鎖が涙に化わる時 | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

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是非、覗いていってください


あの日から、僕は鎖に繋がれた

手を動かすことは出来ない

足も動かすことは出来ない

鎖は高い高い天井に繋がれていて果ては見えない


君が通り過ぎていくのが見えた

ただただ助けを求めたかった

だけど、それは許されなかった


そんな事を叫ぼうとする素振りを見せようものなら、お前は僕の口を塞いだ

息が出来ない

意識が遠のいていく



目を覚ますと、君はもういない

振り向いてお前に叫ぶ

憎しみのこもった声で


けれどお前は言う

〝キミのためだよ〟と

僕のことを、まるでゴミを見るような目で見ながら

そして、不格好な僕のことを嘲笑いながら


僕はいつもお前が憎くてたまらない

憎くて憎くて憎くて、殺してやりたいくらい憎い


お前に対する憎悪は日に日に大きくなっていく

でも、お前に対する感謝も日に日に大きくなっていくんだ

可笑しいよね、こんなにも憎くてどうしようもないお前に感謝しているなんて



君は僕の前を何度も通り過ぎていく

その度にお前は僕の口を塞ぐ

その理由を僕は知っているんだ


君を傷つけたりしないように、お前はここにいる

とはいっても他の人は見えない

鎖だって、本当は自分でかけたんだ


それだけでは足りないから僕はお前を作り出した

そして何度も悪者になって僕を止めてくれた

僕を嘲笑う裏でお前はずっと泣いていだんだ


それは、何故か

僕はお前であり、お前は僕だから


全ては僕のエゴだった

その事に僕はとっくに気付いていたんだ



〝今まで辛い思いをさせてごめん。〟

〝ありがとう、もういいよ。〟

〝最後に、お前の手で僕を殺して。〟



お前は一本のナイフを持って、僕の体奥深くに突き刺した

お前は泣きながら僕に囁いた


〝本当に、これで良かったのか?〟


僕はお前の肩を抱き、そして微笑んだ




ボクはキミの体を抱き、ただ泣いた

消えゆくキミを最後の瞬間まで見ていた

そして、小さく呟いた


〝またね。〟


一頻り泣いたら、笑顔に戻ろう

キミが、泣いてしまわないように