友達に頼んで好きな人がいるか聞いてもらったり
名前を呼ぶだけでドキドキしたり
もっと知りたくて、もっと話したいのに、踏み切れなくて
自分がダメなやつなんじゃないかって思ってしまって
でも君のことで頭がいっぱいで
君のことしか考えられなくて
机に向かっているとため息がでた
「どうしてなんだかわからないんだけど
いつも目で君を追っている自分がいる
友達におはようって言う笑顔
休み時間に喋ってるときの横顔
黒板に書いた白いチョークの文字
教科書を読みながら髪を耳にかけるしぐさ
グランドを走っているときの真剣なまなざし
下駄箱の前で靴を履き替える君
夕日のオレンジ色の光の中に浮かぶシルエット
僕の名前を呼ぶ声
これって、つまり、好きってこと、なんだと思う
僕は、君が好き……? 」
書き出した文字は白いノートの上で蛍光灯に照らされて
鈍く光ってキラキラしていた
朝起きてやっぱりこんなの見せられるわけ無いよなって思って
書いたページを破りとりながら読み返していると
「なにしてんのー? ごはんよ!早くたべなさーい」
と母の声がした
一瞬ドキッとして急いでノートと一緒にしまいこんだ
落ち着かない気持ちのまま学校に行ったら
君は顔を合わせるなり
「ねぇ、宿題やってきた? ノート見せて」
と言ってきた
僕はノートを渡した瞬間、やっと思い出したのだが遅かった
切り取ったはずのページが挟まったままになっていて
見つかってしまった
「あっ! ラブレター? 誰に書いたの? 」
「違うよ。別に関係ないだろっ! 」
全部読まれる前にと、なんとか抵抗したが
君はもったいぶってなかなか返そうとはせず
ノートを両手に挟んだまま胸の前で左右に動かし
取られないようにして逃げていた
「ねぇ、誰なの? いいじゃない教えてくれてもー。
いいもん読んじゃうからっ」
誰にって言っても本人なんだから読んでいいに決まっている
「アホかっ! 」
そう言って僕は強引にノートを取り返しそのページを抜き取って
無言で教室を飛び出した
トイレの鏡の前でため息をついた
真っ赤になった頬を見て
「こんなんじゃ顔も合わせられないよ」
とつぶやいて、やっぱり好きなんだなと思った
ビリビリに破った白い紙を流していると
始業のチャイムが鳴っていた
鉛筆で書いた文字は渦を巻いて流れて消えていった
この頃の女の子というのは精神的に男の子よりも成長が速く
そういった感情に敏感なもの
当然、君は僕の気持ちを知っていて
「誰に書いたの? 」
って言ってたんだ
僕の口から君の名前を、言って欲しかったんだ
そんなことがわかるようになるには
少し時間がかかり過ぎてしまった
あのとき、まさか君が、ぼくのこと……
いまでも頭の片隅に残っている
忘れることのできそうもない、あの頃の思い出として
知らないところ
みなみおたり
次の次の駅
ここまでは
利根川沿いの山間