『ハムレット』の底本は3つあります。Q1とQ2、そしてFです。
通常、私たちはQ2とFの折衷版を読み、芝居もこれを採用しています。Q2とFの内容は似通っていますが、Q1は多くの点で違いがみられます。最大の違いは何か?
それは、妻であるガードルードが前王殺しに関与していないということを明確に否定していることです。
それなら他の底本はどうか、と気になるところですが、多くのシェイクスピア学者はその点をあまり気にしていないのか、ガートルードは王殺しに関与していないとの断定的な見方が多いのです。もっともQ1以外には関与の是非についての記述はありません。
私の卒論の動機はこの疑問から始まりました。
いよいよQ1の芝居が5月から順次全国公演されます。ハムレット役は吉田羊さん、Q1はQ2の半分の長さです。Q1の訳は安西徹雄訳が出版(光文社古典新訳文庫)されていますが、吉田羊さんの芝居は松岡和子さん訳です。機会がありましたら読み比べてみてはいかがでしょうか。