❻ 10代のときに書いた詩 | 文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

After retirement, I enrolled at Keio University , correspondence course. Since graduation, I have been studying "Shakespeare" and writing in the fields of non-fiction . a member of the Shakespeare Society of Japan. Writer.

     

          

 

      風の吹かないうちに

 

   “風の吹かないうちに別れましょう

    雨の降らないうちに

    きっと雨曝しになってしまいます

    晴れることを期待してはいけません

   豪雨とならないうちに”

 

 果たして愛が存在するとしたら これが愛なのであろうか

 彼女に好きな男がいるからといって 自分はその苦しみから逃れようとして 別れることを考

   える これが愛なのか

 一面 愛のような気がする 遠く彼女の人生を見守ってやる 歓んで彼女の人生を見送る

 反面 違うような気もする

 苦しくても 苦しくても 共に生きようとするのではないだろうかと

  

       “でも わたしは人の子

        利己的な範囲内でしか彼女を追うことができません

        雨曝しを恐れるのです

       豪雨になるのがいやなんです

       だから 束の間の交りなら

       早く早く別れましょう

       風の吹かないうちに”

                  (19歳の7月3日筆)

 

        おまえは生まれた

 

19年前の夏

おまえは生まれた

岩代の国は貧しく食べるものさえなかった

しかし おまえは

雄大な自然と太陽とにつつまれて

あんなに大声で泣き叫び

生命の芽をふきだした

強い人間になってくれと

わたしはその時祈らずにはいられなかった

しかし おまえよ

どうして私の望みを忘れ

去っていったのか

その道を知らずに

語ってあげよう

私の青春時代を

おまえのように悩んだ時代を

遠い彼方から

おまえよ

わたしはきょうも そして明日も

待っている

おまえの帰る日を

                  (19歳の7月3日筆)