文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

After retiring, I enrolled in the correspondence course at Keio University. Since graduating, I have been studying Shakespeare and writing non-fiction. I am a writer and a member of the Shakespeare Society of Japan.

▲大修館シェイクスピア双書第2集発売中。英文テクストと解説・注釈が充実しています。

 

 

Ⅱ シェイクスピアの英語

 

発音 

(A)子音:

       おおよそ今日と同様に発音されたが次の点について注意が必要である。

 

(1)今日では無音化されている子音が綴りどおりに発音される。

  e.g.knight, gnat, gnaw, should, would , could

        *「e.g.」や「i.e.」;「e.g.」は「例えば」という意味で、「イー・ジー」と発音する。ラテン語の「exempli gratia」の略で、英語で書けば「for example」になる。「i.e.」は「すなわち、言い換えれば」という意味で、「アイ・イー」と発音する。「i.e.」は、ラテン語の「id est」の略で、英語で書けば「that is」になる。

 

(2)  fとv: after, selfの[f]、母国間の[v](ne’er,  o’er), se’nnightの[v]がしばしば脱落する。

(3)語尾―tion、-sionはゆっくり話す時は2音節に(e.g. na-si-on, ques-ti-on, man-si-on, vi-si-on)

       そして韻律をあわせるために1音節に発音される。ただし現代英語の[ʃ][ʒ]の発音はまだなかった。

(4)r: 個人差がつよかったが、当時はどの位置にあっても完全に子音として発音された。但しときに(特に[s]音の前で)脱落することもある。

 

(B)母音:

(1)Shakespeare時代以来短母音についてはさほどの変化はみられないが、長母音の変遷には注意を要する。

 

 

綴 り 

  Shakespeareの時代には未だ綴りは固定しておらず、単語の音を伝えている限り正しい綴りとみなされていた。そこで同じ単語がhour, houre, hower ,howre, bone, boan, boaneのようにいくつにも綴られた。Shakespeareの現代版では、現代英語の綴りになっているが、フォリォ版やクォートー版では次のような点に注意しなければならない。

 

(1) iをjに代用する:iocond=jocund, ioyne=join, Iew=Jew, Iove=Jove

(2) uとvは同じ文字として扱われ、中世英語綴り字の習慣によって語頭ではv、その他(とくに母音間)ではuが使われた:vs=us、vp=up、vpon=upon、vnder=under、vse=use、vnity=unity、viuid=vivid、euer=ever、aboue=above、haue=have、graue=grave,diue=dive、reuiue=reviveただしF2では現代英語の綴字法uがすでに一般化している。

 (3) 語尾の-eはすでに14世紀末に発音されなくなっており、単子音のあとに-eがあるとその前の母音が長母音であることを示すが、このような母音の質の変化をおこさない限り、作者は意のままに語尾に-eを加えることができた:keepe, steele, deere(=dear), houre, finde, winke, milke, clocke, meete, breake, witte, boxe, taske.

(4) iとyは同じ文字として扱われた。とくにim,mi、nn.uu,un、のような綴りにあってyはiよりも見分けやすくよく使われた。しかしShakespeare時代にyの使用はすでに制限を受けはじめ、一人称のIはもはやyとは書かれず、語頭はじめその他の位置でもしだいにiが使われるようになった。Bid,byd/lion,lyon/claim,clayme,語頭ではy=ie(pl.[1]は-ies,-yes)となっている。lady, ladie/ pity, pitie/ money, mony, monie,monies, moneyes/ country, countrey, countrie/ daies, dayes

 (5) Apostropheの属格はまだ使われなかった:a young mans reuennew/your fathers voice/ Cupids strongest bow. Apostropheはまた省略符号としても使われなかった:Ile=I’ll/Ide=I’d

 

(6) OEのthorn(p=th)の代用としてのyは、原稿ではye=theとyt=thatに残ったが、印刷にはあまり使われなかった。

(7) 母音の上に波線(stroke)をひき、つぎにmやnが省略されていることを示した。

    mē=men/frô=from,moűting=mounting/differēces=differences

(8)  sはʃと書かれた。

(9) イタリック書体は固有名詞・引用句・見出し・ト書きなどを示すため自由に使われたが、現代英語におけるように強調をあらわすために使うことはまずなかった。

(10) 固有名詞を大文字で書きはじめることは現代英語と同じだが、このInitial capitalsを、ときに普通名詞に、まれに形容詞にも用いることがあった。まと大文字を用いて強調をあらわすことはふつうであったが、この用法は十分にはさだまってはいなかった。

 


[1] pl: plural複数の略。

クリップ

 

本論稿は、池上忠弘、石川実、黒川高志、金原正彦共著『シェイクスピア研究』(慶應義塾大学出版会)の大要をまとめたものです。私自身の学習を目的としたものですので、論文・レポートなどでの本文からの引用はお控えください。