爪痕なんか残せなくても | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

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是非、覗いていってください


振り返ると、僕はそこに居たんだと気付く

思えば、僕は爪痕を残せていただろうか


いや、残せていない

それは僕が一番知っているはずだ

ただ、暗い道を一歩一歩歩いただけ

そんなことで、爪痕なんか残せるわけがない


平坦に、平坦に

辛い思いはさしてしていない

けれど、すごく楽しい思いをしたこともないかもしれない


考えれば考えるほど足が震える

この道をもう戻ることが出来ないんだと思うと歩くことが怖くなる


暗がりの中でただ一人

どこまで続いているのかもわからない道の上を


このままゴールしてしまったら、僕がここに居たことを示せない

そんなのは嫌だ

立ち止まることも許されない


涙が溢れそうになる

吐きそうになる

地に膝をつき、頭を抱える

この口からはか細く声が漏れる



“怖い、怖い…っ”



このまま進みたくはない

でも、戻ることなんてできない

だけど立ち止まってしまったら、そこで終わりじゃないか

でも、でも…


伸びている道をひたすら歩くのは僕ら人間、いや、生物の義務

でも、どうしても思うんだ

このまま歩いたら、何も残せないんだって


どうにかしないと、僕は本当の意味で死んでしまう

それだけは避けたかった


暗い道が暗いままなのは僕のせいなんだ

伸びている道が平坦なのも僕のせいなんだ


明るくするのも僕次第

困難にするのも僕次第


なら、どうする


少しずつ、坂道を高くしていこう

もう少し、笑ってみよう

少しずつ、少しずつでいい


たとえ爪痕が残らなくたっていい

僕が生きた足跡は、この道に

この胸の中に、いつまでも刻まれ続けるから