君と死神と僕 | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

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ゆっくりと近づく終わり

それを見続ける僕

削られていく、掛け替えのないもの


この扉を開け放すことが出来れば、救われるよ

僕が君に囁くと、君は微笑んだ

息が苦しそうに、絶え絶えになりながら

何も言わないけれど、何を考えているかは分かる

そうだよね、やっと決心したんだから


闇の中に燃える炎はゆらゆらと、ゆらゆらと

怪しく燻らせて、無機質に君の体温を奪っていく




ゆっくりと近づく終わり

僕が見届ける君の最期

また削られていく、掛け替えのないもの

この窓を開け放すことが出来れば、救われるよ

僕が君に声無き声で囁くと、君は微笑んだように見えた


目が霞んでいく気がした

君がハッキリと見えない

この部屋にいるのは僕と君のたった一人だけ




流れ落ちたのは水

この部屋には雨が降っているのかな

それともただの幻覚かな


君は気づいているかな

この部屋には目に見えない死神で溢れ返っていたことを

ああ、もう眠たくなってきた



君が僕を見れば、僕が君を見る

君が微笑めば、僕も微笑む

そして、僕が君に話しかければ、君も僕に話しかける


僕らはずっと一緒だ、約束しよう

僕は絶対に、君を裏切ったりはしないから




死神たちはじっとこっちを見てる

そろそろ時間なのか

小刻みに震える君

怖いかい、と僕が尋ねると、君は首を横に振った

君は僕に言ってくれた

〝君と一緒だから大丈夫〟

その一言は僕を深く安心させた



その時だった

死神たちは鎌を構え、僕たちを貫いた

でも痛みは全く感じなかった

それは君も同じようだった



僕は君に精一杯の笑顔を向けると、君も僕に精一杯の笑顔を向けてくれた



壁に隔てられて僕らは出会った

何一つ信じられなくなった僕が唯一信じられた人間、それが君だった

きっとこの世界を離れれば、君に会えるよね

大嫌いで、大嫌いで、本当に大嫌いだったこの世界ともお別れ出来て、僕に起こることは幸せの連続じゃないか

もっと早く、幸せに出会いたかったけど


君が目を閉じる瞬間、僕も同時に目を閉じた

この世界とお別れだ

炎が奪ったもの、それは熱だった

これじゃあ、炎じゃないじゃないか


ふとそう思い、僕は深い眠りについた

きっと君もだろう



ごめん、僕は君の最期を見届けられなかったね

そしてまた一つ、掛け替えのないものが失われた