教室から出てベランダに出る
下を見ると、少し怖いって思う
ここから落ちたら死んでしまう
もしかしたら死なないかもしれないけど、大怪我をする
痛いのは嫌だ
落ちないように、僕は手すりをしっかりと掴む
でも、怖いと思う反面、こうも思う
もしかしたら、着地できるんじゃないかって
そう思うと、ここから飛び降りてみたくなる
けれど、すぐに正気に戻り、僕は何を考えてるんだって思う
絶対着地なんてできるわけないじゃないか
ただでさえ僕は運動が苦手なのに
それ以上に高いところが嫌いなのに
それなのに、なぜそう思うのだろう
ここから飛び降りてみたい
苛められてるわけじゃない
生きているのが嫌になったわけじゃない
死にたい、そう思っているわけじゃない
でも、思う
飛び降りても、案外痛くないんじゃないか
着地できるんじゃないか
見たことのない世界を見てみたい
世界って、何も外国のことだけじゃない
これだって見たことのない世界だ
どんどん地に迫っていく感覚
それを、やってみたいと思う
そう思うたびに、僕は僕が怖くなる
僕が知らない間に、この手すりを越えて落ちてしまうんじゃないか
飛び降りたい思いが強くなりすぎて、飛び降りてしまうんじゃないか
体が震えだす
恐怖と欲求が交錯している証拠だ
多分ここで飛び降りたら本能が勝つのだろう
結果待っているのは、死
けれど、満たされる
恐怖が勝ればその逆
僕は死にたくないから、もう教室に戻る
立入禁止のロープを潜って
放課後だから、もうこの教室には誰もいない
夕日が照らす、この箱みたいな一室
きっと、君も僕と同じだったんだろう
ただ君は、欲求が勝っただけ
それだけの話なんだよ
君が最期に見た景色はどうだった?
聞きたいけど、もう聞けない
越えてはいけない一線を、君は越えてしまったから
悪いことではないよ
けどさ、僕が涙を流しているのはなぜだと思う
確かに君がいた教室で、ただ僕の嗚咽だけが木霊した
血よりも鮮やかな色をした、夕日が照らすこの場所で