風の吹かないうちに
“風の吹かないうちに別れましょう
雨の降らないうちに
きっと雨曝しになってしまいます
晴れることを期待してはいけません
豪雨とならないうちに”
果たして愛が存在するとしたら これが愛なのであろうか
彼女に好きな男がいるからといって 自分はその苦しみから逃れようとして 別れることを考
える これが愛なのか
一面 愛のような気がする 遠く彼女の人生を見守ってやる 歓んで彼女の人生を見送る
反面 違うような気もする
苦しくても 苦しくても 共に生きようとするのではないだろうかと
“でも わたしは人の子
利己的な範囲内でしか彼女を追うことができません
雨曝しを恐れるのです
豪雨になるのがいやなんです
だから 束の間の交りなら
早く早く別れましょう
風の吹かないうちに”
(19歳の7月3日筆)
おまえは生まれた
19年前の夏
おまえは生まれた
岩代の国は貧しく食べるものさえなかった
しかし おまえは
雄大な自然と太陽とにつつまれて
あんなに大声で泣き叫び
生命の芽をふきだした
強い人間になってくれと
わたしはその時祈らずにはいられなかった
しかし おまえよ
どうして私の望みを忘れ
去っていったのか
その道を知らずに
語ってあげよう
私の青春時代を
おまえのように悩んだ時代を
遠い彼方から
おまえよ
わたしはきょうも そして明日も
待っている
おまえの帰る日を