雑踏水族館 -Crowd Aquarium- -5ページ目

雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

日々の出来事や創作物を展開しています
是非、覗いていってください

もしかしたら、空って寂しがりなのかもしれない

例えば、天気がある


晴れは微笑み、気分がいい

雨は泣いている、悲しい

曇りは不安や恐怖


そんな感じに、天気は空の表情だとしたら

雨の時は、よっぽど悲しい何かがあったのかもね


ただ、孤独に震えたのかもしれない

空は、たった一人だから



この空は、どこまでも続いている

だから、離れ離れになっても大丈夫だ


こんな台詞を聞いたこと、ないかな


空はどこまでも続いている

つまり、空は一人

いつの時代も、どこの場所でも


それは孤独であり、怖いこと

これからもここで一人だと考えると、怖くてたまらなくなる

だから、泣いてしまう


曇りの後に雨が降るのは、そういう理由があるのかもね

でも、その度に自分には友達がいると気付いて笑う


なら、雪は失亡った者への弔いの花なのかもね

だから年末、その年に向こう側へ行ってしまった人のために降らせる



死は黒くなどない

きっと、もうそこには何もないから、とっても白いんだと思う

最後に人が、綺麗な顔をして送られるように


死は、純白だと思う


だから、雪も白い

黒く送りたくなんてなかった

綺麗に、旅立ってもらえるように、君を白の中で送りたかった


でも、私にそんな事を言える権限なんて無いから

ただ黙って、見送った


今は空の向こうへ行っていると信じている

空よりも高い、楽園に



もし私がどこかの世界の空だったとしたら

雨と雪がいっぺんに降ってるかもしれないね



空には私たちがいるように

私たちには空がいるように


旅立ってしまった人たちも、私たちの側で生きている


空の向こうの世界を見ることはできないから

だから、私は空を見上げ、微笑む


私は貴方の側にいるよ



いつもより空が、晴れている気がした


ゆらゆら浮かぶ

浮かんで沈む

それを繰り返す海の上


私はゆらゆら海の上

海が荒れれば吹き飛びそう

私は何処かへ吹き飛ばされそう


ゆめごこち、夢心地



ふらふら漂う海の上

私はいつも、空を見ている


空が微笑む時も

不安そうな時も

泣いている時も

怒っている時も


私は微笑まない

不安にもならない

泣きもしない

怒りもしない


空に浮かびそこねた、不運な私

心の中でいつも思う

貴方はまだそこで私を思っているのかと


すると私は心配になる

けれど顔には現れない

ゆめごこち、夢心地



いつしか私は海に融ける

海の一部となっていく


ゆらゆら浮かぶ

ふらふら漂う海の上

昨日も今日も、空を見る


空が晴れている時も

曇っている時も

雨が降っている時も

雷が鳴っている時も


私はただただ空を見る

貴方を思う傍らで


私はもう、戻れない

だから早く、区切りをつけて

再出発を飾って欲しい

私を心の隅において


貴方が海を見てくれれば、そこに私はいつも居ます


そんな事を思いつつ、私はまた海へと融ける

少しずつ、ゆっくりと

ゆめごこち、夢ごこち



ゆらゆら浮かぶ

浮かんで沈む

それを繰り返す海の中


私はゆらゆら海の上

私はまだまだ海の上

私もいつかは海の中

私もきっと、海の底


ゆめごこち、夢ごこち

ゆめ心地、夢心地




僕は兵器です、人間ではありません

何故兵器なのかというと、僕の心臓には爆弾が埋め込まれているからです


兵士として戦うには、あまりにも非力すぎた

だから、僕は兵器になったんです

いや、させられたんです


僕の命は、一人の男に握られています

その人次第で、僕は死ぬのです

きっとその人は、僕を爆破することを躊躇わないでしょう


僕の他にも、沢山代わりはいるのだから


それに、国のために、国のためにと言っている

僕のために、爆破しないなんてことはない



今この状況において、人の命はきっと一円玉よりも軽い

国という目に見えないものの為に、目に見える人間は戦う


どうせ僕は死ぬんです

だから、最後にどちらが勝つかなんて興味はありません



無理矢理埋め込まれた爆弾

突然約束された未来


僕の生まれた意味は、一体なんだったのだろうか


抵抗も敵わないまま体を押さえつけられ、麻酔をかけられた

気がついた時、爆弾を埋め込んだと、迷彩服の男と白衣の男たちから告げられた


絶望を感じた僕は最初、何も考えることができなかった

しかし、すぐにとてつもない程の怒りがこみ上げてきた

声が枯れるほど叫び、涙が枯れるほど泣いた


男たちに殴りかかったが、大の大人にひとりの子供が敵うはずもなく、あっけなく倒された


その後、逃げられないよう牢の中に入れられた僕は廃人のようだった

今思えば、僕は恵まれているのかもしれない


いつ最後が訪れるのかがわかるし、もうすぐ死ぬことを知らされているのだから




進軍命令が下る

真っ直ぐ歩いていけば、敵はもうすぐそこだ

どうせ逃げても消される命だ


だったら進んでやるさ

戦地に行かせられた末路がこれだ


なら、故郷に残っていたほうが…

そうだ、故郷…


もし、ここで死んでしまったら、もう、家族に会えない

異国で死んだら、魂もずっとここにいるんじゃないか

それに、爆破されたら肉片さえ残りはしない



嫌だ

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

死にたくない、死にたくない

母さん、姉ちゃん、皆…

怖いよ、助けてよ、このまま進んだら、もう、生きることができない

こんな、こんな終わりなんて嫌だ

僕は死ぬために生まれてきたわけじゃない

僕は、僕は生きるために生まれてきたんだ

国のためになんか死にたくない


背を向けて走り出す


怖い、怖い

僕は死にたくなんかない!

僕は…僕は、生き