたくなりました。

 

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

*今回のブログは、次の文献を参考にさせていただきました。

モーニングトンクレセントの英国菓子(ステイシー先生)

イギリスお菓子百科(安田真理子さん)

英国菓子レイジーデイジーベーカリーのおいしい秘密(小関由美さん×中山真由美さん)

イギリスのお菓子とごちそう(北野佐久子さん)