運命という海の中で | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

日々の出来事や創作物を展開しています
是非、覗いていってください


君と出会ったのは小学生の時だった

僕と瓜二つの顔

その顔を見た時、思った

ああ、またか


願っていたんだ、無意識のうちに

僕らが出会わないことを


きっと君は今回も憶えていない

以前僕らが出会っていたことを

なのに僕だけ憶えている

それってずるいよね

何もかも忘れていれば、きっとこんな思いもしないのに



一番最初に僕らが出会ったのは小さな村

僕らは一対で生まれた

だけどすぐに殺されたんだ

村の人たちがたくさん死んだから


そこから始まったんだ

忌まわしい呪われた連鎖が



これで一体何度目だろう

僕らはいつも子供で死ぬ

大人になることなく死ぬ

少なくとも君に会うと、ね


本当は嬉しいはずなんだ

だって僕の片割れだったんだよ

出会えて嬉しくないわけないじゃないか


けれど、出会ってはいけない

出会ってしまったら最後、皆が死んでしまう


最初僕たちは、きっとただの子供だったんだ

でも、殺された時その呪縛に閉じ込められた


僕たちは何も悪くない

何も、悪くないはずなんだ


皆と一緒に僕たちも

僕たちと一緒に皆も死ぬ

もうこの眼はそんなものを見たくないと叫んでいる

運命って、何でこんなにも残酷に僕らに重く伸し掛るのだろう

そう思うたびに、普通の子供たちが羨ましいと思う



罪なき人々を殺してしまう、僕らのそんな運命



今この目の前に広がっている光景がその証拠

海が押し寄せてきて何もかも飲み込んだ

建物だったものは瓦礫へと姿を変え、木々は全て薙ぎ倒された

きっと死んだ人は計り知れないだろう


僕の目からも海が押し寄せてきた

この口からは〝ごめんなさい〟というただ一言が零れる


もう人を飲み込んだ海は過ぎ去った

けれど僕から溢れた海は止めどなく流れ続けた

僕らの傍にあるのは希望なんかじゃない

僕らの傍にあるのは絶望だけ



ふとそんな僕に誰かが声をかけた

それは君だった

〝大丈夫、大丈夫だから〟

そう言い、君は僕を抱きしめてくれた


そうだ、僕らはまだ死んでいない

このまま生き続けて、大人になってみせる

それがこの運命を打ち砕く唯一の方法

君の胸に蹲り、泣きながら思った



朝日はただ無情に、でも僕等の残酷な運命を照らすかのように僕らに降り注いだ