裏切りの代償は永遠に | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

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是非、覗いていってください

信じていた人に裏切られた


経験したことはないが、きっととても辛いのだろう

きっととても悲しいのだろう



君の書いた遺書、そこに僕の名前はなかった

何で書かなかったのか


君がいない今、それを知ることはできない

どんな思いをしながら命を絶ったのか

どんな思いで、死を選んだのか


左斜め前の席に座っていた君はもういない



これが現実


自分の手を見るたびに思う

目には見えないけれど、きっと赤黒く汚れているに違いない

だって、君に死を選ばせたのは彼らじゃない、僕だから


最初は君を守っていた

彼らの暴力を止めてみせる

そのつもりだった


けれど、いつの間にか僕は彼らと同じになっていた

心の何処かで優越感すら感じていた


ふと一人になった僕は思った


“彼は一人になってしまったのではないか”


そう思うと怖くなり、すぐさま心の中で自分をごまかした


“いや、自分のほかにも味方はいる”

“たとえいなくても、死んだりなんかしない”



どうしてそう言いきれたんだ

底知れぬ闇と戦い、唯一だった味方は闇の中へと消えていった


つい先ほどまでいた味方がもういない

それがどれほど苦痛か、考えただけでも分かるはずだ



なのに僕は裏切った

君は巨大な闇に耐えられず、深淵へと消えていった

左斜め後ろから見えていた、君の表情はもう無い



最悪の幸福を掴んでしまった君はもう二度と帰らない



遺書に綴られていた名前、それは主犯の生徒のみ

何故僕の名前を書いてくれなかったんだ

これじゃあ、償えないじゃないか


君を裏切った罪を

君を、殺した罪を



ふと自分の机に手を入れる

すると、覚えのない小さな一枚の紙が入っていた

開いてみると、そこには震えたような字でこう書いてあった




“こんな僕と仲良くしてくれてありがとう。僕の分も生きてほしい。”



刹那、涙が溢れる

どうして僕なんかに未来を託したんだ…

どうして、どうして…っ


頽れた足を立たせ、涙を拭う


分かった、僕は生きる

君の最後の願いは、絶対に叶えてみせる

君を守ることは、出来なかったから


そんなことで罪を償えるとは思わない

僕はずっと罪を抱えて生きていく

僕は小さな紙の裏に、一言だけ書いた



“僕の方こそ、ありがとう。”