文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

After retiring, I enrolled in the correspondence course at Keio University. Since graduating, I have been studying Shakespeare and writing non-fiction. I am a writer and a member of the Shakespeare Society of Japan.

 

▲最初の全集1623年)に掲載された肖像画

 

 

 最初のShakespeare全集は、Shakespeare死後7年に、彼の役者仲間であったJohn HemingeとHenry Condellによって出た。

いわゆる1623年版のフォリォ初版(First Folio; F1)で、多くはfoul papers やprompt-booksなどをもとに印刷されたと考えられる。F1には詩編はふくまれずPericlesをのぞいた36の戯曲だけがおさめられComedies14篇、Histories10篇、Tragedies12篇の三つのグループに分けられている。

第2フォリォ(Second Folio, F2)が1632年

第3フォリォ(Third Folio,  F3)が1663年

その再版が翌1664年に

第4フォリォが1685年に出たが、第3フォリォの再版(1664年版)からPericlesとそのほかにShakespeareのものといわれていた6篇の戯曲が加えられた。

 

 しかし今日では、このうちPericlesだけがShakespeareの作品とみなされている。その他の6篇に、さらに7篇の戯曲とSir Thomas Moreを加えた14篇は、C. F. Tuck Brooke編、The Shakespeare Apocrypha(Oxford, 1908, corrected 1918)にまとめられている。フォリオ版の戯曲の分類は今日のShakespeare全集にもそのまま受け継がれている。これを現代のつづりでE.K. Cambersの推定した作品の執筆年代とともにあげれば以下のとおりである。

 

◎Comedies

The Tempest (1611–2)

The Two Gentlemen of Verona (1594–5)

The Merry Wives of Windsor (1600–1)

Measure for Measure (1604–5)

The Comedy of Errors (1592–3)

Much Ado about Nothing (1598–9)

Love's Labour's Lost (1594–5)

A Midsummer-Night's Dream (1595–6)

The Merchant of Venice (1596–7)

As You Like It (1599–1600)

The Taming of the Shrew (1593–4)

All's Well that Ends Well (1602–3)

Twelfth-Night; or What You Will (1599–1600)

The Winter's Tale (1610–1)

 

◎Histories

The Life and Death of King John (1596–7)

The Life and Death of Richard the Second (1595–6)

The First Part of King Henry the Fourth (1597–8)

The Second Part of King Henry the Fourth (1597–8)

The Life of King Henry the Fifth (1598–9)

The First Part of King Henry the Sixth (1591–2)

The Second Part of King Henry the Sixth (1590–1)

The Third Part of King Henry the Sixth (1590–1)

The Life and Death of Richard the Third (1592–3)

The Life of King Henry the Eighth (1612–3)

 

Tragedies

Troilus and Cressida (1601–2)

The Tragedy of Coriolanus (1607–8)

Titus Andronicus (1593–4)

Romeo and Juliet (1594–5)

Timon of Athens (1607–8)

The Life and Death of Julius Caesar (1599–1600)

The Tragedy of Macbeth (1605–6)

The Tragedy of Hamlet (1600–1)

King Lear (1605–6)

Othello, the Moor of Venice (1604–5)

Antony and Cleopatra (1606–7)

Cymbeline King of Britain (1609–10)

Pericles, Prince of Tyre (1608–9)

 

 フォリォでは不完全ながら幕(Act)、場(Scene)に分けられ、登場人物もThe Tempest, The Two Gentlemen of Veronaなど6つの作品の末尾に記されているし、punctuationもより文法的になっている。18世紀にはいるとこの傾向はいっそう強まってくる。これら18世紀のShakespeare全集編纂者たちのおかげで、今日のShakespeare全集の基礎が確立されたのである。

 以下に18世紀の校訂者と完成年代をあげる。

 

1709年 Nicholas Rowe

1725年 Alexander Pope

1733年 Lewis Theobald

1746年 Thomas Hanmer

1747年 William Warburton

1765年 Samuel Johnson

1768年 Edward Capell

1773年 George Steevens

1790年 Edmond Malone

 

 Theobaldは本文修正にあたり、問題となった箇所と類似の語句語法を、ほかのShakespeare自身の作品や、当時のほかの作者の作品に求めるという方法をとり、これは近代の本文校訂者に受けつがれた。

 

 Johnsonは第1から第4までのフォリォのうち、第1フォリォのみが本文校訂に意義あると考えて、近代のファースト・フォリォ(F1)中心の、合理的編纂方法の創始者となった。さらにそのprefaceと注は、現代においても学問的な輝きを失ってはいない。

 

 Capellは、改訂のたびに累積される読みのあやまちや乱れを受けつがないために、先行する版を底本にするという、それまでの校訂者の慣習を排して、はじめて自らの書きおろし原稿をもとにした。また、いまだ十分に系統的といえないが、59種のクォートーを交合したのである。Capellの版は注や異本のよみがなく、当時広く受容されなかったが、以後の本文改訂への貢献は著しい。CapellのあつめたクォートーはCambridgeのTrinity Collegeに保存され、19世紀本文校訂の頂点といわれるクラーク(W. G. Clark)ライト(W. A. Wright)のケンブリッジ版全集(Cambridge Shakespeare、9vols. 1863-6;final revision 1891-3)の完成に実を結んだのである。

 

 そしてJ. BartlettのConcordanceをはじめ広く類書において、幕、場、行数の指示に標準版となった1冊本全集Globe Shakespeare(1864)のもとになったのが、このクラーク=ライトのケンブリッジ版全集である。さらにこのCambridge Shakespeareが誘因となって、現在なお進行中のNew Variorum Shakespeareへの道がひらかれたのである。

 

 New Variorum Shakespeare(新集注版・第4次集注版)は、Horace H. Furnessがその第1冊目のRomeo and Julietを1871年に完成し、彼の死後、息子のH. H. Furness, Jr.に受け継がれ、1936年以降はModern Language Associationによって進められている。これまでのあらゆる版の本文を読み、註釈が網羅され、現在までに27冊が完成されている。このほかこんにちまでに出版されているShakespeareの諸版は非常に多いが、現代のもっとも注目すべき校訂はThe New Cambridge ShakespeareThe New Arden Shakespeareであろう。

 

 The New Cambridge ShakespeareはArthur Quiller CouchとJohn Dover Wilsonの共同編集ではじめられ、1921年に第1冊目のThe Tempestが出たが、それ以後はほとんどがJ. D. Wilsonただひとりでんされ、1955年からJ. C. Maxwell, G.I. Duthie, Alice Walkerが協力して全37巻を1966年に完成した。J. D. Wilsonの卓越した書誌学的知識にうらづけられた校訂は、新鮮で、本文にもト書きにも、上演のための深い関心が示されている。

 

 The New Arden Shakespeareは旧版(The Arden Shakespeare,,1899-1924)の全面的な訂版版(改訂版の誤植か?)であり、1951年Una Ellis-Fermor監修のもとにはじめられた。1958年に彼女が亡くなってからは、Harold F. BrooksとHarold Jenkinsに受け継がれ、新しい研究成果をとりいれながら、現在も進められている。

このほかにもこれまでに多くの分冊版がでている。これら分冊本の註釈や解説にはそれぞれの特色がみられる。

 

わが国で出版されているものとしては市川三喜・嶺卓二編『詳註シェイクスピア双書』(全20巻・研究社)が語句の解釈も懇切で、英米版のものへの手引きとなる。『篠崎英米文学双書』(篠崎書林)にある大山俊一・大山俊子編のものは、註釈の焦点が作品解釈にあてられ語義も詳しく優れている。

1冊本のShakespeare全集でかつてのGlobe editionにかわり最も標準的とされているのが、P. Alexander編のCollins Tudor Shakespeare(Collins,1951)である。

 

これらの情報は執筆当時のものであり、現在の研究水準からは古い部分もありますが、日本のシェイクスピア研究史や受容史を知る上での参考として付記しました。)


クリップ

 

本論稿は、池上忠弘、石川実、黒川高志、金原正彦共著『シェイクスピア研究』(慶應義塾大学出版会)の大要をまとめたものです。私自身の学習を目的としたものですので、論文・レポートなどでの本文からの引用はお控えください